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【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第6章:【人事】今日から国王と王妃や。――あ、給料は据え置きやで?
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四天王とかマジウケる。血判の履歴書で即日採用☆

 新大陸の空が、禍々まがまがしい紫色の雲に覆われた。


「来たな……。魔界からの『刺客』か」  


 カシムがバルコニーに立ち、冷たく視線を投げ下ろす。


 足元には数万の魔物と、四天王が陣を敷いていた。


「ナニワ商会の不遜ふそんな令嬢よ! 我が主が命じる、この地を明け渡し――」  


 四天王の筆頭、破壊公爵・ゴウモンがアックスを振り上げた。


 だが、巨体の動きは鈍い。


 筋肉隆々の外見とは裏腹に、長年の重装備による深刻な「腰痛」に苦しんでいた。


「……やかましいねぇ。カシム、『営業妨害』に対する損害賠償、払えるん?」  


 エリザベスが、扇子で仰いで鼻で笑う。


「いえ。魔界の通貨は、現在ハイパーインフレ中。彼らの命を売っても、ナニワ麺一食分にもなりません」


「あー、マジで不況じゃん。かわいそー。……カシム! 見て見て、あのよろいの騎士、ウチがライブ配信で使った限定のアクキー(アクリルキーホルダー)、カバンに付けてんだけど! ガチ勢じゃん!」  


 ギルがデコスマホを構えてズームし、声を上げて笑った。


 その瞬間、四天王の空気が変わった。


「……っ! 今、ギル様が『ガチ勢』と仰ったか……!?」  


 絶望の騎士・ゼツボーンが一歩前へ出た。


 漆黒しっこくの鎧に身を包んでいるが、「超メンタルが弱い」繊細な男だ。


 ギルのSNS投稿だけが、生きる希望だった。


「おのれゼツボーン、戦いの最中に色めき立つな! ……あ、あの、それよりカシム殿。確認したいのだが、求人票にあった『社保完備、腰痛セラピー有り』というのは……真実まことか?」  


 ゴウモンが斧を下ろし、おずおずと尋ねる。


「……当然です。弊社はホワイト企業ですから。ただし、試用期間中は、ナニワ麺の工場勤務ですが」


「工場! 暖かい場所ですね!? 極寒の魔界に戻らなくて済むのですか!?」  


 氷結の魔女・フリーズが、冷え切った手をさすり、目を輝かせた。


 冷徹な美女として恐れられているが、実態は「深刻な冷え性」に悩む女性だったのだ。


「え、ていうか隣のジジイ、毒ガスきすぎじゃね? 映えんわー」  


 ギルの言葉に、腐敗の賢者・ドブドスがガタガタと震え出した。


「申し訳ございません! これ、体質なんです……! 本当は『超潔癖症』で、毎日お風呂に入りたいのに、魔界の風呂は硫黄臭くて……! ナニワの最新洗剤で、自分を真っ白に洗浄したいんですぅ!」


 エリザベスは不敵に笑い、バルコニーから一枚のビラを投げ捨てた。


「あんたら、戦いに来たんか? それとも『再就職』しに来たんか? ウチは実力主義や。無能はいらんけど、切実な事情がある奴は歓迎したげるわ」


 次の瞬間、四天王は一斉に武器を捨て、懐から「血文字で書かれた履歴書」を取り出した。


「お願いします! ナニワ商会に入れてください! 魔王様は休みもくれないし、ボーナスは魂を吸われるだけなんです!」


「……。では、四天王の皆さんはこちらへ。一次面接を始めます」  


 カシムが、会議室へと誘導する。




 ――数時間後。


「……不採用、とまでは言いませんが。ゴウモンさんのスキルは、『破壊』のみ。これでは物流部門の『主任』止まりですね。腰痛ベルトを支給します。……ゼツボーンさんは、熱意が空回りしてキモいので、広報の『下っ端パパラッチ』から出直してください。それから、ドブドスさん。貴方は清掃部門で自分を磨きなさい」


「……あと、フリーズさんの『絶対零度』の魔力ですが……。新大陸の物流において、生鮮食品の鮮度保持は緊急課題です。


 貴女には、ナニワ商会・物流倉庫の『最高冷却責任者(兼・歩く業務用冷蔵庫)』を命じます。


 あぁ、安心してください。弊社が開発した『極暖・魔力発熱インナー』を支給します。これを着れば、氷魔法を使いながらでも体温は36.5度をキープできる優れものです。……どうしました、なぜ泣いているのです?」


「……あったかい……。こんなに心も体も温まる職場があるなんて……。一生ついていきます、カシム様……!!」


「公爵だった私が、ただの主任……! でも、福利厚生で腰が治るなら……!」


「ああ、神聖な清掃作業! 真っ白になれる!」


「やったぁぁ! ギル様の近くで働ける! これこそが聖域だー!」


 こうして、世界を滅ぼすはずだった魔王軍四天王は、ナニワ商会の「物流主任」「広報部パパラッチ」「清掃員」「業務用冷蔵庫」へと華麗に転身を遂げた。


「ええねぇ。……魔王本人も、そのうち『バイトリーダー』くらいで雇ったげよか?」


 新大陸の平和は、またしてもエリザベスの「雇用」という名の侵略によって守られたのであった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 魔王軍四天王、ナニワ商会へ転職です!


 魔界のブラックな環境から解放され、福利厚生(と腰痛ベルト)の素晴らしさに号泣する四天王たち。


 新大陸の物流をどう支えていくのか……。


 そして、残された魔王様は一体どうなってしまうのか!?

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