表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第6章:【人事】今日から国王と王妃や。――あ、給料は据え置きやで?
PR
71/83

【予算外】計算機よりウチを見て! 事務官サマへの強行突破☆

 新大陸拠点、旧王宮のバルコニー。


 無数の「新入社員」の入社手続きを終えたカシムは、夜風に吹かれながら、ネクタイを緩めていた。


「……お嬢様も無茶を仰る。国民全員を雇用するなど、帳簿の管理コストが跳ね上がるだけなのに……」


 月明かりの下で、計算機を叩くカシム。


 背後に、ふわりと甘い香りが漂った。


「カシムー、お疲れっしょ! マジで王様ムーブ、超エモかったよ?」


 現れたのは、ひらひらの寝巻き(といっても、デコラティブなガウン)を羽織ったギルだ。


 カシムの隣に並び、手すりに身を乗り出した。


「ギル。夜風は体に障ります。貴女は一応『王妃』なのですから、もう少し自覚を――」


「出た、お説教! カシムってマジで可愛げないよねー。ウチがこんなに『王妃ヨメ』として頑張ってんのに、ご褒美とかないわけ?」


「ご褒美? 貴女の今月のタピオカ経費は、すでに承認枠を越えています。これ以上の――」


「違うし! 金とかじゃなくてさ……」


 ギルが不意にカシムの腕をつかみ、顔をのぞき込んだ。


 いつもはうるさいほどのギャルメイクも、夜の闇の中では大人びて見える。


「カシムってさ、ウチのこと『仕事仲間』としか思ってないっしょ。お嬢に言われたからペア組んでるだけ、みたいな。……マジで凹むんだけど」


「……効率を考えれば当然の判断です。私は事務官で、貴女は広報。私情を挟むのは、ナニワ商会の利益に……」

 

 カシムが論理武装を始めようとした、その時。


「……うるさい。理屈、マジ無理」


 ギルが爪先立ちになり、カシムの唇を力任せに塞いだ。


「ッ……!?」


 眼鏡がズレ落ち、カシムの思考がホワイトアウトする。


 柔らかい感触と、ストロベリーフレーバーのリップの香りが、鼻腔を突く。



 数秒後、ギルがパッと顔を離すと、月明かりの下でも分かるほど、真っ赤になっていた。


「……今の、は……?」


「王妃としての『先行投資』だから! カシムが、ウチにマジれするまでの前払い! 勘違いしないでよね!」


 ギルはそれだけ叫ぶと、バタバタと廊下の奥へ走り去っていった。



 一人残されたカシムは、震える指先で自分の唇に触れる。


「……。計算が合わない。あのような接触で、心拍数が通常の1.5倍まで上昇するなど……。そもそも、経済的合理性は――」


 カシムはズレた眼鏡を直そうとしたが、手が震えて上手くいかない。


「お嬢様に、報告せねば。……いや、『福利厚生』の一環として処理すれば良いのか……? くそ……論理が組み立てられない……」


 冷徹な事務官国王は、その夜、生まれて初めて「処理不能」なエラーコードを胸の中に刻むことになった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!


 あらゆる難問を解決してきたカシムが、ギルの強引な「先行投資」の前にエラーを吐く回でした。


 仕事はデキるのに恋にはポンコツなカシムと、なんだかんだでカシムが大好きなギル。


 果たして二人の経済的合理性は一致するのでしょうか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ