国王カシムと王妃ギル、新大陸にて「新婚ごっこ」を強要される
海を越えた先にある新大陸。
玄関口となる港湾国家『ポート・サカズキ』は、前王朝の放漫経営によって破綻し、ナニワ商会にまるごと「買い叩かれた」直後だった。
「……お嬢様。現地の登記手続き、および旧王族の資産差し押さえ、すべて完了しました」
カシムが、完璧な書類を差し出す。
だが、表情はどことなく暗い。
無理もない、カシムは不眠不休で、経済を書き換えてきたのだ。
「ご苦労さん。……で、ここを治める『看板』やけど、アンタに決めたわ」
「は? 看板……とは?」
「今日からカシムが、『国王』や。あ、もちろんナニワ商会の事務局長兼務やから、給料は据え置きやで?」
エリザベスが放った言葉に、カシムの眼鏡がパリンと音を立てた。
「……。お嬢様、冗談はよしてください。私はあくまで事務方です。王冠などという非効率な装飾品を頭に乗せて、一体何の利益が――」
「え、マ!? カシムが王様? 激アツじゃん!!」
横から割り込んできたのは、デコりまくった魔導端末を片手に、タピオカ入りの麺スープを啜る最強のギャルだった。
「ギルは『王妃』や。国を盛り上げるための広報担当兼、カシムの『嫁役』やな」
「………………。 は?」
今度はギルが固まった。
だが、思考回路は、カシムとは別の方向へ加速する。
「え、ちょっと待って……国王と王妃ってことは……『結婚』ってこと? カシムとウチが、ガチの夫婦になっちゃう感じ!?」
「ギル、落ち着きなさい。ナニワ商会の戦略における、便宜上の――」
「ちょ、カシム、照れ隠しキツくない? ウケるんだけど! でも、まあ……カシムなら仕事できるし、メガネ取ったら顔面偏差値そこそこだし、アリよりのアリかも。えー、ウチ、どんなウェディングドレスにしようかなぁ。エモエモなやつ用意してよ、お嬢!」
「ええよ、ギル。一番高いシルクで、ダイヤをジャラジャラ付けた『成金ウェディング』用意したげるわ。ついでに『王妃御用達』のブランド立ち上げて、全部経費で落としたげる」
「お嬢様!! 燃料を投下しないでください!!」
カシムの絶叫が響く中、エリザベスは窓の外、新天地の街並みを眺めて不敵に笑う。
「いい? カシム。この国は『ナニワ商会・新大陸本店』や。事務官が国王やって、ギャルが王妃やってる……得体の知れん国の方が、周りの連中もビビって手を出しにくくなる。明日、隣国の教皇が挨拶に来るから。ギルと一緒に『アットホームな新婚生活』演出して追い返しなはれ」
「…………。事務作業一万枚の方が、まだ救いがありました」
「カシムー! チョー愛してるよー! 最強のロイヤルカップル誕生じゃん!」
こうして、新大陸の平和は(カシムの胃壁と引き換えに)、かつてないほど「カオスな愛」によって守られることになった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
新大陸の王と王妃に任命された二人。
カシムの無事を願いつつ、新婚生活の行方を温かく見守っていただければ幸いです(笑)




