【純利益】軍馬のステップは「スープをこぼさないため」にあるんですわ
「……お嬢様。同盟騎士団の『有効活用』、準備が整いました」
カシムの報告を受け、エリザベスは聖都のメインストリートを見下ろすバルコニーへと出た。
かつて世界最強と謳われた自由貿易同盟の精鋭騎士たちが、ガシャガシャと音を立てて整列している。
だが、姿はあまりにも……「ナニワ」だった。
「なんや、案外似合ってるやん」
エリザベスが満足げに頷く。
白銀の鎧の上に、『ナニワ商会』の法被を羽織った騎士団長が、屈辱に震えていた。
「……エ、エリザベス・フォン・テシガワラ殿! 我ら誇り高き騎士団に、銀の箱を背負って街を走れと言うのか!」
「何言うてんの。ただの箱やない。お客様の胃袋と、信頼が詰まった『特急岡持ち』や。……いい、アンタら。麺は一分一秒が勝負。聖都の端まで三分で届けられへん騎士は、うちの会社にはいらへんよ?」
騎士たちの背中には、鮮度を完璧に保つ魔導デリバリーボックスが、ガッチリと固定されている。
「団長! ……麺が吸水を開始しました! このままではあと五分でコシが死にます!」
「な、なにぃ!? 全員、突撃の準備! 目標、三番街の空腹な主婦層! 遅れることは許されん!」
かつて侵略のために振るわれた剣は、「迅速な行列整理」のために使われ、最強の軍馬は「スープをこぼさない絶妙なステップ」で石畳を爆走する。
「お嬢様、追加の注文です。北の貴族街から『全部のせ』が五十食」
「ええねぇ、商売繁盛や。……あ、カシム。団長のヘルメットに、うちの家紋……『テシガワラ・マーク』のステッカー貼っといて。ブランドもんやから、配送料上乗せできるわ」
「承知いたしました。……団長、止まらないでください。時給が引かれますよ」
「う、うおおおお! 道を空けろぉ! ナニワの『麺』のお通りだぁぁ!」
かつての英雄たちが、通行人に笑顔で「まいどありー!」と叫びながら駆け抜けていく。
エリザベスは見送りながら、インスタント麺をすすった。
「同盟を潰すんは、ただの『損失』。でも、使い倒すんは『純利益』。……さあ、どんどん稼いでもらおか、新しい兵隊さんたちに」
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
騎士団の皆さんは、今日から立派な「麺の運び屋」です。
ちなみに、ヘルメットに貼られたステッカーが剥がれたら……時給が下がるかもしれませんね(笑)




