【非常食の革命】パンがないなら、麺をすすればええんや
モルガンによる「物流封鎖」から二日。
聖都の空気は極限まで張り詰めていた。
民衆は「中通」の偽札を握りしめ、わずかな食料を求めて暴徒化寸前。
パニックを切り裂いたのは、空を震わせる咆哮と、銀色の巨大な影だった。
「な、なんだ!? 軍事国家ゼルドビアの輸送艦……!? 侵略か!?」
聖都の広場へ強引に降り立った巨大艦。
ハッチから姿を現したのは、エプロンをなびかせたギルと、無機質な表情のカシムだった。
「おっまたせー! エリザベスからの差し入れだよん!」
ギルが蹴り開けた木箱の中には、見たこともない「乾燥した麺」の塊が山積みになっていた。
「……エリザベス君。これは何の冗談かね?」
魔導端末越しに、モルガンが冷笑する。
「麺も小麦からできている。大陸中の小麦を私が買い占めている以上、すぐに在庫は尽きるぞ」
だが、エリザベスは、手元のカップから立ち上る湯気を見つめて、優雅に言い放った。
「ジジイ。自分の『商人の目』を過信しすぎや。アンタが押さえたのは、『民間市場に流れる小麦』だけやろ?」
「……何?」
「忘れたんか? ウチには、大陸一の軍事国家の王さんがおるんや。……ゼルドビア国防軍が、有事に備えて地下シェルターへ数十年分溜め込んどった『軍用小麦』。アンタの手が届くわけないやん。国家機密やもん」
モルガンの顔が、土気色へ変わる。
「ば、馬鹿な! 軍の備蓄だと!? 偏屈なバルガス王が、売るなんて……!」
「『売る』? そんなケチな話やない。『滞納金』の利息として、現物で納めさせただけや。……おかげで、原料(小麦)は無限。加工工場(軍の兵器工場)も、輸送手段(軍用艦)も、タダ同然で使い放題や」
エリザベスはズズッと麺をすすり、満足げに微笑む。
「アンタの買い占めた小麦は、売る場所も食う人間も失って、ただの『腐るのを待つだけの山』になったわけ。……あ、お湯沸いてるで? アンタも一杯、食べてみる?」
モルガンの手から、かじりかけの高級パンが力なく落ちた。
ご一読ありがとうございました!
空飛ぶ輸送機の中身は「インスタント麺」!
タコ焼きだと思った皆様、ごめんなさい(笑)。
どんなに汚い手段で包囲網を敷かれても、国家の備蓄すら「利息」で巻き上げてタダで使い倒すエリザベス。
モルガンの小麦を「腐るのを待つだけの山」に変えた大逆転劇、楽しんでいただけたら嬉しいです!
次回もお楽しみに!




