表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第5章:商売の神様も、ナニワの味には勝てへん。――これにて聖都、完全支配
PR
59/100

【市場強奪の偽札】大商長の逆襲と、消えたパン

 異変は、聖都アイギスの朝食時に始まった。


「……は? 品切れ? 冗談だろ、まだ開店したばかりじゃないか」


 なじみのベーカリーの前に並んでいた男は、店主に詰め寄った。店主は困り果てた顔で、空っぽの棚を指差す。


「いや、それがね……今朝、届くはずの小麦粉が一点も届かなかったんだよ。問屋に問い合わせても『輸送船が止まっている』の一点張りで……」


 同じような光景は、市場のあちこちで見られた。野菜が届かない。肉が来ない。さらに奇妙なことに、街には見慣れない「金色の紙」があふれていた。


「おい、この『中通ちゅうつう』の新通貨なら、奥の倉庫から小麦を出してくれるって噂だぞ!」


「マジかよ! ナニワのポイントより、今は現物が買える札の方が価値があるんじゃないか?」


 人々の手に握られているのは、モルガン率いる『大同盟中央通商』が突如として発行した、派手な装飾の紙札。食べ物がないという不安と、突如現れた「新しい金」への期待。


 平和だった聖都の空気は、どす黒いパニックへと塗り替えられようとしていた。


「……なるほど。これがジジイのやり方か」


 ナニワ商会の仮拠点。


 窓の外から聞こえる民衆の喧騒けんそうを背に、エリザベスは冷めた紅茶を一口すすった。


 カシムが端末を叩き、窓の外の混乱を報告する。


「聖都周辺の物流ゲートが、すべて『中通』の権限でロックされました。名目は『通貨切り替えに伴う検品作業』。ですが実態は、兵糧攻めです」


「嫌なやり方やなぁ。物流あしを押さえた上で、偽札をバラきよるんやから」


 エリザベスが呟いた瞬間、部屋の中央に置かれた魔導端末スマホが、強引な割り込み接続で起動した。


 ホログラムとして現れたのは、脂ぎった顔を歪ませて笑う老人――モルガン・デ・メディチだ。


「カカカ! どうだねエリザベス君。『ポイント』だの『信用』だのと、実体のない数字遊びに興じている間に、私はこの大陸の『現実』を買い占めたよ」


 モルガンは豪華な椅子の背もたれにふんぞり返り、手元のパンをこれ見よがしに千切って口に運ぶ。


「偽札がただのゴミであることなど、百も承知だ。だが、そのゴミが『パンを買う唯一のチケット』になったとき、真実の金ゴールドを超える。……明日には、聖都の民は飢え、吊し上げに来るだろう。商売の根本を断たれたお前に、一体何ができるかな?」


 プツリ、と通信が切れる。


 カシムが眼鏡を指先で押し上げ、静かに問いかけた。


「……お嬢様。現在、ナニワの備蓄でも三日が限界です。どう動かれますか?」


 エリザベスは、ソファからゆっくりと立ち上がった。顔には、絶望など微塵(みじん)

もない。


 むしろ、最高に質の悪い悪戯いたずらを思いついた、子供のような笑みが浮かんでいた。


「カシム。モルガンのジジイは、一つ大きな勘違いをしとるわ」


「と、おっしゃいますと?」


「『パンがないなら、お菓子を食べればいい』なんて、能天気な令嬢の台詞や。ウチはナニワの商人やで? ……パンが届かへんのなら、パン以外の『旨いもん』で、市場を塗り替えたらええだけやんか」


 エリザベスは、鋭く指示を飛ばす。


「今すぐバルガスにつないで。余ってる軍用輸送機を全部借りるわ。……モルガンが道を塞ぐんやったら、ウチは『空』から攻めたる。……積み荷は、『禁断の……』や!」

 ご一読ありがとうございました!


 空飛ぶ輸送機の中身――とは?


 次回も、どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ