【最強の休日】魔竜ギャルの爆買いは、聖都すら揺るがす?
軍事国家ゼルドビアが、たった一晩で「数字の海」に沈んだ頃。立役者の一人――ナニワ商会の「最終兵器」ことギルは、聖都アイギスのメインストリートにいた。
「うわ、これ超ヤバイ! 聖都限定の『光光クレープ』じゃん! マジぶち上がるんだけど!」
トゲ付きの肩当てを脱ぎ捨て、エリザベスから貰ったフリルのワンピースに身を包んだギルは、瞳を輝かせていた。手には、エリザベスから「ボーナスや。パーッと使ってき」と渡された、分厚い布袋。中身は、一国を黙らせた「成功報酬」の金貨だ。
「えーっと、次はあそこのブティック……じゃなくて、『服屋さん』だっけ? カシムが『領収書は全部取っておけ』って言ってたけど、マジ細かいよねー、あのメガネ」
ギルが鼻歌混じりに歩くと、周囲の歩行者が道を空ける。隠しきれない強者のオーラ(と、あまりに眩しいギャル感)に、聖都の住民たちは本能的な恐怖を覚えているのだ。
だが、当の本人はそんなことお構いなし。
「すいませーん! 『星降る真珠のピアス』、全部ください! あ、あとこっちのピンクの靴も! 履けないけど飾るからOK!」
宝石店に飛び込み、無造作に金貨を積み上げる。店主は、かつてない上客の登場に震えながらも、ギルの屈託のない笑顔――「マジこれ、エリザベスに似合いそう!」という独り言を聞いて、少しだけ肩の力を抜いた。
その日の夕暮れ。両手に抱えきれないほどの紙袋を下げたギルが、ナニワ商会の仮拠点に戻ってきた。
「ただいまー! 見て見て、エリザベス! 聖都の経済、ウチが一人で回してきたよ!」
そこには、相変わらず書類の山と格闘しているカシムと、優雅にお茶を飲むエリザベスの姿があった。
「おかえり、ギル。えらい派手に買い込んできたなぁ。……カシム、経費で落とせるか?」
「……。個人の嗜好品は無理です。ですが、『視察および友好親善費』としてなら、三分の一は処理可能かと」
「マジ? カシムってば、たまにいいこと言うじゃん!」
ギルは買ってきたばかりのクレープをエリザベスの口元へ差し出した。
「これ、聖都で一番人気なんだって。エリザベス、クレープ好きっしょ?」
エリザベスは驚いた顔をした後、ふっと柔らかく微笑んで一口かじった。
「……甘いなぁ。死ぬほど甘いわ。おおきに、ギル。おかげで次の『大掃除』も頑張れそうやわ」
「でしょ? 悪い奴らなんて、ウチがボコって、エリザベスが全部奪っちゃえばいいんだよ!」
平和な会話。だが、カシムが「……次のターゲット、大商長の隠し口座を特定しました」と冷徹に告げる。
聖都の平和は、「甘いおやつタイム」の間だけ。明日にはまた、ナニワのソロバンが誰かの人生を弾き始めるのだ。
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