【和解】金がなければ「議席」を渡せばええやん。~地獄の円卓会議と、八番目の椅子~
自由貿易同盟、最高意志決定機関――「盟主円卓会議」。
「先遣隊壊滅」という悪夢の報告から数日。
王たちは必死にプライドをかき集め、聖都にエリザベスを呼びつけた。あくまでも自分たちが上位であり、ナニワ商会は「招かれたゲスト」であるという体裁を保つために。
同盟最強の軍事国家の王が、居並ぶ盟主たちを代表して、鋼のような声で冷たく告げた。
「……先遣騎士団の一件、我が同盟としては遺憾に思う。だが、ここは文明の理が支配する場だ。誠意として金貨三百万枚を提示し、講和のテーブルを整えよう。商人のことだ、額を見せれば矛を収めるだろう」
盟主たちが苦渋の決断を下した時、会議室の重厚な扉が、一切の遠慮なしに蹴り開けられた。
「ハロー、盟主様方! 景気のええ相談しとるみたいやけど、混ぜてや!」
現れたのは、扇子を優雅に揺らすエリザベス。背後には、山のような書類の束を抱えたカシムと、退屈そうにタピオカを吸うギルが控えていた。
「な……貴様! ここをどこだと思っている! 大陸を統べる盟主たちの聖域だぞ!」
「聖域? 借金まみれの赤字部屋の間違いやろ? ……ほんで、三百万枚? 誰の鼻くそや、それ! カシム、例の『明細』、アイツらにお見せしなはれ」
カシムが、一通の分厚い書類を取り出し、円卓の上で滑らせた。
「……。先遣隊による道路損壊、騒音被害、およびギル様のイライラに対する損害賠償。合計して、金貨一億枚となります」
円卓が凍りついた。数カ国の国家予算を束ねても、即座に用意できる額ではない。
「い、一億!? バカな、たかが数分の小競り合いでそんな額に……!」
「『たかが』? うちの看板娘の時給、アンタら払えると思ってんの? ギルちゃんが本気で暴れたら、大陸ごと消滅してたんやで? 『終末回避』の費用と考えたら、一億でも安いくらいやわ」
エリザベスは盟主たちの怒号を笑い飛ばすと、円卓の空いているスペースに、どかっと腰を下ろした。
「……もちろん、アンタらに今すぐ払えなんて言わへん。金がないなら、別のモンで手を打ったる。……ウチが欲しいんは、ここの八番目の椅子や」
盟主たちが息を呑む。円卓に座ることは、世界の運命を左右する権利を持つことを意味する。
「……議決なんてどーでもええ。ウチが欲しいんは『特別監査権』。一億の返済を待つ代わりに、同盟全体の予算と物流を監視し、口を出す権利や。返せん借金があるうちは、アンタらの財布、ウチの金庫番が管理したげる。……なあ、カシム?」
「……. すでに準備は整っています。これより、全加盟国の帳簿をナニワ式へ統合。一銅貨の動きも見逃しません」
盟主たちの屈辱に満ちた視線の中、カシムは王たちの円卓のすぐ横に、無機質な事務机を設置した。一億の請求書を「首輪」に変え、ナニワ商会が同盟を内側から食い破る歴史的一歩が、刻まれたのである。
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ついに円卓へ乗り込んだエリザベス一行。
ギルの「イライラ損害賠償」がしれっと一億枚に含まれているあたりに、ナニワ商会の身内への甘さ(?)と容赦のなさを感じますね。
次回も、どうぞお楽しみに!




