伝説の魔竜、念願の「タピオカ視察」へ。~最強の事務員と、ノルマ前の食べ歩き~
ナニワ・メインストリート。
再建されたばかりのモールの中心で、ギャルが、この世の春を謳歌するように飛び跳ねていた。
「マジで神! カシムと並んで歩くとか、前世(魔竜時代)の自分に自慢したいんだけど!!」
ギルは、カシムの腕にこれでもかと絡みついた。
対するカシムは、休日だというのにキッチリと着こなした事務員制服(クリーニング済み)に身を包み、手には「デート行程表(分単位)」を握りしめている。
「……ギル様。本日の視察……失礼、デートの全行程は64分40秒です。先遣隊を秒殺した『4分40秒』が含まれています。一秒の無駄も許されません」
「もー、カシムってばマジ堅物~! でもそこが尊い。……ねえ、まずはあそこの『ナニワ・タピオカ・センター』行こ! 映えすぎて死ぬやつ!」
二人が向かったのは、エリザベスが「流行りもんは全部吸い尽くせ」と号令をかけて作らせたタピオカ専門店。かつての暗殺者(現在は店員)が、死んだ魚のような目でストローを配っていた。
「いらっしゃいませ……。やりがい……あ、いえ、タピオカ一丁……」
「これこれ! カシム、はい、あーんして? これ飲んだら、魔力がマジでパオンってなるから!」
「……。ギル様、公衆の面前で『あーん』などという非効率な摂食行動は……。……。……分かりました。業務命令(ご褒美)ですから、執行します」
カシムが、鉄の意志でタピオカを一口吸う。
その瞬間、隣で凄まじい「殺気」が膨れ上がった。
「……死ぬ。マジで心臓がビッグバンなんだけど……!」
ギルの体から漏れ出した魔力が、周囲の建物をミシミシと軋ませる。
通行人たちが「な、なんだこのプレッシャーは!? 敵襲か!?」と逃げ惑い始めた。
「……ギル様、魔力が漏れています。インフラを破壊すると、デート時間は『10分マイナス』になります」
「ひっ!? マジごめん! 秒で抑えるから見捨てないで!!」
伝説の魔竜が、カシムの一言で必死に魔力を抑え込む。
「ナニワ・ビジョン(中継)」で、様子を見ていたエリザベスが、ニヤニヤしながらマイクを握った。
「ええわぁ。デレデレの魔竜を録画して、『恋する魔竜の休日』ってタイトルで有料配信したら、金貨ががっぽがっぽやわ」
デートは続く。
魔導肖像画を撮れば、ギルの魔力が強すぎて機械が爆発し、カシムが「修理費、金貨200枚。あなたの取り分から天引きです」と冷たく言い放つ。
ギルが「もー、カシムの鬼ー! 好きー!」と叫びながら抱きつく。
大陸最強の二人が繰り広げる、世界一平和で、破壊的な「日常」だった。
「……あーあ、幸せすぎる。もう一回軍隊来ないかな。秒でボコって、あと1時間くらいデート延長したいんだけど」
ギルの物騒すぎる独り言を聞きながら、カシムは静かに時計を止めた。
「……。時間です、ギル様。一秒の狂いもなく、デートの時間は終了しました。さあ、工場へ戻りましょう。午後の『魔石精錬ノルマ』が待っています」
「えー、マジ無理! ぴえん!!」
絶叫するギャル魔竜を、カシムは、優しく引きずって帰るのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
平常運転の「ナニワ・タピオカ・センター」です。
大陸最強の魔竜も、カシムの前では形無し。デート代が「取り分から天引き」されるあたりが、いかにもエリザベスの陣営らしいですよね。
次回も、どうぞお楽しみに!




