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【悲報】聖女と王子、並んで肥料(スカトロン)を練る。~完済まで250年の共同作業~

 帝都外縁部、第十四加工場。そこは、ゲーム『ルミ・ラヴァ』において聖女が初めての「奇跡」を起こし、民衆の涙を誘うはずだった神聖な場所――の、裏側にある廃棄物処理場だった。



「……なによ、この服。ゴワゴワしてて、全然可愛くないわ」


 セレスティーヌは、支給された「ナニワ商会・研修生」のロゴが入った灰色のツナギを眺め、唇をんだ。


 虹色の魔力を放つ『聖なる輝きのドレス』は、カシムの手によって梱包こんぽうされ、オークションサイト『ナニワ・オク』のトップページに出品されている。


「……文句を言うな、セレスティーヌ。手が止まっているぞ。また減給されたいのか」


 隣で虚ろな目をしながら、巨大な撹拌かくはん棒を回している男がいた。泥にまみれたアルベルト元王子である。


「アルベルト様……。すっかり作業に慣れてしまって……。あなた、王国を再興する志はどうしちゃったのよ!」


「……再興? そんな暇があるなら、一箱でも多く肥料を作って、利息を0.01%でも減らすんだ。……いいか、ここはナニワの直営工場だ。一分一秒のサボりが、すべて負債に加算される……。俺はもう、お前の賠償金まで背負わされるのは御免だ」


 かつてのメインヒーローは、もはや「効率」と「ノルマ」の奴隷どれいと化していた。


 その時、工場の監視モニターから、エリザベスの高笑いが響き渡る。


「あらあら、ええコンビやん。聖女様と王子様が、二人三脚で肥料作り。……新しい時代の『聖域』の姿やわ」


 モニター越しに映るエリザベスは、特等席で最高級のスイーツを頬張ほおばり、優雅に扇子を動かしていた。


「セレスティーヌ様。あんたが壊したモールの再建費用、今の作業ペースやと……完済までに、だいたい250年くらいかかる計算やわ。……あ、でも安心して? あんたが愛してやまへん『騎士』様たちも、しっかり働いてもらってるから」


 別のモニターには、ヴィクトールが必死にゴミの分別をし、ハンスが在庫の数を数え間違えては、シオンに無言で小突かれている姿が映し出されていた。


「騎士様たちが並ぶのは、私の隣のはずなのに……!  もう嫌ぁぁ!」


「これは『再教育』や。……あんたらみたいな『価値を生まん人間』が、どれだけ社会に迷惑かけてきたか。そのツケを、汗水たらして払ってもらってるだけやで?」


 エリザベスは「正論」を、どぎつい関西弁で叩きつける。


「さあ、おしゃべりはこのくらいにして。……ほら、次のスカトロンが運ばれてきたわ。しっかり練りや、聖女様?」


 ドロドロとした音を立てて投入される大量の廃棄物。セレスティーヌは絶望の叫びを上げながら、重い撹拌棒を握りしめた。

 脳内で鳴り響いていたはずの「ハッピーエンドのBGM」は、今や工場の無機質な機械音にかき消されていた。

 ツナギ姿で肥料を練る姿……いかがでしたでしょうか。

 労働で利息を返済させる。エリザベスなりの「誠実な対応」です。


 完済まであと249年と364日。彼らの共同作業は、まだ始まったばかりです!

 次回もどうぞお楽しみに!

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