【朗報】聖女様の最強魔法で「無料解体」完了! 〜賠償金50万枚と終身雇用、インボイス(請求書)を添えて〜
ドォォォォォン!!
地響きと共に、純白の光がアウトレットモールのエントランスを飲み込んだ。
『ルミナス・ジャッジメント』――。
「建物の構造維持魔法を逆転させ、分子レベルで崩壊させる」という、浄化の名を借りた超高出力の解体魔法である。
「やったわ……! 見た、エリザベス!? これが本物の奇跡よ!」
光の残滓が消え、視界が開ける。そこには、跡形もなく消え去った巨大な正面ゲートと、瓦礫の山……そして、なぜか無傷でティーカップを置くエリザベスの姿があった。彼女が座っているテラス席だけは、最初から「射線」を外してあったのか、それとも「対魔障壁(有料)」を張っていたのか。
「……すごいやん。ほんまに一撃で更地にしよった」
エリザベスは、砂埃を扇子で払いながら呟いた。カシムと事務員たちが凄まじい速さで端末のキーを叩いている。
「店主。第一ゲート、および併設のインフォメーションセンター、完全喪失を確認しました。……続いて、被害総額の算定に入ります」
「え、被害……? 何を言ってるの、私は聖域を解放したのよ!」
勝ち誇るセレスティーヌだったが、エリザベスは冷ややかな、それでいてどこか「商談成立」を喜ぶ笑顔で立ち上がった。
「解放? 何言うてんの。あんたが今やったんは、『ナニワ商会・アヴァロン支店』に対する、計画的かつ組織的な【不動産損壊】および【営業妨害】、それから周辺住民への【騒音公害】やわ」
エリザベスがパチンと指を鳴らすと、上空に巨大な魔導スクリーンが浮かび上がった。映し出されたのは、「セレスティーヌが魔法を放つ瞬間」の超高精細映像だ。
「証拠はバッチリ。しかもレオンハルト卿が丁寧に『記録用カメラ』まで回してくれはったから、言い逃れできへんなぁ? ……カシム、請求書出したげて」
「承知いたしました。……まず、店舗建替え費用、および休業補償。さらに、今回の『イベント』により破損した在庫商品の原価償却。――締めて。金貨50万枚となります。」
「ご、ご、50万……!?」
セレスティーヌの顔から血の気が引いた。だが、エリザベスの追撃は止まらない。
「あ、心配せんでもええよ。あんたが持ってる『プラチナ・カード』。自由貿易同盟の連帯保証が付いとるから、今ここで全額決済させてもらうわ。……あ、持ち主の承認がない? 堪忍なあ、そのカード『店主の操作一つで全財産を差し押さえられる』っていう、“特別仕様”やねん。 ……はい、承認」
その瞬間。セレスティーヌの懐にあるカードが、真っ赤に発光して「パリンッ」と砕け散った。限度額という名の「ダム」が決壊した音だった。
「……え? カードが、壊れた……?」
「『利用限度額超過』や。……あ、そうそうレオンハルト卿。言い忘れてたけど、あんた、決済の担保に『同盟の帝都利権』設定してはったやろ? ……それも今、ウチが全部差し押さえさせてもらったわ。まいどあり」
振り返ると、レオンハルトが真っ青な顔をして震えていた。
「バ、バカな……! 魔法を撃つだけで、これほどの負債になるなんて……! 計算が合わない、ナニワの帳簿はどうなっているんだ!?」
「計算が合わんのは、あんたの『見積もり』が甘いからや。……うちは最初から、ここをリニューアルする予定やってん。解体工事、業者に頼んだら高いけど、聖女様にタダで、しかも『加害者』として壊してもらえたら……保険金も出るし、賠償金も取れる。最高やろ?」
エリザベスは、絶望に凍りつく一同を見渡し、優雅に、喜びに満ちた声で告げた。
「さて。カードも壊れた。保証人の貴公子も破産した。……残ったんは、返しようのない莫大な借金だけや。……セレスティーヌ様。あんた、今日からアルベルト様と一緒に、うちの『スカトロン加工工場』のイメージキャラクターとして、終身雇用で働いてもらうわ。……断る権利、あると思う?」
聖女の悲鳴が、アウトレットモールの更地に虚しく響き渡った。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
聖女様、せっかくの最強魔法を「無料解体サービス」として使われてしまいましたね。ナニワの商人は、転んでもタダでは起きないどころか、転んだ勢いで相手の財布までむしり取ります。
レオンハルト様も「帝都利権」を失って真っ青ですが、エリザベスの辞書に「手加減」という言葉はありません。チャリン、という決済音が聞こえた皆様、ぜひブックマークや評価という名の「ご祝儀」をいただけると嬉しいです!




