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聖女の無償提供、実態は『在庫一掃セール』

 帝都の中央広場。


 かつて神殿があった場所は、今や巨大なデジタル看板が踊るナニワ商会の「経済特区」となっていた。

 そこに、レオンハルトの用意した特設ステージが組まれる。シルクのドレスに身を包んだセレスティーヌが登壇とうだんすると、仕込まれた魔導スピーカーが聖歌を大音量で流し始めた。


「さあ、苦しむ人々よ、私の前へ! ナニワ商会の高価なポーションはもういりません。聖女の光が、すべてを無償で解決します!」


 セレスティーヌが叫び、白銀の杖を天に掲げる。すると、ステージのそでから、レオンハルトが金で雇った「サクラ」たちが次々と現れた。


「おお、聖女様……! ナニワのローンが払えず、治療をあきらめていた私に光を……!」


「いいですよ。エクス・ヒール!」


 杖の魔石がまばゆく発光し、柔らかな光が広場を包み込む。サクラたちは「治った! 奇跡だ!」と大げさに叫び、周囲の本物の民衆たちはそれを見て熱狂した。


「すごい……本当に無償だ!」


「ナニワ商会のクリニックに行けば、診察料だけで銀貨5枚取られるのに……!」


 民衆がステージに押し寄せる。それを見たセレスティーヌは、全能感の絶頂にいた。懐の「魔法のカード」を取り出すと、広場の隅で営業していたナニワ商会のキッチンカーを指差した。


「あそこのパンも、お水も、私が全部買い取ります! ほら、みんなに配ってあげて! 今日は全部、私のおごりよ!」


 カードが端末にスキャンされ、一瞬で莫大な決済が完了する。レオンハルトはその光景をステージの陰で眺めながら、手元の魔導端末スマホで、セレスティーヌの「支持率」と「決済額」が共に垂直上昇していくのを確認して、薄く笑った。


(……良い。奇跡という名の無料配布。これでナニワの医療・食料市場の価格体系は崩壊する。裏で積み上がる莫大な『宣伝広告費(借金)』。……すべてが計画通りだ)



 一方、ナニワ商会の本部ビル最上階。カシムが窓の外の騒がしい広場を見下ろしながら、淡々と報告を読み上げる。


「店主。広場では、ターゲットによる『商品の全量買い上げ』が続いております。一般客への販売は止まっていますが、彼女が定価で在庫をすべて即金購入しているため、周辺店舗は開店10分で本日分の売上目標を達成いたしました。まさに『聖女様様』の状態です」


 エリザベスは、手元の帳簿に判を突きながら、ふっと口角を上げた。


「……レオンハルトも人が悪いんちゃうか。あんな『時限爆弾』にカードを持たせて、民衆の歓心を買わせるなんて。……でも、おかげで売れ残りの在庫が一掃できたわ。カシム、広場に『聖女様公認・奇跡の余韻よいんセット』の販売ワゴンを出してくれへん。価格は今の4倍やで」


「承知いたしました。それと、広場の清掃費用を、別途、自由貿易同盟の決済口座へ請求済みです」


 聖女が「愛」をばらくほど、商人は「利」を拾い、貴公子は「わな」を深める。セレスティーヌは、自分が世界を浄化していると信じて疑わなかったが、実は、巨大なマネーゲームの「集客用パンフレット」に過ぎなかった。


「さあ、もっと光を! 私があなたたちを、エリザベスの支配から救ってあげるわ!」


 光り輝くステージの下で、着実に「自由の代償」という名の請求書が、分厚く積み重なっていた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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