聖女のばら撒き、ナニワ・アベニューの「景気刺激策」として計上される
「見て、レオンハルト様! あの人たちの顔! 私たちの光に、みんな感動してるわ!」
帝都のメインストリート――通称『ナニワ・アベニュー』。
かつての質実剛健な石畳は今や、ナニワ商会の広告バナーと「本日ポイント倍増」の幟で埋め尽くされている。その中心を、レオンハルトが用意した豪華な馬車がゆっくりと進んでいた。
「全くだ、セレスティーヌ。君こそが彼らの希望だ」
レオンハルトは隣で優雅に手を振りながら、彼女をさらに煽る。セレスティーヌは、「魔法のカード」を使って新調したティアラを身につけていた。彼女が『叡智の杖』を軽く振るたびに、キラキラとした光の粒子(もちろん魔力消費量は特大)が沿道に降り注ぐ。
「みなさん、もう安心してください! 私が来たからには、強欲な商売に怯える日々は終わりです! さあ、『聖なる癒やしの金平糖』を受け取って!」
セレスティーヌは、道すがらカードで買い占めた高価な菓子を、惜しげもなく民衆にばら撒いた。
「わあ、聖女様だ!」
「なんて太っ腹なんだ!」
歓声を上げる民衆。セレスティーヌの脳内では、ゲームの好感度メーターがカンストする音が鳴り響いていた。
「……ねえ、レオンハルト様。なんだか、あちこちで魔導録画機を回してる人たちがいるけど、あなたの手配?」
「ええ、まあ……。君の勇姿を、歴史に刻んでおきたくてね」
レオンハルトは爽やかに答えるが、カメラマンたちの腕章には『ナニワ・プレス』の文字が入っている。彼らは「聖女、市場価格を無視したバラマキ行為を強行」というスキャンダル記事のための証拠写真を、バシャバシャと撮り続けていた。
さらに、沿道の商店主たちは、パレードの熱狂に紛れて「聖女様奉納・特別便乗セール」を開始。セレスティーヌが笑顔を振りまくほど、ナニワ商会のレジは「チャリン、チャリン」と軽快な音を立てて回っていく。
「ふふ……、アウトレットモールが見えてきたわね。待ってなさい、エリザベス。私の『光の奇跡』で、あんな下俗な場所、跡形もなく浄化してあげるんだから!」
セレスティーヌは、モールの巨大な看板を見据えて杖を構えた。杖のGPS機能が、現在「目的地:ナニワ・アヴァロン・アウトレットモール」への侵入を検知し、自動的に『迷惑行為等に関する違約金』の特別レートに切り替わったことなど、彼女は露ほども知らない。
「さあ、レオンハルト様! 最高のフィナーレの始まりよ!」
「ああ……。期待しているよ、僕の『最高の聖女(商品)』」
レオンハルトの微笑みは、もはや獲物を罠に追い込んだ猟師のように冷たく、深いものに変わっていた。
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次回も、どうぞお楽しみに!




