夢見る聖女は「最高級の囮(おとり)」。特使が描くエリザベス包囲網
「あぁ、落ち着くわ……。やっぱり聖女には、こういう場所が似合っているわね」
レオンハルトがセレスティーヌを連れて行ったのは、帝都を見下ろす丘に建つ、白亜の迎賓館だった。テーブルには、精緻な細工が施されたスイーツや、琥珀色の最高級茶が並んでいる。
「当然です。君が微笑むだけで、枯れ果てた帝都に花が咲くようだ。……セレスティーヌ、君のような輝きを持つ女性が、泥にまみれた場所で涙を流すなんて、あってはならないことだ」
レオンハルトは彼女の向かいに座り、熱を帯びた瞳でじっと見つめる。その手は、テーブルの上にある彼女の指先に、触れるか触れないかの距離で添えられた。
「……レオンハルト様。あなたは、エリザベスを恐れていないの?」
「恐れる? まさか。僕は『自由』を愛する男です。彼女のように、すべてを帳簿と金銭で縛り付けるやり方は美しくない。……君の持つ『無償の愛』と、僕の持つ『自由な富』。力を合わせれば、世界は真の輝きを取り戻すはずだ」
彼は立ち上がると、窓際へ彼女を導いた。窓の外には、魔石の街灯で煌々と輝く帝都の夜景が広がっている。
「見てごらん。世界中の民は、みんな君を待っている。……明日、僕が用意した最高の舞台に立ってもらう。君がひとたび聖女の光を放てば、民衆は思い出すはずだ。金ではなく、神の慈愛こそが救いであると」
「……はい! 私、頑張ります。レオンハルト様が信じてくれるなら、私、なんだってできる気がするわ」
セレスティーヌは、夢見心地で彼に寄り添った。レオンハルトは彼女の肩を優しく抱き寄せ、瞳の奥で冷たく計算を続けている。
(……良い。純粋さと、底知れぬ無知。これこそが、エリザベスの『合理性』を破壊する最大の不確定要素だ。磨き上げるほど、彼女の価値は高まり――そして、エリザベスへの打撃は大きくなる)
「……さあ、今夜はもうお休み。明日からは、君がこの世界の主役になるんだから」
レオンハルトの囁きは、甘い蜜のようにセレスティーヌの耳に溶けていった。自分が「最高のヒロイン」として扱われている。その陶酔感こそが、エリザベスを奈落へ突き落とすための、最も高価な装飾品であることに、セレスティーヌは気づいていない。
本日もありがとうございます!
セレスティーヌ様、完全に夢見るヒロインモード全開ですね……。
レオンハルトの『バグ』発言、エリザベスの合理性をどこまで揺さぶるのか。
次回も、どうぞお楽しみに!




