聖女を彩る華やかな嘘 ——GPS付きの聖衣と、甘い花束
「……素晴らしい。聖女の装備を身に纏った君こそ、暗雲を切り裂く『希望の光』そのものだ」
レオンハルトの感極まった声が、地下室に響く。彼がパチンと指を鳴らすと、背後の暗闇から三人の男たちが姿を見せた。いずれも帝都の汚水処理場には似つかわしくない、一癖も二癖もありそうな美形 揃いである。
「紹介しよう。彼らもまた、エリザベスの横暴によって輝かしい未来を奪われた、誇り高き有志たちだ」
没落した大貴族、ヴィクトールが優雅な所作でその場に跪く。
「我が一族が数百年守り抜いてきた神聖な領地を……あやつめ、たかが借金の担保としてゴルフ場に改装しおった。先祖代々の墓石をバンカーに変えられた屈辱、万死に値する……! 聖女様、どうか貴女の光で、あの魔女の手から我が大地を取り戻してください」
隣国の豪商の息子であるハンスが、どこからともなく取り出した見事な花束を恭しく差し出した。
「ナニワ商会のえげつない『赤字覚悟の安売り』のせいで、実家の老舗商会は客をすべて奪われ、一夜にして倒産……。僕も路頭に迷うところでした。ですが、自由貿易同盟の支援があれば、商売は必ず立て直せる。聖女様、僕は君に、世界中の富を捧げたい。僕と一緒に、あの強欲な魔女に『本物の商い』を教えてやりませんか?」
亡命暗殺者、シオンが鋭い眼差しを見せた。
「……組織からの依頼は『魔女の首』。だが、あんたの真っ直ぐな瞳を見て……この命を懸けて守る盾になろう。理屈じゃない、俺の魂が叫ぶんだ」
「まあ……! みんな、なんて素敵なの……!」
セレスティーヌの頬が紅潮する。泥だらけで自分を拒絶したアルベルトとは大違いだ。彼女が欲しかったのは、「特別な自分」を全肯定してくれる、豪華な逆ハーレム。
(やっぱり、これよ! 最初のはただのバグか前座。ここからが本当の『ルミ・ラヴァ』第2部なのね!)
彼女は、自分が握っている杖のGPSが、1秒刻みで「備品無断使用料」をナニワ商会のホストコンピュータに送信し続けていることなど、微塵も疑っていない。
「レオンハルト様、私、決めたわ。この人たちと一緒に、エリザベスの呪縛からみんなを救い出す。まずは、『アウトレットモール』にされた聖域を、私たちの手に取り戻しましょう!」
「ええ。そのための『投資』は、自由貿易同盟がすべて肩代わりします。さあ、向かいましょう。君に相応しい、最高の舞台を用意してあります」
レオンハルトは優雅に手を取り、彼女を馬車へと導く。背後で、ヴィクトールたちが交わした視線は、同志の熱い連帯感ではなく、「この女を神輿にして、どこまで自分たちの利権を取り戻せるか」という計算に満ちていた。
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セレスティーヌ様、ついに念願の(?)逆ハーレム結成です。
ですが、『1秒刻みで課金が発生する』、恐ろしい呪いの……ではなく、ハイテク備品。
果たして、この『先行投資』がどれほどの負債となって彼女に降りかかるのか。
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