第64話 大会準備3 ラミア
前回のあらすじ
アース再び→情報収集→ラミア遭遇
ラミアの集団から何とか逃げ出すこと成功したエルク達はまたしてもドラゴンの住む洞窟の前に転移して来ていた。
「いや~ 焦ったね!」
「死ぬかと思った」
お互いに顔を見合わせて安堵している。特にクラウは直接ラミアと目が合っていたことで、エルクよりも恐怖を感じていた。
「そういえばクラウさ、転移する前に何か聞こえなかった?」
「何か? どうだろうな。声、みたいなものなら聞こえたような聞こえなかったような。 まぁ、それどころじゃなかったから気にしてなかったわ」
「そっか~」
エルクもクラウと同じく転移することに集中していたことで、転移する直前にクラウの言う声がちゃんと聞き取れていなかった。
「クラウ! もう一回行こ!」
「は? 何言ってんだよ、死にかけたんだぞ!」
エルクは転移の直前に聞いた声が気になっていた。ちゃんと聞き取れてはいないが、確かに聞いていた。聞き間違いかと思ってクラウにも確認を取ったら、クラウにも聞こえていたということがエルクにとって気が気ではなかった。
「頼む! もう一回だけ! 遠くからこっそり見てれば大丈夫だから!」
「はぁ。 分かったよ、こうなったらどうにでもなれだ!」
エルクの性格を知っているクラウは反対しても折れないことを知っているため、反対することを早々に諦めた。諦めただけでなく、なぜか気合を入れている。
「じゃあさっきの所からちょっと離れた所に飛ぶよ!」
「おしっ! いつでもいいぞ!」
「ほいっ! 転移!」
エルク達が転移した先は転移する前に居た場所から湖を挟んで反対側だった。
「ここなら大丈夫でしょ!」
「よし、大丈夫そうだな」
さっきのこともあり、二人とも少し警戒心が強くなっている。周囲の警戒を一通り終えた後、さっきまで居た場所を見る。
「やっぱ、ラミアがたくさんいるよ」
「危機一髪だったな」
警戒心が強い為、身を屈めながらラミア達を観察している。
「やっぱり、あの声はラミア達だったのかな?」
「あの声? あぁ、転移する前に聞こえたやつか」
「クラウにも聞こえたってことはモンスターの声じゃないってことだし」
「ラミアって人語話せるのか…… ますます怖いな」
「ラミア以外見当たらないもんね。 あの声はラミアだったのか」
「おい、エルク!?」
「ふふんっ! ちょっと待ってて!」
エルクが声の正体がラミアだと分かった途端に立ち上がる。それを見たクラウはエルクを引っ張るが、エルクはニヤリ顔をクラウに向けてすぐ歩き出す。
「まじかよ」
エルクはラミアに見つかっても大丈夫と言わんばかりに湖の端を歩きながら近づいていく。その様子をクラウはちゃっかり後方から追っていた。
「おい! エルクばれたぞ!」
遂にラミアの1体にエルクが見つかってしまう。クラウが後ろから声をかけるが気にする素振りも見せず、エルクはラミアに向かって歩いている。
ラミアの1体に見つかれば、周りにいる仲間も当然のようにエルクに向かって近づいていく。
「おいおいおい、エルクどうするんだよ」
クラウはエルクから少し離れた場所に居る為、ラミアに見つかっていない。
エルクはというと、ラミアの集団に囲まれていた。
「そこの人間。 ここで何をしている!」
エルクの前を陣取っているラミアがエルクに対して威圧を放ちながら近づく。
「ちょっと、威圧しないでよ。ただ確認に来ただけなんだから」
「確認? 何の確認だ?」
エルクの物怖じしない態度に、ラミアは更に威圧を強め出す。
「長! 威圧を止めてください! 今はそれどころではないでしょ!」
エルクの後ろから声がする。エルクが振り向くと、目の前のラミアと比べて少し小さいが、特徴のある目をしている。
「魔眼か」
「!? 人間それをどこで!」
エルクが振り返って呟いた言葉に長と呼ばれたラミアが強く反応する。特徴的な目をしているだけでは魔眼とは限らない。エルクはこっそり鑑定をしていたのだ。
「それに、その声はさっき聞こえた声にそっくりだ!」
エルクは後ろのラミアをじっと見つめる。
「人間。 突然のことで申し訳ないが、我らを助けてはくれないか?」
エルクが見つめるラミアから突然の頼みを聞いたエルクは、ニヤリと笑い周囲を見渡す。
「ちょっと待ってて!」
エルクはラミアに向かってそう言った瞬間ラミア達の前から転移する。飛んだ先には、見つからないように腰を低くしていたクラウが居る。
「え?」
「行こう!」
「え!」
エルクはクラウと一緒にラミア達の前に転移する。
「まじかよ」
呆然とするクラウ。エルクが目の前に現れた瞬間にこうなるだろうと予想はしたが、一瞬のこと過ぎて心の準備ができていなかった。
「なんと奇妙な魔法を使う」
ラミアの長がエルクを見て言う。ラミアにとっては魔法は使い慣れたものではあるが、空間魔法は見慣れないものだった。
「じゃあ、話を聞こうか」
「あ、あぁ。」
ラミア達にとってエルクは自分達よりも次元の違う魔法使い。そう認識し始めていた。そして、その魔法使いと共に居る人間は、いきなり連れて来られたにも関わらず平静としていて、ラミアに囲まれた状況と理解しても驚きもせず周りを確認している。肝の据わった人間、ラミア達はエルクよりもクラウの方が立場は上なのではないかと思う者もいた。
「我から話そう」
特別な人間。ラミア達はエルク達をそう位置づけた。転移から戻って来た時に威圧を止めていた長が話始める。
「お主たち人間がここへ何をしに来たのかは、もうどうでもよい。 今この森の中に邪悪なドラゴンが住み着きおった。我らはその竜に襲撃を受けて命からがらこの湖へたどり着いたところだった。 元々我らは何十体もの戦士が居たのだが、襲撃を受けた際に散り散りに……」
「邪悪なドラゴンか…… だからアースも忙しいって言ってたのかな」
「うん」
エルクは長の話を聞いてアースが焦っていた理由を知る。クラウはというと、ラミアが人語を喋っていること、集団で生活していたこと、ドラゴンが近くに居ること等で頭がいっぱいになっており、エルクの質問には空返事で答えることしかできなかった。
「でもだからって何で人間に助けを求めたのさ」
「それは……」
「我の魔眼だ」
エルクの質問に長は答えにくそうにしていると、後ろにいたラミアが答える。
「!? そうじゃな、隠しても無駄。」
「魔眼ね~」
エルクは魔眼について詳しく知っているわけではない。ライやジン爺から少し話を聞いたことがあるくらいで、魔眼がどんな効果を持っているのかは知らない。
「我の魔眼は2つあるが、その内の1つが誘導眼だ。 この目で見た者の未来を見ることができる魔眼なのだが、確実に起こる未来とは限らない不確定なものでな」
「ふ~ん。 不確定な未来じゃ当てにならないね」
「今回は当たった。 誘導眼では見た未来が良いものであればそうなるように行動すればいいのだが、悪い未来が見えた場合はどう動けばいいのかが分からない。予知眼であれば違ったのであろうが。」
「じゃあ今回は僕たちがその誘導眼で見えてたわけか」
「いや、少しだけ違うようだ。我が見たのはお主の周りには沢山の従魔が居る景色が見えていた。だから人間に会えば助かると思って湖まで来たのだ」
「へぇ~ 他に違うことは?」
「我らがお主に会うのはまだのはず。 我らが散り散りになった原因であるドラゴンがお主の後ろに倒れているはずだったのだ。」
「ほぉ~ いろいろと違ってるね。 ウル達は居ないけど、ドラゴンなら来たりして」
「エルク、お前が言うと冗談にならないぞ」
しばらくの間エルクと魔眼持ちのラミアが話をしていたが、当然クラウも聞いているわけで、ラミアの話を聞く限りでは、誘導眼は見た者の未来が遠からず当たる。
「おい! あれを見よ!」
突然長が叫び空を指差す。指差した先には大きな体に大きな翼、どう見てもドラゴンである。
「わ、悪い方向に未来が変わっているというのか!」
「ん~ ん!?」
「あれって……」
ラミア達が騒ぎ出すが、エルク達は随分と落ち着いている。
空中を飛んでいるドラゴンはエルク達に向かって急降下してくる。
「あぁ、最悪だ。もはやここまでか」
ラミア達は恐怖と混乱によってただ空を見上げている。そして、ドラゴンが目の前に降り立つ。
『まだここにいたのか』
「アースじゃん! また会ったね」
「え!? どういうこと!?」
ラミア達は目の前で起きていることに驚きを隠せなかった。
読んでいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
ラミアの鑑定情報
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ラミア(長) 魔獣
レベル:12
HP :1500
MP :2300
攻撃力:900
守備力:750
素早さ:820
魔法 風 水 土
能力 擬態 共鳴 硬化 統率
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ラミア(魔眼持ち) 魔獣
レベル:12
HP :1100
MP :2000
攻撃力:640
守備力:550
素早さ:620
魔法 風 水 土
能力 擬態 共鳴
魔眼 誘導眼 魔力眼
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