第63話 大会準備2 情報収集
前回のあらすじ
作戦会議→新たな従魔のテイムへ向かう
クラウの団体戦に向けての準備を進める為、エルク達が向かった先はエルクとクラウが出会って間もないころに来たドラゴンの巣であった。
「また来ちゃった!」
エルクは目の前の周りとは明らかに違う体格を持つドラゴンにそう言い放つ。
『あの時の小僧だな。 見ない内に相当強くなったものだな』
「まあね! いろいろあったから! アースもかなり変わったように見えるけどね」
「おい、エルク! 大丈夫なのか?」
アースと呼ばれたドラゴンとエルクが会話をする中、ドラゴンの言葉が分からないクラウはどういう状況なのかがいまいち理解できていないようだった。
『そんなことはどうでもよい。 ここへ何しに来た?』
「今日はちょっとテイムしたいモンスターがここら辺にいると思ったから詳しそうな知り合いに聞いてみようと思って来たんだ!」
「そうか・・・ 大丈夫か・・・?」
クラウの心配そうな顔に向けて親指を突き立てながらドラゴンと会話するエルク。エルクのにんまりとした顔と手の動作で少しだけ緊張が解れたクラウだったが、ドラゴンの顔を見ずに会話していても大丈夫なのかと不安にもなっていた。
『なるほどな、だがあまり時間は取れん。 今は何かと忙しいからな』
「どこら辺に居るかだけでも教えてもらえたら嬉しいんだけど」
『・・・簡潔に特徴を教えろ』
時間が惜しいと聞きながらもエルクは図々しくドラゴンにねだる。体をクネクネとさせながら見つめてくるエルクを見たドラゴンは、このままではエルクに時間が取られてしまうと考え、断るのをやめた。きっとエルクは断っても何度も願い出てくる、そう考えたアースの判断は正しかった。
「よし! まずね、下半身がウネウネしてて、魔法が得意! だけど接近戦もできる!」
『ほう、ラミア種か。 珍しいな、大抵の人間は恐れをなして近づきもせんのに』
「ちょっと理由があってね!」
「下半身がウネウネ・・・? 魔法が得意・・・?」
エルクとアースが会話を続けていく中で、クラウはエルクの言葉を聞いて会話を想像していたが、エルクの言った特徴を持つモンスターをクラウは知らなかった。
エルクは敢えて種族名ではなくモンスターの特徴を教えた。アースならこの辺りにラミアがいることを知っていても不思議ではないが、クラウは村から少し離れた場所に住んでいるモンスターの事は分からないだろうと読んでモンスターの特徴だけを伝えた。
なぜエルクが知っているのかというと、エルクが育った村では度々モンスターの被害に遭ったという人がそのモンスターの特徴をジン爺に伝えに来ているのをよく聞いていたからだ。どんなモンスターで、どんな特徴があり、どこら辺で遭ったのか。それらをエルクは覚えていた。
『そいつらであればこの山からそう遠くない湖の近くにいるだろう。 奴らは水辺を好むらしいからな』
「へぇ~ 水だと冷たくなっちゃわないのかな」
『知らん。 さて、もう用は済んだだろう。 さっさと去れ。』
アースは早くエルク達にこの場から居なくなって貰いたい一心で、エルクとクラウを太い尻尾で入口まで押していく。当然クラウは押される前に走って逃げている。
「わ、分かったから、押さないでよ!」
『そう易々とここへは来るなよ。 ここだって安全なわけではないからな』
「どういう・・・ わわわ!」
エルクが理由を聞く前に尻尾で入口まで押し返されてしまった。その後はアースの周りにいたドラゴン達が入口を塞いでしまったために、詳しい話を聞くことができなくなってしまった。
「あ~ 仕方ない、 目的のモンスターに会いに行きますか! っぃて?!」
そういってエルクはクラウの方向を振り向くと同時に頭にチョップを食らった。もちろんやったのはクラウだ。
「何が仕方ないんだよ!? さっぱり分かんねぇよ! 何の話をしてたんだよ! もうちょっと教えろよ!」
クラウが言葉を発する度にエルクの頭へチョップを食らわせる。
「分かった、分かったから! チョップ禁止!!」
「ったく! 何の説明も無しにドラゴンの巣へ来てみれば、いきなり囲まれるし、話は分からねえし___」
「転移!」
エルクはぶつぶつと文句を垂れるクラウを横目で見ながら、洞窟の外へと一瞬で転移する。
「__うわっ! 転移するなら言ってくれよ!」
「あはは、ごめんごめん! 集中してたみたいだからいけるかなと!」
「誰のせいだ!」
「まあまあ、落ち着いてよ! 情報は手に入れたんだし! さっそく向かおう!」
「結局何をテイムするのか分からないんだが」
エルク達はアースに言われた湖を目指し歩いていくが、クラウは未だテイムするモンスターが何になるのか不安でしょうがなかった。
「ここかな?」
「まあまあ広い湖だな。 ここにいるのか? まさか水棲のモンスター!? 武魔術大会は陸地だぞ?」
「ちょっと落ち着いてよ! この中じゃなくて、この周りに居るらしいから」
「この周りか、水辺が好きなモンスターって何だ? いっぱいいる気がするんだが」
クラウが様々なモンスターを想像している最中エルクはずっと目的のモンスターを探していた。いつもならウルが近くに居て、モンスターがどこに居るのかを教えてくれるが、今はいない。エルクは敢えて連れて来なかったのだ。
エルクはテイマーであり、戦闘は基本的に従魔を頼ってしまうことが多くある。それがテイマーであり、普通なのだが、エルクの場合はそれが嫌だと考えている。何をするにも従魔の力を頼りにしていては自分が成長できない、とエルクは思っていた為に今回は従魔を連れず苦労することになっている。
エルクは自分の成長を考えているが、普通のテイマーは従魔の力を活かすことを常に考える為いつも一緒にいるのが基本だ。クラウも例外ではないが、隣にいるのはエルクだ。つまりクラウはエルクの巻き添えになっていることに本人は気付いていない。
「なあ、 そろそろ何をテイムするのか教えてくれてもいいだろ?」
「ストップ! 静かに。 良いタイミングだよ、クラウ。 あれが今回のターゲットだよ」
クラウが痺れを切らしてエルクを問い詰めようとするが、ちょうどそのタイミングで目的のモンスターが姿を現す。
「下半身が蛇、上半身が人なモンスターが、1,2,3,4…… 10。 10体も居るけど、多くね?」
「あれ? おかしいな、珍しいはずなんだけどな」
ラミア種。下半身は蛇のような鱗で覆われていて、上半身は人間の女性によく似ている。群れを成すことは稀にあるが、基本的には単身で生きている。戦闘スタイルは土・水魔法が得意ではあるが、近づいてきたものに対しては下半身を巻き付け動けなくするといった人間でいえば魔法戦士職になる。
「あれは亜人の類じゃないのか?」
「僕の知る限り、それはないと思うよ」
クラウはラミア種を見たことがなく、リザードマンと同じようにこの世界で人と共に暮らしている存在ではないのかと疑っているが、エルクが知っているラミアは人間との共生を望まず、近づかれればテリトリーに侵入したとみなされ襲われる。
「まじか」
ラミアについて知っていることをクラウに伝えると、物陰に隠れるように静かにしゃがみ、ラミアから目が離せなくなっていた。
「クラウ。 どうしたの? いきなり目が見開いているよ」
「あぁ。 だってエルクの話を聞いている途中からラミアと目が合ってた気がするんだよな。 ははは。 気のせいかなさっきより近づいてる気がすんだよね」
「クラウ。 これは・・・ 一旦逃げよう! 数が多すぎる!」
「転移だエルク! 頼む! 早く! 急げ!」
「・・・け・・て・・・!」
「転移!」
クラウの言った通り、ラミア達は急速にエルク達に近づいて来ていた。転移する直前にエルク達は何かを聞いたような気がしたが、ちゃんと聞き取ることができなかった。
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