第61話 学園武術大会
前回のあらすじ
採取→狩り見学→帰宅
リザードマンの村から帰ってきた次の日、エルクとクラウは学園を遅刻した。
「エルク急げ!」
「遅刻だー!」
・・・・・
いつもの朝だった。クラウが先に起き、学園の支度を済ませエルクを起こす。寮内がいつもよりも静かなことに違和感を覚えつつのんびりと支度をしていた。
「おはようエルク」
「お~は~」
2人は村であったことをお互いに話したかったがそれは学園に着いて、メル達と一緒に話をした方が盛り上がると思い互いに話さずにいた。
「じゃあそろそろ、行こうか」
「おっけ~ って、あれ? クラウ、この時計壊れたのかな? もう1時間も過ぎてるよ?」
「はっはっは! そんなわけないだろ? 時間が知りたいのか? なら俺の時計で見てみるよ。 あれ?」
「どうだった?」
「ははは。まさかねエルクと同じで1時間過ぎてるや・・・」
そして2人は気づく。寝坊していたことに。そしてなぜ起きてから時間を見ずに行動していないかったのかを悔やむ。例え時間を見ていたとしても遅刻していることに変わりはないのだが。
・・・・・
「エルク急げ!」
「遅刻だー!」
そして現在に至る。
学園に着いた頃には2時限目が終わっていて、3時限目が始まろうとしていた。
「だぁ! 到着!」
「はぁ。疲れた。」
「兄さん! エルク! 何してたの!?」
従魔クラスに入って自分の席に着く。エルクとクラウは何事もなかったかのように3時限目を受けようとする。
「これこれ、そこの2人。ちょっと来るんじゃ」
「ジン爺ぃ……」
「学園長ぉ……」
遅刻した2人をジン爺が見逃す訳もなく、2人はジン爺に連れられ学園長室へと入っていく。
学園長室に着き、ジン爺は椅子に座る。エルクとクラウはジン爺と向かい合ったまま立っている。
「さて、お主らをここに呼んだ理由は分かっておるかね?」
ジン爺はニヤつきながら、そして白々しく問う。
「はぁ~どうせ遅刻がどうのこうのっていう罰則があるんでしょ」
クラウがいつも通り緊張しているため、エルクが代わりに質問の答えを返す。
「は? なんじゃお主ら遅刻しておったのか。だからそんなに汗を掻いておるのか」
ジン爺はエルクの答えが予想外だったのか、目を丸くしてエルクとクラウを見つめる。
「あれ?」
「え? 遅刻のことではないのですか?」
エルクとクラウもジン爺の答えが予想外でお互いに顔を見合わせる。
「遅刻したら何とかって罰則は確かにあるが、そんなことどうでもいいんじゃよ!」
学園の長である人物が自分で作ったであろう罰則をどうでもいいと言い放つ。
「ふぅ~ なんだ。じゃあ何のために呼んだの?」
エルクは罰則が無いことに安堵し、ジン爺がなぜここへ呼んだのかを質問する。
「そうじゃったな。え~この学園には武術大会という催しがあっての。毎年優秀な生徒達が参加してるんじゃ。武術大会はのぅ___」
学園武術大会。毎年春と秋に開催される学園最大の催しである。この大会は各クラス毎に参加者を募りトーナメント形式で模擬戦を繰り広げる大会である。トーナメントは個人戦、団体戦の2種類があり、トーナメントは学年ごとではなく学園全体で行われるため3日間も開催される。しかし、今年入ったばかりの生徒は危険が多いため、春の大会への参加は禁止とされている。
「___なんじゃ。」
「ふーん。今回はただ見てるだけなんだね~」
「エルク。なんでこの話をここでしたのかって考えると、嫌な予感がするよ」
ジン爺の説明を聞き、エルクは退屈そうに、クラウは嫌そうに反応した。ジン爺はその反応を見て、またニヤつく。
「ほぅ。お主鋭いの! 言い忘れておったがな、この大会には学園長推薦枠っていうのがあるんじゃ。推薦された者は参加することになっておっての!」
「お! つまり!」
「あぁ~ やっぱり」
ジン爺の言葉を聞きエルクは喜び、クラウは表情が険しくなった。
「もう分かると思うが、その推薦をお主ら2人にしようと思っての! なに。心配などいらん! 気楽にやればよいのじゃ」
「よ~し、じゃあ僕が個人戦かな~」
「はぁ。仕方ない、僕が団体戦でいくよ」
「ほっほっほ! 話が早くて助かるのぅ。大会は2週間後に始まるからの! 準備しておくように。大会の内容について詳しく聞きたかったら適当にそこらの先生捕まえて聞くとよいぞ。儂からは以上じゃ。時間をとってしまって悪かったの。」
突然決まった大会への参加。個人戦の内容や、団体戦の内容。ルールを知るために早速やる気のなさそうなダイキン先生を捕まえた。
「え~? 大会について知りたい? なんで君たちが?」
いつも通り面倒くさそうに、気だるそうに喋るダイキン先生。
「大会に参加するんです!」
「僕が団体戦で、こっちが個人戦に。学園長推薦とかいうやつで」
大まかなことをエルクが、細かなことをクラウが説明する。
「へぇ~ 学園長推薦ね~ 今年は学園長も少しだけ楽しみにしてるってことかね~。っとまぁ説明ね。何から説明すればいいかな~。模擬戦やったことあるなら大体それと同じだけど」
「模擬戦やったことあるけど、1対3だったし、しかもその時にルール決めてたよ!」
「個人戦は何となく予想が付きますけど、団体戦っていうのはいろいろとありそうですし」
「分かった分かった。説明するから。そうだな~ まず____」
個人戦のルールは簡単で、対戦相手を気絶または降参させれば勝利となる。もちろん相手を殺傷するような攻撃は禁止されており、もしその攻撃が死に至らしめるような攻撃であれば即反則負けとなる。武器の使用は自由で、魔法も使い放題だが、戦闘開始前に強化魔法等を付与しておくことはできない。
団体戦は人数制限が3~5人となっており、対戦相手を全員気絶または降参によって勝利が確定する。もし自分のチームが5人で相手が3人の場合少ない方に人数を合わせ対戦する。5人のチームは誰が対戦してもよい。その他は個人戦とルールは同じである。
「___とまぁ、こんな感じでやっていくわけだが」
「一つ質問なのですが、従魔を団体戦につれていくことはいいんですか?」
「ん? あ~問題ない。 問題ないが、毎年この大会の為に変なモンスターをテイムして言うことを聞かないっていうのは勘弁してくれよ。 めんどくさいから」
「分かりました。ありがとうございます! よし、早速準備だ! いくぞエルク!」
「お? おう!」
クラウは団体戦の準備のためにエルクを連れてすぐ学園を出ていく。走り去っていく2人を見ながらダイキンは呟く。
「今年は元気がありそうだな~」
「こんなところで何をしているんですか? ダイキン先生?」
「うげっ! ハイネ先生……」
この後ダイキンはいつもより多くの仕事が待っていた。
クラウとエルクが学園の門から出ようとすると、ある声が聞こえた。
「あー! もう! 遅いな~」
「まぁまぁ。 メルちゃん落ち着いて」
「エネは落ち着きすぎだよ~」
メル達3人が門の所で話をして誰かを待っていた。十中八九エルク達を待っているのは間違いないのだが。
「お~い!」
「おい! バカ!」
エルクは呑気にそして、そのエルクにクラウが怒るようにメル達の元まで走ってきた。
「さて、説明してもらえるかな? 兄さん? エルク?」
メルが怒っているのは、遅刻のことや、学園長推薦の話などを全くせず勝手に2人でどこかに走っていったからである。本気では怒ってはいないが、何も説明なく楽しそうにしている2人を見て嫉妬しているだけである。
「あ、あれ? 怒ってる?」
「エルクのアホ」
大会の準備をしようと気持ちが高ぶっていたが、先にメルの怒りを鎮めることから始めなければいけないエルクとクラウであった。
そして、今年の春大会は大番狂わせが何度も起きることとなる。
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