第57話 儀式
前回のあらすじ
苦戦→逆転→楽勝
エルク達はリザードマンを救出し、迷いの湿地を抜けてリザードマンの村へと帰ってきた。村に入る前に若いリザードマンがエルク達が帰ってきたことを村中に伝え回ったため、村長の家に着くまでに少し時間が掛かっていた。
『あぁ! やっと帰って来た!』
『またこの村を見ることができるとは』
『早くあいつらに会いたいぞ』
捕らえられていたリザードマン達はエルクに感謝の言葉を言って早々に村へと駆け込んで、リザードマン同士でワイワイと騒いでいる。
「みんな嬉しそうだね~」
「そりゃそうだろ! 行方不明って言われてたやつが全員帰って来たんだからこんな風に盛り上がるよ。イェール村でも何かあったときは村人全員でいろいろとやったもんだよ」
「エルクと初めて会った時も子供1人に村人全員で探し回ったじゃない! この村もそういうことよ!」
エルクがリザードマン達の様子を見て笑顔でクラウに話しかける。クラウも自分の村のことを思い出しながらエルクと笑いあっていると、メルも会話に入ってくる。そうなれば必然的にみんなが会話に参加しだして、リザードマン達と同様にエルク達も楽しげに騒ぎながら村長の家へと向かっている。
「エネ、もう大丈夫だから!」
「ダメです! いっつも無茶ばかりするんだから! 掴んでいないとどこかに行ってしまうでしょ!」
「エ~ネ~ 私も構ってよ~」
「エルク君! ちょっと助けてくれないか!」
ミルラ、エネ、ソウもリザードマンに、エルク達につられて緊張した雰囲気は無くなって行き既に慣れたものである。
村に入るなりいきなりリザードマンに囲まれ、話かけられはしたがやっと村長の家の前に到着する。家の前には既に戦士隊長が先に居て、エルク達を待っていたようだ。
『今回の件、本当に感謝している。既に準備はできている入ってくれ』
「準備?」
村に入ってすぐに村長が出迎えてくれるかと思っていたが、家に来て欲しいということだけを伝えられて、出迎えてくれてもいいじゃないかと不満に感じていたエルクだったが、なにやら準備をしていたらしく少しだけニヤつきつつ家に入っていく。
「この度は我がリザードマンの民を救っていただき、感謝の言葉を申し上げまする」
村長の家に入っていきなりこれだ。村長が頭を垂れ片膝を着いて待っていた。
「え~と?」
「このリザードマン部族を代表して感謝申し上げる」
「あ、うん! もう大丈夫だよ」
村長の行動にエルクは一瞬困惑したが、村長が同じことを2回言ってきたことで何かしらの反応が欲しかったのだと思い、手をひらひらさせて反応を返す。
「すまないのぅ。疲れているところで悪いのじゃが、感謝をと思って宴会の準備をさせてもらったのじゃが食べていってくれないかの?」
「宴会……」
「エルク」
宴会という言葉にエルクは固まり下を見てしまう、それを見たクラウがエルクの肩に手を乗せ名前を呼ぶ。
エルクが振り返りクラウ、メル、エネ、ソウ、ミルラの顔を順に見ていく。そしてもう一度村長へ向き直った
「どうかの?」
村長がエルクに再度問う。そして
「もちろん!」
「おっほっほっほ! そうかそうか!」
エルクもクラウもメルもみんなお腹が空いていてちょうど良かった。今日はリザードマンの村に泊まることになるのだが、明日も学園は休みなのでこれもちょうど良い。
村長が戦士隊長に合図を出し、すぐに宴会が始まった。帰って来たばかりのリザードマン達も宴会と聞いてすぐに準備をして、村の大広間に顔を出していた。
エルク達は各々宴会を楽しんでいた。
クラウとメルは肉を食べ、野菜を食べ、そこら中にある食べ物を食べ歩いていた。
エネ、ソウ、ミルラはエネの従魔のバジリスクがリザードマン達に珍しがられ言葉が通じない中身振り手振りで意思疎通を図っていた。
エルクの従魔達はというとウルは村の外へ狩りに行ってしまったが、他のスラ、ライ、ラネ、ダクトは一緒になって遊んでいる。エルクの従魔ではないが、グレムリンもそこに居た。
エルクはというと、リザードマン達が次から次へと様々な物を持ってくるため動こうにも動けずにいた。
『救世主! どうぞこれを!』
「あぁ、ありがとう」
『救世主様! ぜひこれを!』
『救世主様! 次は___』
「ありがとありがと~(くっそ~クラウ達楽しそうに~)」
リザードマン達からの感謝が止まらない。クラウ達にも感謝の言葉を言いに行く者もいるのだが、言葉が通じないため、笑顔を返されてそれで終わってしまう。しかし、エルクは言葉が通じると村長や戦士隊長が村の全員に話してしまった為、反応を返さざるをえない状況になってしまっていたのだ。
日が落ち、完全に空が暗くなった頃、エルクがやっと自由に動ける時間が増えてきていた。しかし、その頃にはクラウ達もエネ達もスラ達も全員が遊び疲れ、食べ疲れて座り込んでいた。
エルクはリザードマン達から貰った物を1箇所にまとめて置いておき、クラウ達のいる場所へと歩いていく。
「クラウ~卑怯だぞ~ 俺に全部任せやがって~!」
「お~エルクお疲れ~ 悪い悪い。まあ座れよ」
エルクが手を振りながらクラウを呼び、応えるようにしてクラウも手を振り返す。
「いや~疲れたよ~ よっと!」
「お疲れエルク。はい、これ」
エルクがクラウの隣にドスンと腰を下ろす。それと同時にメルが飲み物をエルクに渡す。
「お! ありがとありがと!」
「お~い! メルちゃ~ん!」
「あ! エネちゃん、ソウちゃん! こっちこっち!」
エルクが来たところでエネもソウも集まってくる。次第にスラ達も集まってきて、エルク達は円になって腰を下ろして、わいわい騒いでいた。スラが真ん中で変形してみんなを盛り上げていたり、ダクトが女性陣の腕の中をいったりきたりしていたりと従魔達のくつろぎ方は様々であった。
「ちょっといいかね?」
「あ、村長さん!」
にぎやかに話をしているエルク達の所に村長がやってくる。いち早く反応したのはエネだった。
「どうしたんですか?」
村長がここに来たということは何かしらの用件がある、そして早速メルが村長に尋ねる。
「もう日が落ちたのでな宴会を終わらせようと思うのじゃ」
「そうだね~結構楽しんだよね!」
「で、最後なのじゃが。エルク殿にちょっとやってもらいたいことがあるのじゃ」
「え? まだ何かあるの?」
「ただ立っていてくれればよいのじゃ」
そういって村長はエルク達の円から離れていき、リザードマン達を集めだした。
村長の掛け声で続々と集まりだすリザードマン。宴会に参加していなかった者まで集まってきており、この村の全員が大広間に集まった。
「こんなに居たのかよ!」
「何やるんだ?」
クラウが目の前のリザードマンの数に驚き、エルクは今から何をやるのか心配で気になっている。
『あれが救世主か』
『まだ小さい人間なのにな、見かけによらずって事か』
『どれだけ強いのだ?』
エルクには集まってきたリザードマンの中から話し声が聞こえており、戦士風の屈強なリザードマン達から小さな声でエルクを見た評価が聞こえていた。
『エルク殿! 来てもらえるか!』
「あ、呼ばれた」
クラウ達と一緒になってこの状況を見守っていたエルクだったが、いきなり村長に呼ばれる。その声はエルクにしか分からずクラウ達は村長がこっちを見て何かを叫んだようにしか映っていない
「何もないと思うけど気をつけろよ~」
「何かあってもエルクなら大丈夫よ!」
「ほ~い、行って来ま~す!」
一応の心配をしてくれるクラウ、もう既に何が起きても大丈夫と思っているメルが歩いていくエルクに声をかける。
村長の隣に来たエルクは目の前のリザードマンの視線に耐え切れずずっときょろきょろと目を動かし続けている。
『ではこれより! この度我が同胞を救ってくれたエルク殿に感謝を!』
村長の一声で全てのリザードマンが頭を垂れ片膝を着く
「……(またかよ)」
その光景を何度も見ているため見慣れてしまったエルクは先程よりも視線が無い分ちゃんと前をむけるようになった
『そして! ここに救世主としてエルク殿を認める! 意義はあるか!!』
『救世主!』
『我らの忠誠を!』
『意義無しだ!!』
頭を垂れていたリザードマンが一斉に顔を上げエルクと村長を見て叫ぶ
「な、なんだよ救世主って!?」
エルクは堪らず村長に聞く
「はて? 知らんのか?」
「知らないよ! みんなずっと言ってきてたけど、何か意味があったの!?」
「そうじゃな。リザードマンにとっての救世主とはそのままの意味なのじゃが、救世主と認めた者を我リザード族が付き従うことを約束するようなものじゃ」
「えぇ、勝手に決められても……」
「よいよい! 別にずっと一緒に付いて行くわけじゃないのでな。ここに来たとき、又はエルク殿が何か頼みごとをすればこの村全員がそれに応えるように動くということだけじゃ!」
「あ、はぁ」
エルクは救世主の儀式によってこの村のリザードマン全員を従えることのできる存在と認められた。
儀式は終わり、時間も時間なのでこの日は寝ることになった。明日の予定は未定である
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