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辺境の村のモンスターテイマー  作者: スルメイカ
第一部・王都学園編
58/89

第55話 スラVSライ再び

前回のあらすじ

ヒュドラ登場→戦闘→スラ裏切り

 ヒュドラとの戦いに終止符を打ったかに思えたスラの強大な魔法はヒュドラを討ち取る魔法ではなく、ヒュドラをスラの持てる最大強化魔法と回復魔法によって振り出しに戻ってしまった。むしろ現れたときよりもヒュドラは強くなっている。


 現在ヒュドラの相手をしているのはウルを筆頭にエルク、ラネだけである。リザードマンの戦士隊長やクラウ達は強化されたヒュドラをみたエルクが離れるように指示して避難していた。


 スラ、ライのスライム兄弟は現在空中に浮かびただ相手を見て動かない。


「ライ大丈夫かな……」


『よそ見するな!』


「うわっ!」


 ドッガーン!


 エルクはライにスラのことを全て任せてしまったことで心配になり、ちらちらと空中に浮かぶライを見ていたが、そんなことをすれば目の前のヒュドラに狙われるのは当然であった。ウルの注意がなければヒュドラの踏み潰しが直撃していただろう。


「っつ~! それにしても強くなり過ぎじゃね!?」


「あのスラの本気の強化魔法よ! 当然でしょ!」


「なんで嬉しそうなのさ!?」


 ヒュドラの攻撃を避けつつ隙がないか考えているうちに思っていたことが口に出ていたエルク。そしてそれを聞き取ったラネが反応し、笑顔でエルクに威張っている。


「とにかく調べなきゃ始まらないか!」


「って、あんたまだ鑑定してないの!? ばかじゃないの!」


 ヒュドラが現れてからまだ一度も鑑定を行っていないエルクをラネが怒る。それに対してエルクはムッとするが、言い返す言葉もないので、早速鑑定に移る。


「おいおい…… まじかよ……!!」


 鑑定したエルクは驚愕の表情でヒュドラを見ている。


「ねえ! どうだったのよ!?」


 ラネはエルクが何も情報を言わないことに若干腹を立てながら再度ヒュドラの弱点を聞くが


「やっぱスラはすごいや、ほら!」


 ラネの問いかけに答えたのかは分からないがエルクは従魔全員にヒュドラの鑑定結果を念で送る。


----------------------------

ヒュドラ 魔獣

レベル:78

HP :76500 +70000

MP :14200 +70000

攻撃力:54000 +70000

守備力:55700 +70000

素早さ:47000 +70000

魔法 風 火 闇 雷

能力 ブレス ???

----------------------------


 固定7万強化、それが現在のスラの最大強化魔法の力であった。エルクから送られてきた念を感じ取りヒュドラの鑑定結果を見て対面しているウルとラネもエルクと同様に驚いていた。


『ッチ! 厄介な……』


「こんなの卑怯じゃない!」


「僕もそう思う……っよ!」


 エルク達はヒュドラの攻撃を避けつつ反撃の機会を窺っていた。


・・・・・・・・・・


『兄さん! らしくないね! 全然喋らないなんてさ!』


 空中ではスライム兄弟のやりとりが行われていた。


『……お』


『全然聞こえないよ兄さん。いつもは僕なんかよりもずっとうるさいじゃない』


『お……とう……と……』


『そうそう、いつもそうやって僕のことを弟って呼ぶんだよ! 誇らしげに、ね!』


 ライは顔をひっぱたくようにスラに向けて魔法を放つ。張り手を模った土魔法と火魔法の合成魔法による強烈な一撃だ。


『……ふ』


 ライの放った張り手はスラに届く前に何かにぶつかったようにして動きが止まってしまう。止まった魔法は勢いをなくしていきやがて消えてしまう。


『障壁魔法ですか、なら!』


 物理に対する対抗手段、攻撃手段としてスラは障壁魔法を好き好んで使う。そのため、相手に物理的に干渉する魔法は障壁魔法の張られていない場所を通っていかなければならず、スラには効きにくい。それならばと考えたライは障壁に干渉することのない魔法でスラを攻撃する。


『!?』


 ライが放った魔法は光、光を一点に集めその場を溶かす程の光の熱による大型魔法である。スラは障壁魔法を周囲に展開していることで自身の移動場所も制限してしまっていた。


『兄さん、こんなんじゃないでしょ!』


 ライは知っている。スラはこの程度の魔法で倒せるほど簡単ではないこと、戦闘になれば天性の才能によってどんな状況でも切り抜けてしまうことを。


『ぐ……おぉ……』


『やっぱり、いつもの調子じゃないみたいだね』


 ライは頭が良い。それはエルクの従魔達の中でも1番といってもいいほどに頭の回転が早く、何か考え事をするときにはいつもライの考えを聞くようにする等頼られる場面が多い。


 それに対してスラは、直感で動くタイプだ。しかし、天才でもある。スラは基本的に遊んでいるイメージがあるが、戦闘になればエルクやウルでも驚くようなトリッキーなことをやってのける。今回のヒュドラに変形したのもそうだ。やろうと思ってやればできてしまう、それがスラである。


『兄さん。そろそろ本気出さないと終わっちゃうよ?』


 永遠と放ち続けられる光魔法を浴びているスラ、その体の表面が徐々に赤くなって


『おぉ……』


 ライの問いかけに答えることもできないスラはだんだんと地面に落ちていく


『こんなんじゃ勝った気になれないよ』


 ライは地面に落ちたスラにゆっくりと近付き


『兄さん? しっかりして!』 


 スラを起こすように体の表面を叩くライ、ぽよんぽよんという音が聞こえてきそうな絵だ。ライはスラを叩きつつ思う


『それにしてもこんな簡単に終わるなんて』


『……』


『兄さん! 起きた?』


 プルプルと震えだしたスラに反応したライだが


『うわっ!』


『……』


 ライは突然動けなくなり、そして動き出すスラ。ライは油断していた、こんな簡単に終わるはずがなかったのだ。


 障壁魔法に捕らえられたライは身動きがとれず、障壁魔法によって固められてしまう。


『にい……さん……!』


 どうにかして障壁魔法を突破しなければスラがヒュドラの加勢に向かってエルク達が危ない。そうなる前にライは行動する。


 叩いてもビクともしない障壁魔法を壊すには強度以上の攻撃をしなければならない、そしてその強度はスラの込めた魔力量によって決まる。


『(そこまで魔力は込められていない……なら!)』


 ライは障壁魔法を壊すために自分に向けた魔法を放つことにした。そしてそれは周囲に様々な属性魔法の玉や塊であった。


『(これでどうだ!)』


 周囲に無数の魔法が出現しそれが半分ライに向かって飛んでいく、それは全てライが出した魔法だ。もう半分の魔法はスラに向けて放たれた。連続魔法、同時操作、その繊細な操作を障壁の圧力に耐えつつ行うライの胆力はものすごいものだ。


 ドッガーン


 スラとライの両方の位置から大きな爆発音が鳴る。


『く……まだか……』


 ライを取り囲む障壁魔法は破れてはいなかった。そしてスラに向けて放たれた魔法は全てスラの周りで半分は消え、半分は止まっていた。


 ライを取り囲む障壁魔法の強度が上がり、ライが耐え切れる限界まで迫っていた。この勝負はもう決着が着いたかに思えたその瞬間


「俺にできるのはこのくらいしかないぜ!」


 ライは一瞬にして障壁の壁から抜け出ることになった。障壁の中に居たはずのライはすぐ近くの地面に居た。ライの危機に駆けつけたのは、グレムリンだった。


 リザードマン達と一緒に遠くからヒュドラとの戦いの眺めて居たが、スラとライが離れたところに移動したことでどちらも見れる位置に移動していたグレムリン。ヒュドラとの戦いに参加することはまず無理だと分かっているグレムリンはヒュドラが近付いてこないかを確認しながらスラとライの戦いを見ていたのだ。


『……』


「う、うおぉ!!」


 突然現れたグレムリンに対して放たれる魔法。何十個もの魔法がグレムリンを襲うが


『感謝するよ! やっと出れた!』


 その全てを相殺するライ。振り出しに戻る戦いだが、案外決着は早かった。


『兄さん、もう容赦はしないよ』


 ライが今まで以上に無数の魔法を出現させる。その魔法全てがさっきまでの威力を超えている。1つ当たるだけでも大怪我につながりそうな魔法がスラの周りに逃げ場のないように散りばめられる。


「こ、こりゃすげぇ」


『いけ!』


 無数の魔法にその洗練された一つ一つの魔法の玉に感動しているグレムリンを横にライはその全てをスラに向けて放つ。


『……ん……ん!? な、何じゃこりゃ!!』


『あ』


 ヒュドラの魅了は時間によって切れる。そうエルクに言われていたが戦闘に夢中になり忘れていたライ。確かに魅了が切れる前兆はあった。魅了になった最初よりも普段のスラの戦い方が少しだけ戻っていたのだ。それが死んだフリである。終わったと見せかけて何度も復活する卑怯な得意技だ。


 ドンドンドンッバーン


 ライの威力を込めた無数の魔法がスラに襲い掛かる。


『に、兄さ~ん?』


「こりゃ死んだんじゃ……?」


 ライとグレムリンが心配してスラに近付く


『ごほっ! げほっ! お、おいらし、死ぬかと思った~』


『兄さん!』


「なんて生命力だ…… あの人の連れているモンスターは皆規格外なのか!?」


 スラは意識を取り戻したと同時に飛んでくる魔法全てに障壁魔法を展開していた。飛んできた近い順に障壁魔法を張り、さらには自分の周りを囲むようにして障壁魔法を張っていたが


『く、くそ~7発ぐらいモロも食らったぞ~』


『兄さんよく耐えれたね』


『当たり前だろ! 兄さんだからな!』


『意味が分からないよ。じゃあ戻ろう!』


『ほいほ~い! っとその前に回復回復!』


 スラVSライの勝負ここに決着。未だに戦っているエルク達の加勢に向かうスラとライ、それを見送るグレムリン。


「俺もあんな風に強くなれるかな……」


 エルクの仲間になりたいグレムリンは、スラとライを見て着いていけるか心配になるのだった。

読んでいただきありがとうございます!


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