第48話 妖精
前回のあらすじ
怪しい男→糸発見→またも怪しい者
エルクとクラウはエネの兄らしき人物を見つけたが、意識が朦朧としていて、まともに話をすることができない状態だった。どうしてそうなってしまったのかを探りつつ、治し方を見つけようと湿地を探索していたが、ある者がエルク達の前に現れる。
エルク達は警戒するが、その者に敵意は無く、どちらかといえば友好的である。
「さて、自己紹介をしよう。私の名はヴァニア。この湿地に好き好んで住んでいる、妖精だ」
その者の名はヴァニア。見た目はただの小さい子供だが、背中に翼が生えており、僅かに宙を浮いている。妖精と聞いた途端にエルクとクラウは驚いていた。
妖精とはこの世界でドラゴンに匹敵するといわれているほどの強さを持っていると伝えられている。ドラゴンと違う点は、妖精は魔法が特に得意で、魔法で妖精と張り合えるモンスターはまずいない。そんな撃レアモンスターがエルク達の目の前に姿を現していた。
魔法最強のモンスターといわれる妖精だが、ヴァニアからは特に強そうな雰囲気は感じず、寧ろ弱そうとさえ感じるほどである。
そのヴァニアに対してエルクが鑑定をして能力やステータスを覗き見る。
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ヴァニア 妖精
レベル:???
HP :25
MP :50
攻撃力:15
守備力:30
素早さ:25
魔法 風
能力 飛翔
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全ての数値が低すぎる。たとえ魔法最強の妖精といえども、ここまでステータスが低ければ、この湿地だけではなく、他全てのモンスター生息区域では生きていけない。
つまりこの妖精はエルクの鑑定を能力で妨害しているか、ステータスを偽装しているかのどちらかである。
「妖精なんて初めて見たよ」
エルクが驚きつつ、クラウに言葉を投げる。
「俺だってそうだよ」
エルクと同様に妖精の姿に驚いていた
「そんなに驚かれても困るんだが、とりあえずその人間の魔法を解く。いいな?」
「うん! お願い!」
エネの兄に掛けられていた魔法がヴァニアによって解かれる。魔法を解かれたエネの兄は、だんだんと顔色が良くなっていき、ついにはっきりとエルク達を見据える。
「ここはどこだ…… 俺は確か…… 君達は……?」
エネの兄はヴァニアの魔法によって、自身の記憶の中に閉じこもっていた時間が長く、魔法を掛けられる前の記憶は薄くなっていた。
「僕はエルクです」
「私はクラウといいます。え~と、エネさんのお兄さんですね?」
意識がはっきりとしてきたエネの兄に、軽く自己紹介をし、本題に入る。
「エネ…… あぁそうだが、君達はエネの知り合いか?」
エネという名前を聞いた途端に目を細め、エルクとクラウを怪しむエネの兄。
「そうです! 王都武魔術学園に通っていて、エネさんの友達です!」
エルクはなるべく明るくエネの兄に接しようとする
「エネはまだ12歳のはずだが?」
「「え?」」
エルクとクラウはお互いに顔を見合わせる。エネの兄の言っていることが理解できないからだ。ここにくる前エネから聞いた話では確かに5年前に兄が居なくなったと聞いていたが、5年前から今まで一体何をしていたのか。その記憶が綺麗さっぱり無くなっているかのように、当たり前とでもいうようにエルクに言葉を返してきた。
「それについては私が説明しよう」
「誰だ!? お前は……!!」
先程からずっと一緒に居たが、存在感を無くしていたヴァニアがエルク達の会話に割り込む。エネの兄はヴァニアを見たことがあるのか、一気に顔つきが変わる。
「5年振り…… いや、先程振りかな?」
「5年だと!? お前一体何をした!?」
エルクとクラウはいきなりの険悪ムードに状況が飲み込めずただ見つめていることしかできない。
「君には眠っていてもらったよ。私の魔法でね!」
「何だと!?」
「この湿地は君にはまだ早い。死ななかっただけでも感謝して欲しいものだね!」
この2人は5年前にここで出会い。そして、戦うはずだったが、エネの兄がヴァニアに魔法を掛けられ、そのまま5年間もの間眠らされていたのだという。
「てめえ!」
「ちょ! ストップ! ストップです!」
「何すんだ!」
エネの兄がヴァニアに向かって剣を向け今すぐにでも斬りかかろうとしたところをエルクが止める。クラウは空気を読んで、戦わせた方がいいと判断していたが、エルクは違った。
「ヴァニア! 挑発するの止めなよ!」
「ふんっ!」
エルクはエネの兄を抑えながらヴァニアに対しても注意する。注意されたヴァニアは横を向き鼻を鳴らす。
「落ち着いてください!」
「そいつは俺がやるんだ!」
エルクに抑えつけられながら、エネの兄が暴れている。このままではヴァニアが離れるまで暴れ続けると判断したエルクは大胆な行動に出る
「ラネ! 縛っちゃって!」
「え!? いいの?」
エルクはエネの兄を拘束することにしたのだ。ラネの糸はそう簡単には切れない、余裕でエネの兄を抑えつけることに成功する。
「おい、エルク! いいのか?」
「大丈夫! すぐに解くから!」
エネの兄はこの行動でエルク達を敵とみなしても仕方が無いだろう。その心配をするクラウだったが
「聞いて! 今、この湿地にエネちゃんが来てる!」
「--!?」
エルクの一言によって暴れていたエネの兄の動きが止まる。
「エネちゃんはあなたを探しにここへ来てるんです! 今あなたがあのヴァニアと戦って、また5年間も眠らされたらどうしますか? 危険をさらしてまでここに来たエネちゃんの思いを無駄にしないでください!」
「んん!!」
エネの兄は既に先程の暴れるような雰囲気は無く、今は何かを言いたそうにしているためラネの拘束を顔の部分だけ解く。
「本当か?」
エネの兄はそれだけ言うとエルクの目をじっと見つめる。
「本当です。今もあなたの事を探してこの湿地を歩き回っているはずです」
エネの兄はエルクの返答を聞いた後、少し考えるかのように目を閉じる。再度目を開いたときには先程あった怒りが消え、もう一度エルクを見る。
「もう大丈夫だ。この拘束を解いてくれないか?」
「ラネ!」
エネの兄の言葉を聞いたエルクは笑顔で反応を返し、ラネに拘束を解くように命じる。エルクはその場を離れ、ヴァニアの元に近付く。
「何か用か?」
「一つ聞きたい事があるんだけどさ」
エルクはここで、もともとここに来た目的について忘れていなかった。
「ここ最近この湿地でリザードマン捕まえてない?」
「リザードマン…… 知らんな。何があるのか知らんが、少なくとも私ではない。が___」
もともとここ『迷いの湿地』に来ることになった理由のリザードマン失踪の理由を探っている最中であることをエルクは忘れていない。
今までただ歩き回っていただけでは何も手がかりが掴めていなかったが、迷いの湿地に住んでいるというヴァニアなら何かしら知っているのではないかと気になって質問したのだ。
「そっか~」
「私ではないが、心当たりのありそうな奴を私は知っている」
「え!? 誰!?」
「そいつは___」
エルクとヴァニアの話が終わり、クラウとエネの兄が話をしているところにエルクが戻ってくる。
「さっきはすまなかった」
エルクが戻ってきたと同時にエネの兄が頭を下げる
「え!? いやいやいや、気にしないでください! それよりも、早くエネちゃんのところに行きましょ?」
「すまない、ありがとう。エネはこの近くにいるのか?」
「ここからは遠いかな? エルクどう?」
「遠いね~ でも一瞬だし! すぐ行こっか!」
エルクとクラウの話についていけないエネの兄。
「じゃ、また後でねヴァニア! 転移!」
クラウがエネの兄に今から起こることを説明している間に、エルクがヴァニアに手を振り、その後姿が掻き消える。
・・・・・・・・・
エルク達はスラを目印に転移した。先程まで前方にはヴァニアが居たが、今目を開ければそこにはメル達が居た。
「っと、おっす!」
「転移魔法ってのは凄いな」
「俺も初めて体験させてもらったよ」
「「兄さん!」」
メルとエネが同時に声を出す。
エルク達はエネの目的を解決し、次はリザードマンの依頼をなんとかしなければならない
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話の展開等行き当たりばったりで書いていたのですが、今更になって悩み始めたので、更新頻度が悪くなるかもしれません。すいませんorz




