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辺境の村のモンスターテイマー  作者: スルメイカ
第一部・王都学園編
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第44話 迷いの湿地での迷子

前回のあらすじ

迷いの湿地到着→クラウ達とはぐれる→迷いの湿地彷徨う

 エルク達が迷いの湿地を歩き続けて約1時間。一向にウルとの距離が縮まっていない。それはつまり、クラウ達との合流もまだということである。


『ここどこッスか~?』


「知らないよ~ 跳ばされてからずっと歩いてるけど何も無いし! ウルとの距離も縮まらないし! どうなってるんだ~」


 子供らしきモンスターを見つけてからずっと何も起きていない。歩いているはずなのに歩いているように感じない。もはや方向など分からなくなっていた。


「まずいよ~ どうしよう! ライ~!」


『そうですね、ラネさん。糸使ってみませんか?』


「何するの?」


 ライがやろうとしていることは至ってシンプルである。迷う前からやるものだが、迷ってからでも遅くは無いということで、ラネの糸を使い目に入った木に括り付けていく。こうやって自分達が歩いてきた道を印していく。こうすれば、同じ道を進むことは無くなる筈である。


「ライ頭良いね!」


「あんたが頭悪いのよ!」


「なにを!?」


『また始まったッス~』


 迷子になってから何度目かのエルクVSラネの口喧嘩である。両者とも本気という訳ではないため、毎回不完全燃焼で終わっている。口喧嘩をしながら歩き続けているが、結局さっきと何も変わらずそこら中に糸が張り巡らされていくだけであった。


「___覚えてろよ!」


「そっちこそ!」


『やっと終わったッス~』


『エルクさん』


「ふぅ、ん? どうしたのライ?」


『今更なんですけど、エルクさんの転移って使えないんですか?』


「あ」


 ライに言われた瞬間にエルクは口を開いたまま固まってしまった。


『え!? 試してないッスか!?』


 頭が悪いといえばスラの特徴だったが、そのスラからも「え、なんで試してないんスか」みたいな感情が強く、強く伝わってくる。


「やっぱりあんた馬鹿ね!」


 案の定ラネからは罵声が飛んでくる。


「ちょ、ちょっと落ち着こう! まだ使えるって決まったわけじゃないからね!」


『そうですね! この霧は魔法に対して何らかの妨害がありますから、使えなくても問題___』


 ライがスラとラネに説明している間に、エルクはそこら辺に落ちていた木を拾い、転移魔法を発動する。発動できてしまう。手に持っていた木は一瞬にして消え、霧でぎりぎり見える場所に出現する。転移魔法の発動ができてしまった。


「あ」


『兄貴ぃ~』


 スラからは溜め息混じりに名前を呼ばれ


「ばか。今まで歩き回ってた時間返しなさいよ! ばか!」


 ラネからは先程よりも罵声が飛ぶ


『……ですよね』


 提案したライもスラと同じように、何で最初に試さなかったのかと強く、強く訴える感情が伝わってくる。


「え~ 皆さん聞いてください!」


『どうしたッスか!?』


「今からウルの居る場所に転移しま~す」


「その前に言うことあるでしょ!?」


『エルクさん。もうフォローできません!』


「ライ~! はいはい、分かりましたよ。 スラ、ライ。転移魔法のことを忘れていましたすいません!」


 エルクは腰から90度に曲がって平謝りしている。元々そこまで責めていなかったスラとライはそこまで謝られると逆に戸惑ってしまっていた。


「ねぇ~ エルク~?」


「なんだよ?」


「なんだよ? じゃないわ! 私に謝りなさいよ! なんでスラとライには謝って私に謝らないの!? 私が1番苦労してたでしょ! ずっと糸を出し続けたのよ!? 大体いつもあんたは___」


「ラネ」


 ラネがこの迷いの湿地で溜まった鬱憤を一気にエルクにぶつける。それを聞いたエルクは今までラネに見せたことがない真剣な顔をして名前を呼ぶ。


「な、何よ!」


 いきなりエルクが真剣な顔になったため、なぜか緊張してしまっている。これから謝られると分かっていても、ここまで真剣に謝られると返って困るものだ。


「頑張ってくれてありがとうな、そんで。ごめん___」


「ふ、ふん! 分かればいいのよ!」


 エルクが普通に謝って終わると思っていたが、思わぬところで感謝されてしまって、ラネは動揺する。そしてエルクの顔がだんだんと笑ってきて


「ちょ! ごめんちょ! ごめんちょ!」


 ふざけ始める。


「あ、あんたねぇ! このばか!」


「ごめんちょ! ごめっぶはっ!」


 ラネの渾身のボディーブローがエルクに決まる。エルクはうずくまり、スラ達から回復魔法を掛けられている。今まで、喧嘩は何度もしていたが、手が出ることは無かった。今回はいままでの喧嘩で1番むかついたのだろう。スラもライも何も言わずただ回復魔法を掛けるだけであった。


 その後、回復したエルクは多少ふざけてはいたが、ラネに謝っていた。さすがにあの攻撃は効いたということだろう。


「さて、脱線しまくってしまったが、転移するよ!」


「誰の所為よ!」


「はいはい、ごめんごめん! 僕が悪いんです~」


「あんたねぇ~!」


『ラネッち! もう止めるッスよ!』


『エルクさんもですよ!』


 一食触発の危機をスラとライが止めてくれたおかげで、やっと、やっとウルの所へ転移することができる。


「行くよ! 転移!」



 エルクが転移魔法を唱えて一瞬の後、目の前にはウルとクラウ達が居た。


「やっほー!」


 やっとのことで合流することができたが、どうやらクラウが驚いた表情をしている。長い時間離れていたから、驚くのも分かるが、表情を見ると、エルクの後ろに視線が合っているように見える。そして、何か叫ぼうとしている。エルクが振り返る。


「エルク! あぶっ____」


「え?」


 振り返るとそこにいたのは、巨大な木の棒を持った巨体。一つ目のトロールであった。トロールが振り下ろした先にいたのは転移で跳んできたエルク達であった。振り下ろされた棒は地面に叩きつけられ、地面を抉っていた。


「エルク!」


「エ、エルクが……」


「いやああ!」


「皆! ちゃんと見て!」


 トロールの放った一撃は地面を抉っている。地面を抉っているが、そこにエルク達はいない。間一髪でその攻撃を逸らすことに成功したのだった。


「あっぶね! ナイス! スラ!」


『死ぬかと思ったッス!』


 スラの障壁魔法がエルクの頭の上から地面に向かって斜めに張られていた。


『まだ油断するな!』


「ウル! ラネ! 陽動頼むよ! スラ、ライ! ぶっ放せ!」


 目の前に居るトロールは1体だけでなく何体も後方に居るのが目に見えていた。エルクは目の前の1体を鑑定で調べてみたが、ウルが居れば50体くらい余裕だと思ったが、クラウ達を守りつつで手こずるようだ。トロールの攻撃は巨体のおかげで範囲が広く、少し避けただけでは衝撃や風圧によってクラウ達は吹き飛ばされてしまうようだ。それでも、そこら中に体中を斬りつけられたトロールが倒れていた。


「エルク! この辺りは霧が薄い! 少しくらい離れても大丈夫だ! 思いっきりやってくれ!」


「言われなくても、スラとライが魔法撃ちまくってるよ!」


 エルク達が来たことで、クラウ達に余裕が出てきたようだ。エルク達が居なかった間に何があったのか後で聞くことにして、今は目の前のモンスターに集中しなければいけないだろう。


 しかし、数十秒もしないうちにトロールの群れは壊滅し残り数体しか立っていない。今まで守りながら戦っていたウルが攻めに転じることができたことで、今までの鬱憤を晴らすように暴れまわったおかげである。


「エルク! 1体残してくれないか?」


「もしかして、テイムするの?」


「そのつもりだ! 頼む!」


「ん~ 分かった。ウル! ラネ! 1体こっちに誘導して!」


 エルクの声が聞こえたのか先程まで爆発音やトロールの叫び声が聞こえていたが、いきなり鳴り止む。そしてのろのろとエルク達に向かって歩いてくるトロールが1体いた。その瞬間にまた爆発音やトロールの叫び声が聞こえ始める。


「大丈夫?」


「なんとかするさ!」


「手伝うよ! 陽動は任せて!」


「じゃあ私はクラウを守るとしようかね~」


 クラウがテイム魔法を放つまでの間はエルクとソウが時間を繋ぐようだ。今まで、エルクやエルクの従魔が主に戦ってきていたため、ソウがどれほど戦えるのかをエルクは気になっていた。鑑定すればすぐにステータスや能力が分かるのだが、勝手に覗き見るのは失礼になるので鑑定していなかった。


 エルクがトロールの周りを土魔法で固め、1方向しか進めないようにする。その方向にはソウが居て、今か今かとトロールを待っていた。


「ソウ! 大丈夫だよね!?」


「まっかせなさ~い!」


 トロールはソウに向かって歩き出し、そのまま木の棒をソウに向けて振り下ろす。


「単純なの、よっと!」


 ソウは軽々とトロールの一撃を避ける。そのまま木の棒に乗り、駆け上がっていく。


「うぉ! すげぇ!」


 ソウのスピードは速く、既にトロールの肩の位置まで駆け上がっていた。トロールはどうにかして落とそうとして暴れまわっている。クラウの準備が出来た頃、ソウはトロールの頭の上に居た。


「やるよ!」


「ほいほいっと!」


 ソウはトロールの頭から飛び跳ねる。そして、回転しながら、エルクが魔法で作り出した壁の上に着地する。それと同時にクラウのテイム魔法がトロールを覆う。赤の包囲型テイム魔法である。


「いっけぇぇ!」


 クラウの叫びと共にテイム魔法がトロールに吸い込まれ消える。


「どう!?」


「うっし!」


 エルクの問いかけにクラウは親指を立てて応える。それを見たエルクとソウはゆっくりと壁からトロールに飛び乗る。そのまま腕を伝って地面に降りる。


「クラウのテイム魔法段々と強くなってない!?」


「やっぱそうだよな!」


「でも、トロールかぁ~ 女子受け悪いよ?」


「いいんだよ。とりあえず戦える戦力を増やさないとエルクには付いていけないからね!」


「ふ~ん。納得してるならいっか! でも、従魔小屋に入るかな~?」


「あぁ~ 厳しいかもね」


 こうして、クラウの従魔にトロールが追加される。


 トロールの特徴はなんと言ってもその体の大きさになる。全長10メートルを超え、進化によるが最大30メートルにもなるという。前衛に置いておけばその体力と攻撃力である程度は任せていいだろう。


「ソウ! 君って結構すごいんだね!」


「ん~ 褒められるほどじゃないけどね~」


「そんなことないよ! 武術科の人ってもしかしてこんなに強いの?」


「それは違います! ソウちゃんは特別なんです!」


「そうだよね! このレベルが武術科全員っていったら、どんな国を相手にしても負けること無いわよ」


「褒めるの終了ー!」


「え~ せっかく皆から認められたのに!」


「いいの!」


「仲が良いね! 僕にも…… あ、ウル達が戻ってきた!」


 トロールを全て倒しきったウル達がエルクとクラウ達の元に戻ってくる。


「そうだ! クラウ達はこの1、2時間何してたの?」


「あ、そうだ! エルクが消えたと思ったらよ____」


 エルクは自分達と離れていた、クラウ達が何をしていたのかが気になり尋ねていた。

読んでいただきありがとうございます!


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