第40話 ガガト山
前回のあらすじ
爺ちゃん強すぎ→悪魔撤退→学園休み
学園が休日の日。エルク達は王都から少し離れた山に来ていた。
「この山って、授業で言ってた山だよね?」
「そう! よく覚えてるね!」
「え? それって、ガガト山じゃないの?」
「そんな名前だったような~」
「B級危険地帯じゃないですか!?」
「あちゃ~ 何て所に!」
ガガト山はB級危険地帯で冒険者ランクで言うとBランク以上が行くようなところである。ガガト山の危険な理由として1番に挙げられるのが、その環境である。
ガガト山の到る所から毒ガスが噴出しており、何も準備をしていない者はまず登ることが出来ないといわれている。毒ガスの影響によって沼地になっている場所もあり、その場所には毒を好むモンスターが生息しているという。ちなみにディム山脈はS級危険地帯である。
「この場所に来るなら、それなりの準備が必要だって知ってるか?」
「え!? そうなの!?」
「え? もしかして何も準備してないの?」
「それは……」
「何が必要なの?」
「そうだね~ まずは毒ガスを何とかしなくちゃいけないから、ガスマスクかな」
「まじか~ 何も準備してないよ~」
いつも通りエルクは、欲しいモンスターがそこにいるという理由で、事前情報を何も持たずに来てしまっていた。そのため、このガガト山のことについてはちゃんと授業を受けているクラウ達の方が詳しいのであった。
「今日はガガト山は無理だな、引き返そう」
「くっそ~ ガスマスクなんてそんな簡単に手に入るの?」
「それなら、王都の店に売ってると思いますが、需要が低いので生産があまりされていないらしくて、人数分あるかどうか……」
「そうなの!? まいったな~ そうだとすればウル達の分は無さそうだな~」
ガガト山は環境に関してかなり厳しい山であり、この山の頂上に行くことができれば冒険者は1流冒険者として周りから認められる程である。現在のエルク達は何も準備をしてきておらず、ただ研究会メンバーと従魔達を連れてきているだけである。
クラウ達研究会メンバーの他に連れてきているのは、ウル、スラ、ライ、グリフ、ダクト、ラネの6体とクラウ達の従魔である。この中で毒に適正を持つ者は1体もおらず、従魔寮に残してきた従魔達にも毒に対する適正を持っている者はいない。
「手詰まりか~ あぁ~」
『エルク~』
『エルク殿! 少し私に任せて貰えないだろうか?』
「ん? 何するの?」
「ん? あぁ、いつものやつか」
『毒に対する抵抗を持つ草をこの辺りで採取できたので、それを口と鼻に着けていれば安全かと考えまして』
「ほぅ!」
『ちょこっと作ってみたのですが。緊急対策品ガスマスクです!』
エルクと従魔が会話しているとこをを何度か見て見慣れている、クラウ達はエルクの話し相手のダクトを見ていた。そしてダクトが体内から取り出したのは少し繋いだだけの草でできたマスクらしき物である。そのマスクを早速エルクが身に着けて着け心地をクラウ達に伝える。
「クラウ~ これいいよ~」
「エルク、俺たちにはそのスライムの声が聞こえてないんだ。それの説明を頼むよ」
「あ、そうだった。これはね、簡単に言うとガスマスクだよ! どうやらこの辺りには毒に対応する草がいっぱいあるらしくて、ダクトとラネが共同でいつの間にか作ったみたいなんだ!」
「へぇ~ お前の従魔って何でもできるんだな」
「自慢ですから!」
ダクトとラネが共同で作ったガスマスクをクラウ達に分け与える。
「これで、本当に大丈夫か?」
「僕の従魔を信じてよ!」
『信じるのです!! えいっ! とうっ! ていっ!』
なかなか信じようとしないクラウ達を信用させるための行動とは思えないが、ダクトは飛び跳ねる。メルの前に跳び、目の前でぷるぷるした後、ぴょんぴょんと跳ねる。次にエネの前に跳び、ぷるぷるし、跳ねる。ソウに対しても同じ事をする。
「何これ! 可愛い!」
「か、可愛いです!」
「私も欲しくなっちゃうわ~」
言葉が通じないため、何を言っているのか分からないはずのメル達であったが、ダクトの飛び跳ねる姿を見て、気持ちが揺らいでいるようだ。
『さあ! 信じるのです!』
跳びはね終えたダクトはエルクの頭の上に乗っていた。そして、言葉を発するが聞こえているのはエルクのみであり、メル達には何も伝わらない。そう分かったダクトはまたしても、ぷるぷると体を揺らし、ぴょんぴょん跳ねる。エルクの頭の上で。
「兄さん! 信じていいと思うわ!」
「これは、信じるしかないと思います!」
「可愛いは正義よね!」
「「え!?」」
クラウに詰め寄る女性陣。困惑するクラウ。ダクトの行動を聞きながら、見ていたエルク。エルクとクラウはただスライムが飛び跳ねていたようにしか見えず、どこを信用していいのか分からなかった。
エルクに関しては、全て聞いていたので、何か分かるかもとクラウが視線を飛ばしてくるが、顔を横に振り説明できないという。それにより、クラウはもっと困惑するのであった。
「これで、毒ガスはどうにかなったわね! さ! 行きましょ!」
「「は、はい」」
最初にここがガガト山だと知ったときは、足を踏み入れることはしたくないと言っていたような気もするのだが、いったいこの変わりようは何なのだろうか。
「(エルク、そのスライム何かしたんじゃないか?)」
「(してないよ、全部見てたけど、変なことしてなかったよ!)」
クラウはメル達の変化を心配し、直前に動き回っていたダクトが精神魔法か何かをしたんじゃないかとエルクに小声で聞くが、エルクも同様に何をしたのか分かっていないため、謎が深まるばかりであった。
ガガト山を登り始めて、1時間。エルク達は休憩していた。
「本当に毒ガスの影響が無いな」
「やっぱダクトはすごいや!」
皆で休憩しているのだが、男女で分かれて休憩を取っている。男子組は単純に座ってのんびりしている。女子組はというと、ダクトの採取を手伝っていた。
休憩が始まった最初こそは全員でのんびりしていたが、ダクトがウルの背中から飛び降りたことでメルが動き、それに釣られるようにエネとソウもダクトの様子を伺いに行ってしまったのである。
ダクトはこの辺りに生えている草を体内に取り込もうとしただけだが、メル達が適当に草を手に乗っけてダクトに差し出す。ダクトはその手に乗り、草を取り込む。エネもソウも同じ事をする。その度にメル達の顔はニヤついている。ソウに至っては、ダクトに抱きつく始末であった。
『なんだかダクトが人気ッスね!』
「ダクトが人気? あぁ~ そうだね~」
『おいらも抱きつかれたいッス!!』
『ヤキモチですね』
「ヤキモチだね」
「なんだ? ヤキモチ妬いてる奴が居るのか?」
『ぜ、全然そんなことはないッスよ!』
『ヤキモチですね』
「ヤキモチだね~」
「このスライムがヤキモチ妬いてるのか」
ダクトの女性陣からの人気っぷりを妬むスラ。それを見て、いじるエルク達。こんなほのぼのとしているが、現在居る場所はB級危険地帯のガガト山である。主に危険と言われるのは環境に関することが多いのだが、ここに生息するモンスターも危険の対象である。
その中のあるモンスターがエルク達を遠くから見ているのだが、誰も気付かない。ウルは偵察に出て行ってしまい。ラネは木の上に登って糸で遊んでいる。スラもライも緩んでいる。
そのモンスターはエルク達をじっくりと観察していた。エルク達が休憩を終えて、動き出そうとすると、モンスターはどこかへ去っていってしまう。結局エルク達はその存在に気付くことはなかった。
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