第39話 悪魔の狙い
前回のあらすじ
反撃→アラクネ名付け→陽気な笑い声
エルク達は追い込まれていた。3体の悪魔に囲まれ、逃げ場のない従魔小屋。倒しきったと思っていた悪魔は生きており、その悪魔と遜色の無い強さを持つ悪魔が2体も来てしまった。そんな状況の中、従魔小屋に響く、笑い声。
「ほぉ~ほっほ! こんなところに集まっておったのか!」
エルクは声のする方向を向く。聞き覚えのある優しい声だ。
「爺ちゃん!!」
「ほっほっほ、エルク無事かの?」
従魔小屋に現れたのはこの王都グラウン最強と謳われる学園長、エルクのお爺ちゃん、ジン爺であった。
「なんでここに!?」
「王都の到る所で、魔方陣が貼られておっての。見に行ってみたら悪魔が居るもんじゃ。とりあえずぶっ飛ばしてきたんじゃが、魔方陣はあったが悪魔が居ない。そんな場所が2箇所あっての、配置を考えたらこのあたりじゃと思ってのう! ビンゴじゃったわい!」
「何!? 他の奴らがやられたというのか!?」
「ありえないわ、ハッタリよ。このお爺さんあまり強くないもの」
「クックック、この尋常ではない威圧を受けても同じことが言えますか?」
ジン爺の登場によって、悪魔たちに動揺が走る。あるものは仲間を心配し、あるものはジン爺を見下し、あるものはジン爺の強さに触れ。
「爺ちゃん! こいつら危険だよ!」
「お? エルク、心配してくれるのか! でも、大丈夫じゃよ」
「何が大丈夫よ! 今すぐその頭を飛ばし___」
「___ほらの!」
「え?」
ジン爺は一瞬消えたかと思ったがすぐに元の位置にいた。しかし、消える前と明らかに違うことがある。ジン爺の腕に握られているものがあった。
「な、なんで私の腕が!? 何をしたの!?」
ジン爺は一瞬で女悪魔の横に転移し、一瞬の内に元の位置に戻る。この数秒にも満たない時間の中で、ジン爺は女悪魔の腕を肩から切り落として戻ってきていたのだ。そして、エルクに向かって良い笑顔を向ける。
「ほらの! 大丈夫じゃ」
今のジン爺の一連の動きを全て捉えた者は悪魔を含めてここには誰一人として居なかった。
「これは、面白い! こんな人間が居るとは!」
「クソッ! 撤退だ!」
「カァァッッ!!」
悪魔たちの反応は様々で、ギルティは笑い、男悪魔は眉間にしわを寄せ、厳しい顔をする。女悪魔は切られた腕を再生していた。
「爺ちゃんすげぇ!」
『これほどとは……』
「あれは人間なのかしら~?」
ジン爺に会ったことのある従魔達は素直に驚き、会ったことの無い従魔達は一連の行動を見て、困惑したように驚いていた。
「伊達に学園長やっとらんのでな!」
王都グラウン最強の人物は、悪魔を3体前にして驚くどころか、興味深そうに観察している。観察されている悪魔たちは1箇所に集まっていた。
「相手が悪い。退くぞ」
「仕方ありませんね。では皆さんまたどこかで会いましょう!」
「お爺さん? あなたの顔、覚えたわよ」
「逃げられると思っておるのか?」
男女の悪魔はギルティの体に触れ、ギルティは何かを唱え始める。
「爺ちゃん! 転移する気だよ!」
「転移じゃと!」
エルクは、ギルティの持つ能力をジン爺に伝えるが、時既に遅し。ジン爺が悪魔たちの背後に転移した瞬間に、悪魔たちの姿が砂のように消えていった。
「転移能力を持っておったか、迂闊じゃったわい。逃がしてしまうとは」
「ふぅ~ 死ぬかと思った~」
ジン爺は悪魔たちを逃がしてしまったことを悔やんでいるが、エルク達は悪魔を3体前にして生き延びられたことで、安堵している。
「爺ちゃん、あいつらは結局なにをしようとしてたの?」
「そうじゃな、はっきりと分かってはおらんが、予想ならあるぞ」
「なになに?」
「やつらはこの王都に住む人間全てを下級悪魔にしようとしていたのじゃ。全ての人間が下級悪魔になれるわけではなく、なれぬ人間は皆血を噴出して死ぬじゃろうな」
「え…… え!? そんな危険なことがこの王都で起こってたの!?」
「最近どうも物騒だったのでな、何か起こるかと思っていたが、まさか悪魔が動いているとは思ってもいなかったぞ! ほっほっほ!」
「笑い事じゃないでしょ!」
「奴らはまた来るかもしれんの! ま、弱いやつ含めて大勢で来なければ問題は無いがの!」
「嫌だな~」
こうしてエルク達と悪魔の戦いは終わった。最終的にはジン爺の加勢によって終わったようなものだろう。もしジン爺が来ていなければ今頃はどうなっていたか。
ウル達従魔の固有能力を使ってどうにか対抗できるとは思うが、あの悪魔にも固有能力があってもおかしくはない強さだったために、先に手の内を見せるのは得策ではないと踏んで温存していたのだった。
もう既に辺りは暗くなっていた。小屋の修復はウーゴに任せ、エルクは寮に帰っていく。念のためにスラとライを連れて帰っている。あの悪魔たちは既に王都から離れていると思うが、もし隠れていたらと考えるとエルク1人では危険である。念には念をということで、手のひらサイズのスライム2匹を寮に連れて帰ってきた。
寮へ帰ると、クラウが出迎えてくれた。クラウはエルクの帰りが遅いため、迎えに行こうとしていたらしい。優しい奴だが、もし来ていたら危険な目に遭っていただろう。
エルクはクラウに遅くなった理由を説明する。クラウはかなり驚いた表情をしていたが、いつもエルクによって驚かされているため、若干慣れてきているようである。エルクはというと、クラウに説明し終わった後、すぐ横になり眠ってしまった。
翌朝。
エルクが目を覚ますと、いつも通りクラウが起きていて準備をしていた。
「おはよ~」
「おはよ、今日はどうするんだ?」
「今日? いつも通り学園行って~ 終わった後は森へ行ってテイム! いつも通りだね~」
「やっぱりか……」
「ん?」
「今日と明日は学園休みだぞ」
「え!? そうなの!?」
「予定表貰っただろ! そこに書いてあるよ!」
「今日は休みか~ なら行きたい場所があるんだ!」
「危険な場所じゃないだろうな?」
「大丈夫! ウル達も連れて行くから!」
「そういうことじゃなくてな___」
学園が休みの日、研究会の活動はやってもいいし、やらなくてもいいという話なので、エルクの一存でやることになった。クラウがメル達に集まるように連絡をし、エルクが準備をしていた。
「え~ お集まりの皆さん! 本日は集まっていただきありがとうございます!」
「そういうのはいいから、用件を言ってくれ」
クラウの一言でエルクのテンションが下がる。
「今日は、ちょっと遠くの山に向かいます!」
「そこにお目当てのモンスターが居るのか?」
「そういうこと! ということで! しゅっぱ~つ!」
「はぁ、急展開すぎるわよ!」
メルに突っ込まれるが、エルクは気にしない。クラウが呼びに行ったとき、メル達は一緒に行動していた。ただ休日を遊んでいただけであるため、研究会の活動をするということでほいほい付いてきたのである。
エルクが今目指している山に生息するモンスターについてクラウ達はあまり知らなかった。どんなモンスターがいるとか、どんな習性があるのか等のことは全てエルクに任せてしまっているが。エルクはというと、クラウ達と同様で、どんなモンスターが生息しているのか全然知らないのだった。
それなのになぜ山に行くのか、それは授業で習ったあるモンスターに興味があるからだ。今日はそのモンスターをテイムするまで、粘る予定らしい。
ちょっと離れたといっても、エルクの転移で目的の山の目の前まで跳んで来ていた。
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