第36話 影の正体
前回のあらすじ
アラクネ紹介→王都に忍び寄る影
~武魔術学園 従魔専門教室
いつも通りの時間に教室に着いたエルク達は教室内での話しに興味を示していた。
「おいエルク! 聞いたか? 王都内で事件だぞ!」
「あ、聞いたよ。皆話してるもん、嫌でも耳に入るよ」
「不気味よね? 最近いろんなことがありすぎてついていけないわ」
「でも、まだ本当の話なのか皆分かってないみたいですよ?」
エネの言う通り教室内で自信を持って話をしている者は1人も居ない。「~らしい」「~だとか」という確信の無い話ばかりで教室内は盛り上がっている。
「冒険者ギルドに依頼があったって話もあるぞ?」
「実際どうなのかね~ 本当かどうかこの学園なら知ってそうなもんだけどね~」
「こんなときでもエルクっていつも通りよね。もし本当だったら怖くないの?」
「あ! エルクさんが怖いと思うもの知りたいですね!」
「この件に関しては、まだ確証が無いからね。なんとも言えないよ。怖いものはいっぱいあるよ。教えないけど!」
「あ、そういえばエルク」
「ん? 何?」
「あのアラクネに名前付けたのか?」
「あ…… 忘れちった! 今日付けるよ!」
「エルク~ 従魔達困ってるよ、それ。何て呼べばいいか分からないじゃない」
「あはは~」
「あはは、じゃない!」
「ちょっ!」
エルク達の話が盛り上がってきたところで、授業が始まる。だいたい授業が始まるのが話の盛り上がりと被るのはこの世界の不思議の1つである。
授業の始まりに学園側から生徒に対しての注意があった。
「まず授業の始めに皆さんに言わなければならないことがあります。皆さんも噂か何かで聞いているかも知れませんが、昨日この王都内で事件がありました。事件はありました! その犯人は捕まっていません! 由々しき事態です! 生徒の皆さんは絶対に夜1人で出かけないでください。というより夜は外に出ないでください!」
真面目なトキ先生からいきなりの爆弾発言。生徒の全員は本当かどうかも分からないから気軽に話していたものを、それが実際にあったこととなると、いきなり怖くなるというものだ。
「兄さん、エルク。あなた達は夜従魔小屋によく行くわよね? 犯人が捕まるまで行かない方がいいわよ?」
「え~ 名前付けないとだし~ 今日1日だけなら大丈夫でしょ!」
「あなたね~」
「まあまあ。エルクなら多少のことがあっても大丈夫だろ! それに従魔も付いてるしさ!」
「それは、そうだけど……」
「はい! そこ! ちゃんと話を聞いていましたか!?」
「はい!」
メルが何か言いたそうにしているが、トキ先生から注意を受けたことにより、この話は終わった。
最初の授業以外は特に特別なことは何も無く、いつも通り時間が過ぎていく。エルクは自分の能力である「意思疎通」によって従魔達の考えていることや思っていることを盗み見て、いろいろと考えているので真面目に授業を受けているように他人の目には映っている。実際は仲の良さや、信頼関係を確認して楽しんでいるだけである。
「ふぅ~ やっと終わった~ 今日は退屈だったな~」
「いつも退屈そうにしてるじゃんか!」
学園の授業が全て終わり、帰り支度をしていた。
「兄さん! クラウ! 夜は外に出ないように!」
「そうですよ! 事件が本当にあったことなんですから、他人事では済まされませんよ!」
メルとエネが今日何度目か分からない注意をエルク達にしていた。
今日の研究会は無しということをソウに伝えた後、4人で寮に帰っていた。
「また明日ね!」
「危ないことはしないでくださいね~!」
メルとエネが女子寮に帰り、エルクとクラウは男子寮に着く。男子寮に着いてからエルクがどこか落ち着きが無い。
「やっぱり、従魔寮行ってくるよ」
「だと思ったよ、うろうろしてさ」
「いや~ 名前付けないとって思ってたら気になって仕方が無いんだよね」
「もう暗くなってくるし、一緒に行こうか?」
「いや、そんな遅くならないから大丈夫だよ! じゃあ行ってくる!」
「早く帰って来いよ~ってもう居ないし…… 転移って便利だな~」
エルクは転移して従魔寮に跳んだ。外は程よく暗くなっているが、まだ遠くまで見通せる明るさだった。エルクが跳んできたのは従魔寮の入り口から少し離れた場所である。
「おっと、少しずれちゃったか。まあいいや歩くか~」
エルクは従魔小屋に向かって歩き始める。今でも、意思疎通により、従魔の心を読んでいるので、何となく何をしているのかが想像つく。ちょうど今はスラとアラクネ妹が話しをして盛り上がっているところであった。
昨日の今日で仲良くなるのが早すぎるような気もするが、アラクネ妹と仲が良いのはスラとダクトの2匹だけで、他の従魔はまだそうでもない。この2匹は他の従魔とも仲が良く、話やすいタイプなのだろう。スラに関してはなぜか、他の従魔から信頼されている。
そんなこんなで、もう従魔小屋の目の前まで歩いてきたエルクは、驚かせてやろうと思い、小屋の上に登っていた。
~王都内 某所
王都にある建物の中でもかなり大きな部類に入る時計塔。その上に立っている影が2つ。
「皆集まりましたか?」
「後10分もしないうちに配置に着くだろう、お前も準備しておけ」
「ククク、まったくあなたは真面目ですね~」
「お前と一緒にするな。俺は俺のやることをやっているだけだ、お前みたいに面倒事を増やすようなことはしない。さっさと行け」
「手厳しいですね~ じゃあそうさせてもらいますよ。ではまた後ほど」
時計塔の上から影が1つ消える。そして、違う場所から影が飛んでくる。
「あいつ、なんとかできないかしら? 面倒事が増えて嫌になるのよ」
「無理だ。我等組織の中でも奴は相当腕が立つ。言うことを聞くような奴でもない。自由に好き勝手やらせていた方が問題は少ないはずだ」
「なんだか許せないわね~ ボスもなんであいつを自由にさせているのかしら」
「我等のボスも自由にやっているからな。目的を達成できるなら何でもいい、というやつだろう。用は済んだか? ならさっさと配置に着け。そろそろ始めるぞ」
「はいはい。目的のためなら…… ね。じゃあ行くわ、また後で」
影が飛び立ち、時計塔の上には影が1つとなった。時刻は20時。もう既に日は落ちており、空には月が輝いていた。
「ここら辺ですかね、ちょうどいい大きさの建物もありますし」
空を飛んでいた影はかなり広い平原にぽつんと建っている建物の上に飛び降りる。後は予定の時刻が来るのを待つだけとなった。
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エルクが従魔小屋を登りきると、先客が居た。最初は従魔の誰かが、屋根に上っているものだと思って、驚かせるのに失敗したかと考えたが、どうやら違うようだ。
「すいませ~ん」
エルクは月の明かりで逆光となってよく見えない人に小声で話しかける。ここで従魔にばれてしまっては頑張って小屋を登った意味がなくなってしまうためである。
「おっと! あなたは?」
逆光でよく見えないが口元が笑っているように見える。
「え~と、こんな所で何してるんですか?」
「ククク、何。ですか? そうですね、今から王都内を血の海に変えるところだったんですよ!」
「え?」
「まずは…… 1人! ッ!?」
よく意味が分からないことを喋っていた人がエルクに向かって強烈な威圧を発し、跳びかかろうとした瞬間、屋根が一気に崩れ落ちる。エルクと一緒に従魔小屋の中に落ちていく。エルクは転移し、地面に降りる。反対側には飛び掛ってきた人が降りる。
「ククク、やってくれましたね」
反対側に降りたその人物は、目が鋭く、牙があり、頭に2本の角、背中には体よりも大きな黒い翼、尻尾まで生えている。
「な、なんだってこんな所に悪魔が居るんだよ!」
「ククク、見られてしまってはこのまま逃がすわけにもいきませんね」
エルク達の目の前にいたのは、この世界でモンスター以上に恐れられている存在である。悪魔種であった。そして目の前に居るのはただの悪魔種ではなかった。
「さあ! 私を楽しませてください!」
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ギルティ 悪魔 デーモンバロン
レベル:78
HP :135000
MP :127500
攻撃力:97300
守備力:76000
素早さ:78200
魔法 ???
能力 ???
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