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辺境の村のモンスターテイマー  作者: スルメイカ
第一部・王都学園編
35/87

第33話 アラクネ姉妹

前回のあらすじ

王都騎士団→森の異変→森に出発

~王都騎士団 本隊


 森に入ってかなりの時間が経つが、一向にモンスターに遭遇しない。普段からいるモンスターは居るのだが、冒険者が勝てないというほどのモンスターは居ない。


「妙だな…… やけに森が静かだ……」


「さっきから出てくるモンスターは弱いものばかりだが、肝心の奴は何をしているんだ」


「このままどこか遠くに消えて欲しいものだがな」


「本当に居るのかよ……」

「どこまで探せばいいんだ……」

「早く帰りたい」


 王都騎士団の面々は森の中を何時間も探索していて、疲労が溜まっていた。疲労が溜まれば所々で小さな声で愚痴を言いたくなってしまう。幸い森の中のため、王都のお偉いさんには聞かれることも無い。


「そろそろ王都へ帰った方がいいんじゃないか?」


「そうだな…… 士気もかなり下がっているようだ。また明日にした方がよさそうだな」


「それじゃ、全隊に告げるぞ?」


「あぁ、頼む」


「全隊に告ぐ!本日の___」


「うわああ!」

「何だこいつ!?」

「速いぞ! ぐはぁっ!」


 王都騎士団が帰ろうとしたその時本隊を囲んでいた前方の組から悲鳴が上がる。その声を聞き全隊に緊張が走る。


「デイビス! 来たかも知れんぞ! 気を引き締めろよ!」


「分かっている! 全隊に告ぐ! 目標が現れた! 捕捉次第攻撃を開始しろ!」


 そして王都騎士団とモンスターの戦いが始まった。


~王都周辺 森


 王都から出て森に入ったエルク達は未だモンスターに遭遇していない。


「やっぱり王都騎士団がここら辺の奴狩っちゃったんじゃないか?」


「え~ でも、さすがに少なすぎない? まだ何にも遭遇してないよ? その分ダクトの採取が調子いいけど」


「そうね。森の中もやけに静かだし、奇妙ね」


「いつもよりも嫌な雰囲気してますよね」


「王都騎士団が通っていない場所ならいるんじゃない?」


「ウルは何も感じない?」


『この周辺には反応が無いな。ん?』


 エルク達の背後から何か黒い影が飛び出す。ウルの探知に一瞬モンスターの気配を感じ、気配を感じた方向を向く。


「ちょっといいかしら~?」


『エルク!』


「ウッ!?」


 ウルが後ろを向いた瞬間に黒い影はエルク達の前に回りこみ、エルクを捕らえる。ウルがしっかりと気配を捉えていたのなら、回り込まれることも無かっただろうし、エルクも捕まることも無かっただろう。


「ちょっ! ちょっ! んっ!!!」


「暴れないで欲しいわ~ 戦うつもりは無いのよ~」


「エルク!」


「嘘っ! アラクネよ!」


「エルクさん!」


「こりゃ…… やばいかも……」


 ウルより遅れてクラウ達全員が今の状況を把握する。クラウ達の前に居るのはアラクネと呼ばれる、上半身が女性で下半身は蜘蛛のモンスターである。このモンスターは生きた年月によってハイモンスターを凌ぐ強さを持つと言われており、生息数がドラゴン種よりも少ないため本当に存在しているのか研究されるほど珍しいモンスターだ。


「エルクに何をする気だ!」


 クラウ達が戦闘態勢を取る。


「あら~? 戦う気は無いって言ったんだけどな~」


「ガウッ!」


「え?」


 ウルがクラウ達の前に立ちアラクネに背を向け吼える。まるでクラウ達が敵かのような威圧を受けるクラウ達。そして尻餅を着いてしまう。ウルはクラウ達が尻餅を着いたことを確認した後、アラクネに向き直る。


『何のつもりだ?』


「あら~ 話が分かるじゃない! 私はね旅をしてるのよ~」


『で?』


「ちょうど昨日かな? いきなり人間が襲ってきたの! だから殺さない程度に怪我をさせようと思って攻撃したんだけど、思ったよりも人間が弱くて! 大怪我になっちゃって」


「じゃ、じゃあ王都騎士団が探していたのはアラクネだったのか!」


「それからこの森に人間が多くなってきたのよ! いくら追い返してもどんどん来るのよ~ ったもんじゃないわ! だからこっちから出向いて動きを止めて回っていたのよ」


『そのようにか』


 ウルが見ている先には糸に巻かれたエルクである。


「そうよ~ それでもキリが無いの。だから旅ができないのよ~」


ウル『ならば、我が主に頼むと良いかもな』


「誰のこと~? もしかしてこの子? あら?」


 アラクネが指を指し、その方向を見ると糸が地面に垂れていた。


「そうだよ! いきなりやってくれたもんだね!」


「あらあら~ どうやって抜けたのかな~?」


 エルクはアラクネが目線を外した隙に転移して拘束から逃れていた。ウルと話し始めたときには転移していたのだが、ウルとアラクネの話しを聞いていたようだ。そしてまた転移し、クラウ達の元に跳ぶ。


「クラウ! 皆! 大丈夫?」


「エルク、無事か!」


「まあなんとかね~ それよりも! 君! 戦う気が無いって言いながらいきなり攻撃するんじゃないよ!」


「怒られちゃった~ ごめんなさいね~ 見つかってから拘束するよりも、死角から抑えた方が楽なのよ」


『エルクよ、こいつどうする?』


「やだ、私殺されちゃうのかしら?」


「人間は殺してないんだよね?」


「私は殺してないわ~」


「なら見逃してもいいけど、旅するならもっと人間の居ないところ行ってよ!」


「ありがたいわ~ そこのウルフさんにはどう頑張っても勝てる未来が見えないのよね~」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


「ん?」


「あら~? 私を見逃さないつもり?」


「いや、違う。さっき『私は』って言ったよな? もしかして他にもいるのか?」


「ふ~ん。鋭いわね~ 居るわ! 私と旅したいって着いてきたのはいいけど、私は嫌いなのよね~ 我が侭だもの。今は森の奥で寝てると思うわ。ん?いえ、何かと戦っているみたいね~」


「そいつは人間を殺してるんじゃないか?」


「そんなの私は知らないわ! 関係ないもの! 気になるなら見に行ったら?」


「エルク!」


「ん。ウル! 位置は分かる?」


『ああ、今反応が出た。大方そこだろう』


「じゃあ行こう! あ、今まで拘束した人間はどうなってるの?」


「それなら大丈夫よ~ 時間が経てば糸が切れるように細工したもの」


「そっか! なら良かった。じゃあまたね~ これからは人間の住む場所に近づかないようにね~」


 ウルを先頭にエルク達は走り出す。目的地はもう1体のアラクネの場所だ。幸い距離はそこまで離れておらずすぐに目的地付近に到着した。そこには何十人も倒れている王都騎士団が居た。


『捉えたぞ、奴だ』


 ウルの視線の先にアラクネが居る。先程であったアラクネよりもサイズが少し小さいが、王都騎士団相手に傷を負うことも無く暴れまわっている。


「ウル、相手できる?」


『無論だ、殺してしまうかもしれんぞ』


「殺さず捉えてくれると嬉しいかな」


『そうか』


 ウルが今まで走っていたスピードを遥かに超え、猛スピードでアラクネに突っ込んでいく。アラクネを王都騎士団から離れた所に吹き飛ばし、王都騎士団の前にウルが立つ。


 エルク達は倒れている人にダクトが作り出したポーションを渡し、飲ませる。いつの間にこんなに作ったのかというほどダクトがポーションを吐き出してくれる。ポーションを入れる瓶が無いため、臨時でエルクのもつ水袋で対応している。エルクもなぜか水袋を何個も持っていたので、すぐに倒れている騎士全員にポーションがいきわたる。


 王都騎士団はアラクネと戦うウルの姿を見て、神獣の類か何かと勘違いしていた。それほど切羽詰った状況になっていたのだ。騎士団団長のデイビスと隊長のガウンの2人もアラクネに傷を付けられている。


「大丈夫ですかぁーー!」


 エルクが戦っている騎士団の元にたどり着く。クラウ達は騎士団に着いている。


「なぜ子供がここに居る!? ここは危険だ!」


「君は…… あの村の……」


「ガウン知っているのか!?」


「え~と、あ! 村に来た……え~と」


「ガウンだ。それよりもまずはアラクネをどうにかしないといけない! ここは危険だから、下がっていてくれないか?」


「多分、大丈夫ですよ!」


「確かに大丈夫そうだな、あのウルフが敵にならなければいいが」


「今戦っているウルフは僕の従魔ですから!」


「まさか…… あの時のウルフだというのか!? それにしては姿も色も変わっているようだが」


「いろいろあったんです! でも正真正銘僕の従魔です!」


 ガウンがデイビスにエルクのことを簡単に説明し、アラクネに立ち向かおうと戦っている方向を見たとき、何かが飛んできた。


『エルク、これでいいか?』


 飛んできたのはアラクネであった。飛ばした犯人はもちろんウルである。ウルはエルクの忠告通り、殺さず生け捕りにして捕らえていた。


「さて、どうしようか!」


「アラクネを捕らえたというのか!? ありえない…… 君は一体何者なんだ……?」


「まさかこれほどとは……」


 エルクが、アラクネの対処に迷っているとクラウが近づいてきた。


「うわっ! アラクネ捕らえたのか!? どうするんだ?」


「どうしようか迷ってるんだよね」


「やっと追いついた~。 ってもう終わってるの!?」


「もうエルクさんが恐ろしいです!」


「っはは! そうね~!」


「君達は一体……?」


「あ、僕達は王都武魔術学園の生徒です」


「最近の学園はどうなってるんだ……」


「あ、勘違いしてるかもですけど、おかしいのはエルクだけですので」


「エルクさんだけです!」


「そうそう! 他は普通よ~」


「ちょ、ちょっと~」


 エルク達がいつもの雰囲気で会話し、この場が少し和む。そしてガウンとデイビスがアラクネに近づく。


「では、このアラクネに止めを」


「ああ、頼む」


 ガウンが剣を振り上げ、アラクネの首目掛けて振り下ろす。


「なにっ!」


 剣は弾かれ反動によって手から離れてしまう。剣を弾いたのは、ウルでもなく、抑えられているアラクネでもない。


「もう1体だと!?」


「ガウン!」


 剣を弾いたのはエルクを襲ったアラクネであった。


「あらあら~ やっぱり負けちゃったのね~」


「お姉ちゃん! 助けに来てくれたの!?」


 どうやらこのアラクネは姉妹のようである。


「どういうつもり?」


 エルクから威圧が放たれる。その影響でクラウ達に緊張が走る。


「そうね~ 気が変わったの」


 アラクネはエルクの威圧をなんとも思っていないかのようである。


『どう気が変わったのだ』


 ウルからも威圧が放たれる。エルクの威圧も相当だが、ウルの威圧はアラクネの動きを数秒止めるほどに強力だった。


「あなた達と一緒に行動した方が楽しそうって思ったのよ」


「お姉ちゃん!?」


「従魔になるって言いたいの?」


「そうよ~」


「本当に!? よし! じゃあやるよ!」


「何をするつもりだ?」


「ガウン! ここは任せるのだ……」


 エルクの手からいつも通り白色のビームが放たれる。当たったところから光がアラクネの体を包み込んでいく。そして光が全て消えた。


「うっ!」


「成功!」


「まさかアラクネをテイムするなんてな」


「やっぱりエルクはすご___」


「お姉ちゃんを返せーーー!」


 ウルに抑えつけられていたアラクネが突然跳び上がる。これには抑えつけていたウルも驚いている。跳び上がったアラクネはなぜか傷が癒えており、体格も大きくなっていた。そのアラクネがエルク目掛けて突撃する。

読んでいただきありがとうございます!

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