闇の彼方から(6)
一発、二発。大怪物の膝の皿に当たって弾が爆発する。ーーしかし、効いてはいないようだ。
「効かん」
言葉を放つ大怪物だが、そこへ壁を蹴って飛翔したミクモが突進。レイピアで突こうとするがーー外れる。
「遅い!」
怪物は身を翻して避け、尾でミクモを弾いた。ダメージは、微量だ。
「ーーっく!」
ミクモは受身を取り、ガイアブレードに視線を送る。
「ピニオンバルカァァン!」
同時にガイアブレードの肩口が開き、緑色の光弾がとんでいく。
波状攻撃が当たる。だが、それもすぐに掌を広げるだけで止められた。
「これが、怪物の脅威かッ」
僕は驚きつつも、さらに効かないと分かって、大怪物に発砲する。あぁ、相手の戦力を読み違えていた。これでは、後ろの100人を含めて全滅する!
「ーーミクモ、貴殿の上司に撤退を勧める」
ガイアブレードが、唐突に言い出す。
「ーー同感だ、がーー」
大怪物は、こちらを逃がしてくれそうにない。
「フヌン!」
「ぐわぁぁ!」
またもう一人の兵士を圧倒的な風圧で葬り、さらにこちらを向いてくる。
「ハイ・エンドタイプだ。性能が段違いと見える」
「ーーガイアブレード、勝機はあるか?」
「ーーない」
彼が、告げた。
「いずれにしろ、殺す。そこの2人には地獄を味合わせてやろうとおもうがーー」
大怪物が、声をあげる。
「まずは一番遠くにいる貴様から始末してやろう!」
大怪物が、僕を目掛けて迫ってくる。
「させるものか!」
「邪魔だ、小虫が!」
ミクモが立ちふさがるが、跳ね飛ばされる。
僕の前で大怪物が、拳を構える。
「レティウスの犬め。顔一つ残らず挽肉にしてやるーー」
大怪物が声色を変えた直後、
【エクステンション!】
【ブレイブストーム!】
風の弾丸が大怪物に刺さり、白銀の塊が、そして大怪物の顔面を強打した。
「ムゥ……ッ」
大怪物は吹き飛びこそしないものの、怯む。 その隙を見てガイアブレードが、僕の身を抱えて距離をとる。
「忌み子、カッ!」
大怪物が銀の戦士を見て叫ぶ。
「アトス!」
それと同時に、ミクモが叫んだ。
「ーー遅くなった、すまない。ミラカナ、手を貸そう!」
銀の塊から聞こえる声は、アトスそのものだった。
「ーー聞いてたけど。ーーこっちじゃ、アトスってよばれてるんだね。それにしてもこっちの世界にくれば向こうより安全と聞いたけど……話が結構違うみたいじゃない」
僕より一つくらい上だろうか。オレンジ髪の女性が、僕の近くに降り立って言った。アトスと一緒に来たのか。さっきの魔法も、この子か。
「アトスの仲間か」
ガイアブレードが告ぐ。
「ーーそうなるね」
女性は頷いた。
「ーーアトス、やつには勝てん」
ミクモがアトスに、話し掛ける。
「今までの俺ならば無理だったろう。ガイアブレードでさえもあそこまでやられて、お前もそこまで被害を食らってるのだから」
「ーーならば、撤退を」
「ーーだから、こいつをまずは試させて欲しい……」
アトスは首を横に振ると、右腕を振り上げた。
「何をする気だ」
「……見ているがいい」
【アサルト・モードッ!】
アトスの身体に付いた鎧が赤く激しく光って、変質していく。
鎧各部に鋭角の装飾が付き、甲殻を思わせるフォルムへと変わる。ツインアイが浮き出て、戦闘的になった。
「ーー魔力測定数値上昇……! この短期間で前より戦闘力が上がっているだと? バカな、奴は何をした!? お前は知っているのか?」
ガイアブレードが、アトスを見て声を裏返させ、女性を見る。
「ーー内緒、よ」
女性は目線を逸らし、そのままアトスを見た。
「うぉあ!」
赤く光るアトスーー士亜が、大怪物の羽根を掴み、引き千切る。
「グギィィィ!?」
大怪物はあまりの怪力に、驚きと痛みの蛮声をあげた。
「忌み子ォ!」
兵士2人を葬りガイアブレードの盾にヒビを入れたあの拳がそのまま迫るが、その腕をアトスは難なく掴み、そして折る。
「ブガァァ!」
「どうやら通用するみたいだな。この形態ならば。ーー逃げるか、貴様?」
アトスは大怪物に向けて、煽る。
「貴様は殺ス。何があっても殺す。絶対に殺す! 首を折って殺す、足をもいで殺す! 二度ひき殺す!」
大怪物は砂を片足で巻き上げると、慌てて飛び上がって去っていく。
「ーーアトス! 奴が逃げるぞ」
ミクモが叫ぶが、
「時間切れだ、無理だ」
その言葉が終わらないうちにアトスの鎧の色は銀に戻り、それから変化が溶けて人間の姿に戻った。ただし、相当な発汗を伴って。
「ーーアトス、借りを作ったな」
ガイアブレードが、駆け寄る。
「そう思うのなら、いずれどこかで返してくれよ」
アトスは余裕をみせつつも、僕の方を見た。
「時間を掛けてしまった、少しーー山篭りをしていた。元々あった機能を解放出来るようになってご覧の通りの姿になれるようになったが、調子がよくても40秒しか持たない」
「我々の戦線に復帰、してくれるか」
「ーーいいけれどこいつの面倒も、頼むよ。恩人だ」
顎で僕の隣にいる女性をしゃくる。
「ーーソレイユ、です」
女性がお辞儀をする。
「ソレイユさんですか。分かりました」
僕は事情はあまり飲み込めないものの、とりあえずイーゴンたちとの合流を提案する。
「イーゴンも来ているのか?」
アトスが嬉しそうにしつつガイアブレードやミクモに目を送る。
「あぁ、敵中だからそう積もる話はできないがーーまぁ来てくれた事には礼を言おう」
ミクモはつんとした態度をとりつつも、2人を迎え入れた。
エヴァネッセンス・ストライカー組 合流完了。
アサルトモードを使えるようになった理由のヒントは、ソレイユの言葉です。




