闇の彼方から(5)
【第3ブロック、7割制圧完了。後方はどうだ】
先行するガイアブレードから渡された通信機の声が届いた。
「こちらはミラカナ。雑魚掃除に手間取っている、どうぞ」
第2ブロックでミクモやレイブレッドと共にガイアブレードが倒し損ねた雑兵を倒しつつ進む僕達だが、その数の多さに時間を食われていた。
別にガイアブレードが打ち漏らしている訳ではなく、手足を吹き飛ばしたくらいじゃ倒せず完全に潰さなければ再生する奴等がいるのだ。
「でぇぁ!」
レイピアで一体の怪物の脳天を串刺しにしたミクモは、さらに数体の首を蹴り折る。
「血が踊っているな、ミクモ殿は」
イーゴンが苦笑しつつ、昆虫人を持ち前の爪で引き裂く。
「血を見るのはいつになっても慣れないが、やっていくしかないですわい……ってね」
レイブレッドも持ち前の鉄の棒で一体を殴り倒すと、僕の前にいた敵に飛び蹴りを食らわす。
「ミラカナさん、余所見は危ないですよ!」
「分かっている!」
僕も銃で壁に張り付いている敵を落としながら、言い返した。
ーーしかし、ミクモやイーゴンはともかく、レイブレッドもここまで動けるだなんて。
内心、自分が一番身体能力で大幅に劣るだなんて自覚していなかっただけにとてもきついものがある。
走るだけでも、息が上がってくる。
これでは、足手まといではないのかーー。
【ーー第3ブロックーー9割ーーもうすぐで、ぐわっ!】
ガイアブレードの通信から、そこで異常が聞こえた。
「ーーミラカナ様、いや、ミラカナ室長!」
僕の方を見てくる、ミクモ。決断を迫られたか。
「……先に、異常があったようだな」
レイブレッドの怪訝そうな顔。すぐに横のイーゴンと顔を見合わせる。
「ーー分断は止むを得ない、イーゴン、此処は俺たちだけでとめられるか?」
「……やってみせよう! 幾ら増えても物の数ではない!」
イーゴンはまだ余裕そうな態度で、自慢の胸筋を見せ付ける。
「指示、頼みますよ!」
レイブレッドが、ミラカナを見て歯を見せて笑ったので、
「ーーでは、5人のうち3人はレイブレッドに、2人は僕とミクモと共に突入を!」
「はい!」「了解!」
僕はそう指示を下し、ミクモと従者2人を従え、共に第3ブロックへと突っ込んだ。
第3ブロックにつくと、既に大量の昆虫怪人の死骸が散らばっており、ガイアブレードの強さが伺えるーーが、その中央では、ガイアブレードが息苦しそうに片膝をついていた。
彼がアトスとの戦いで使っていた盾には大きなヒビが入っており、相当の衝撃に耐えた事を伺わせる。
「ガイアブレード、ダメージは」
ミクモが近寄ろうとするが、上を唐突に指差すガイアブレード。
上空からはばさりばさりと、羽音がする。
「恐らくは奴が、指令だろう」
見れば、5人分程上に腕組みをしたまま滞空する怪物。その身体は、今まで相手をしていた雑魚の数倍の体躯を持っていた。
「フン!」
そしてーー瞬時に怪物が拳を振った。
あまりの速さに僕もミクモも、ガイアブレードすらも反応できない。
「ぐわぁぁっ!」
怪物の拳の風圧は、僕の横にいた一人の兵士にあたり、吹き飛ばしていった。
「な……! あの距離から風圧だけで!?」
ミクモが目を疑う。
「アンドリアァァ!」
横の兵士が叫びをあげて、駆け寄る。
「ーー駄目です、息をしていません」
そして、その声。
「ーー室長、も、物陰に!」
その言葉を聞いた瞬間ミクモが平静を失い、叫ぶ。
「いやーー無駄だ。物陰に隠れたくらいでは、あの攻撃を防げないよ。まして鎧を着た兵士であれだ。僕は多分、一撃で即死するだろう」
僕は銃を抜き、怪物に向ける。
「ガイアブレード、立てるかぁ!」
そして、一喝。
「……無論だ!」
ガイアブレードが立ち上がったのを見て、
「これより戦を始める。ミクモ、ガイアブレード! やるぞ!」
僕は弾装を炸裂弾に変えると、先制で狙いを付けて発砲した。




