闇の彼方から
この章はノクターンのエヴァネッセンス・ストライカーから続いています。
アトスが姿を消してから、一週間が経った。
ミクモ=ヒチリキはアトスが消えた事によりやや焦りを取り戻したものの、俄然激務に追われていた。
だが心なしか、こちらに対しての依頼心が強くなった、とも感じる。
そしてこの僕、ミラカナもこうして第二位のアイラ・ステイシアの依頼により部屋の中で殺人事件の捜査に、身を裂いている。
加えて毎日のように山積みにされる書類の処理、保安区内の破損した建造物の修繕許可証の発行。いくらやっても仕事が増えていくのが厄介だ。少しは休憩と、そこそこの外食くらいを楽しみたいところだが……代わりがいないのが、きつい。13人衆といっても、こうも急がしいと跡継ぎとしての役目を放棄もしたくなるな。
もっとも、こんな事をミクモの前で言ったら大声で叱られるだろうけれど。
とりあえずハンコを打ち終わって……
その時、ノックがされる。ーーガチャリと、事務室の部屋の扉が開く。
「私だ。我が主、レイブレッドの言伝がある。」
竜人のイーゴンが来た。彼は此処暫くは、うちの常連になりつつある。
「こんにちは。お茶を出すよ」
「心遣い痛み入るーーミクモ=ヒチリキ殿はいらっしゃるか」
「……彼に、かい?」
「えぇ。昨今出ている刃物の昆虫人間ーーそれが廃屋に群生しているとの話が出たため、小規模なそれの討伐任務です。私とガイアブレード、それにミクモ殿の力をとです」
「ーーアトスが、戻って来れないからか」
溜息を吐く。一体彼は、何をしているのか。
「彼の消息は探していますがーーどうにもなりません。なので、力を貸してもらいたい」
「分かった、ミクモをそちらに当てよう。彼ならやってくれるはずだ。しかし、ガイアブレードも?」
「彼は性格こそ難があるが、強い。それは自分には分かります」
イーゴンが頷く。
「……分かった。君が言うなら信用しよう、か」
僕は頷くと、自分も向かうという予定を作り、判子を押した。
即座に予定が作られ、二日後に決行日となった。
帰ってきたミクモに事情を説明すると、にこやかに笑う。
「分かりました、不肖このミクモ、特命を受けましょう」
まるでこの命令を、待っていたかのようだ。
「ーーミクモ、僕の依頼に従ってくれて助かった」
「ーーまさか私が任務を断るとでも? 私はミラカナ様の部下ですから。いかなる命令も迅速に執行してみせます。むしろこの命を与えてくれて、うれしいとすら感じるのです」
帰ってきたミクモはこちらの決定に頷いてくれて、すぐに計画が承認される。
物資の手配も済み、ミラカナは早速先行をすると決め、ミクモと共に馬車に飛び乗った。




