エピソード4「復讐者の魂」(3)
ーーレティウス国の社会制度は、強固な身分制により成り立っている。
それ故に、少なからず人々の精神構造には血統というものが骨の髄まで刷り込まれている。
生まれ持った環境により身に付いた価値観と言うものは、そう簡単には変わりやしないだろう。
アトスがこの国に来て思った事は、まずそれであった。
身分の違いを例えれば、ミラカナやアイラといった貴族階級、そしてミクモや兵所長オベレノといった国家に飼われている役人。それに自分を含む外来の人間。それ以外の、本当の国民という身分のもの、それらが値するだろう。
数日間此処で過ごした上で思うに、この国の若者はノルドシュトルムに対する知識は老人が言い伝え程度に言っている話程度の意識であり、またミラカナ達の事をよくは思ってはいないようだ。
確かに傍から見れば次期13人衆は親の七光りであり、任務を持つ人間とは認識されていない。
ただ、国民は権力側の戦力に慄いていてミクモ達戦力の存在を見て力の置き場所がないからこそ、その不満で反乱を起こさないといったところか。
まぁどちらにしろ、外来人の自分では責任も取れない以上、どうこうと呟く事すら出来ないのだが。
全ての世界は、人間の生活あってこそのものだ。不平不満があろうと、生きていられるに越した事はない。
『……自らの都合だけで動く事は、不幸しか産みやしない。だが、そうして不幸を生みながら生きていくものが、人間なのだろう』
あれから一通りの捜査を終え、無理やりミクモを説得して事務所に寝かせた後にアトスは茶菓子を口に運ぶ。色々と疲れはしたが、休みさえすれば奴も少しは正気になるだろう。楽観視は出来ないが、ゆっくりと立ち上がって事務室から出ようとする。
「……何処へ行くんだ? アトス」
「散歩だ。ミラカナ、昼間立替えた分の清算は……明日には出来るか?」
「急ぎか?」
「そうではないが、なるべく早めだと助かる」
「……経理にいっておこう」
「分かった」
アトスは頷き、部屋を出た。




