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エピソード4「復讐者の魂」(2)

『……アトス……アトス……』

 場に不似合いな、鈍い声。これは、自分にしか聞こえないものだ。……何の用だ?

 そう頭の中で考えつつも、交信の為に静かな場所を目で探す。

 (物陰は……トイレくらいしかないか)

「……あぁミクモ、俺はトイレにいってくる。会計は俺がするからいい」

「そうか? 早くするがいい、これから行くところもある」

「分かった分かった。……このドリンクはまだ下げないで下さい」

 流行るミクモを押さえつつもウェイトレスを避けてトイレに入っていき、内なる声に耳を傾けるアトス。

「……何だ、手短に頼む」

 アトスは少し不機嫌げな対応をしながら、声に問いかける。

 すると、頭の奥から思念が響いてきた。

『気付かないか?』

「……何をだ?」

 主語がないと、中々に分かりにくい。

『市の郊外で、妙な力を検知したぞ』

 声はそう意見してくるが、俄かには信じがたい。

「気のせいだろう。俺は意識も飛ばさず気は張ってるつもりだ」

 事実、アトスはミクモと話しながらも意識をはっきりさせていた。

 それだというのに、自身では殺気も魔力も感知が出来なかった。

「それに、仮に力を検知したとしても……今の状況でミクモを放置するのは得策ではない」

 アトスはそう自分に言い聞かせるように独り言をいいつつ、交信を終えようとする。

『おい、待て……』

「あまり人前で話し掛けてくれるなよ、不自然になる。暫くお前に対してのリアクションを人前では辞めるぞ」

『それはそうではあるが』

「ミラカナからの頼みもある、独自の判断で動くぞ」

 意識を切替え、フロアに戻りミクモの方を見る。

……まだ待ってくれているようだ。


 ミクモに向かい歩きだした時、アトスから数メートル離れたところで突然店の中を行き来していたウェイトレスが転んだ。

「きゃっ!」


(……足掛けのいたずらか、何処の国も一緒だな)

アトスは表情を歪める。

「おいおい、どうしてくれるんだぁ? この服も高ぇし、注文したパフェだって6000もするよなぁ!?」

 見れば巨体の男が、年端もいかないヒジリと名札の付いた女店員に絡んでいる。

 こんな時間から、酔っ払いか。

人に本物の迷惑を掛ける人間と言うのは、厄介なのだが。


「申し訳ありません!」

「申し訳無いで済むと思ってるのかぁ、おい!?」


(……学生時代を思い出すな。殴り殺そうと思っていたほど憎い奴も、いたものだった。……理不尽な事だ)

 アトスは胸糞悪くなり自然と二人に近寄ろうとするが、その前に、巨体の男の身体が吹っ飛ぶのを見て立ち止まる。

「……ぶげっ!?」


「貴様、子供相手に何をやっている!」

 ミクモだ。割って入りやがった。

 手加減なしの拳を受け、男は他の客こそ避けたものの壁際まで吹き飛んだ。

「なにしやがる! 俺は被害者だぞ!?」

「貴様が足を掛けたところなど、見えてないとでも思ったか……この俺の目を欺くなど無駄だ」

「なんの証拠が!」

「国家の犬の目を疑うか? 俺はミクモ=ヒチリキだ!」

ミクモは言いながら巨体の男に近寄ると、首根っこを掴み、出口に持っていき叩き出す。

「馬鹿野郎、覚えてろ!」

「国家に弓を引くというのなら、いつでも相手してやる。今は臣民だから即殺は勘弁してやるがな。だが、やるというのならば、この地上に貴様の骨一本遺さん……!」

 うんざりした顔のミクモは捨て台詞を吐き、店員を助け起こす。

「邪魔をして悪かった。迷惑料も含めてそこのツレが払う」

 そして、徐に店から出て行こうとする。それなりに騒ぎを起こした自覚はあるらしい。

「……余計な事を。俺ならもっと丸く収める事が出来る自信はあるが」

 アトスは財布の中身を見て舌打ちをしながら、精算台に並んだ。

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