エピソード3「デュアル・ゴア」(8)
「さて、此処からは人心掌握の話ではなく、その先の話をしましょう」
暫くしてレイブレッドが書類を何処からともなく、差し出してくる。
「一体なんだ、これは?」
「詰め所に訪れた人間の履歴の名簿です。これを使う事で、ミクモくんよりは先に真実にたどり着けると思いますよ」
「……何故、これを」
「ミクモ=ヒチリキは殺された人間の交友関係から洗っています。衛兵オベレノは、レティウスとの敵対組織を怪しんでいます。……でも、僕はこれを衛兵への怨恨にしては規模が小さい物だと考えているのです」
「どういう事だ」
「僕が仮にあの事件の犯人で……レティウスに害するつもりなら、まず13人衆から先に狙います。でも、それをせずに衛兵を狙うなんて事をしたというのは、つまり衛兵に恨みを持っているという事となります」
「……そうか」
「少なくとも後先考えずにやった可能性が高い、そう僕は思います」
「何か理由があるのか?」
「考えても見てくださいよ。国の議員を殺したって事件はありましたけど、こういうと聞こえは悪いですが、衛兵なんて正直幾らでも補充が利くものじゃないですか。そして衛兵を皆殺しにした訳ではなく、門番のようなところだけ吹き飛ばして帰っていったという事……これにも何か意味があると思います。ですから、詰め所に訪れた人間を探るという事に意義を感じるのですよ。これを探るという事は……正直、大きいと思いますよ?」
「レイブレッド、君自身がそれについて既に調べたという事は無いのか?」
「実を言うと僕自身はイーゴンとの話の方にリソースを割いていまして。……今、別世界の話を書き留めているのですよ。ですから、この事件にはほぼノータッチでありまして。今僕が知っている情報と言えばミクモさんの動きで拾える情報が無かったという事を知った事と、今手に入れた情報が精々です」
嘘を言っているような素振りはない。
「手柄を譲るという事か?」
「いえ? 実を言うとイーゴンにとっての考えがありまして、ね」
「何?」
「これはまた別の話になりますが、アトスという存在に興味を持っているようなんです、イーゴンは」
ーーこの態度は、何なんだ?
「あいつはただの召還を受けた人間だぞ。戦闘の経験こそ積んでいるが」
「それもまた、妙だという訳ですよ。そもそも僕達が大広間でやったこの度の召還術は、強大な力を潜在的に秘めている者を呼び出す儀式でした。だというのに、このレティウス最高峰の力を持っているといわれるミクモ=ヒチリキとほぼ同格かそれ以上の能力を持つという人間がいるって事に対して、疑問は持たれなかったので?」
「一体どういう事だ」
「訳有りであるから、こちらに呼ばれたのかもしれないと……そういう訳ですよ」
「レイブレッド。君はアトスを……奴を疑っているというのか?」
「そうとは言いませんよ。でも、このレティウスを守っていく為には何かを疑わずしていくのは不可能だと思われるのです。別に変な意味を持たせている訳じゃないんですがね」
レイブレッドはそう告げて、立ち上がる。
「無論それはイーゴンに対しても当てはまります。彼ら二人を、覗きにいきませんか?」
振り向いてきたレイブレッドには、何か深い考えがあるかのような表情だった。




