エピソード3「デュアル・ゴア」(7)
「ああそういえばイーゴン、訓練場があるから、一度アトスさんと手合わせをしてはどうかな?」
と、そこで突然、レイブレッドが提案をしてくる。
「悪くは無いな。彼さえ良ければ私には異存が無いが……?」
イーゴンが告げる。
「その勝負は乗りたいところだが。……許可をもらえるか?」
アトスもその気だったのか、もう一度こちらを見て立ち上がる。
成程、許可が欲しいのか。
「分かったよ」
僕がそう言うと、
「お互いの研鑽の為、技術を磨こうぞ」
「あぁ、よろしく頼む」
二人は部屋を、出て行った。
「ーーで、人払いをしたところでだ。本当の事を言えばどうなのだ?」
僕はレイブレッドに視線を向ける。
「気付かれていましたか」
レイブレッドは僕を見て、気が晴れたかのような目をした。
「訳があるから、こういう事をしたのだろう」
「ですね」
「では、何があるというのだ?」
そう尋ねると、
「ミクモ=ヒチリキ。彼は疲弊をしています」
レイブレッドが言葉を続けてきた。
「……例の病気か」
「戦闘力を引き出す為の措置の結果ですからね。先代達による酷使の結果です」
「デッド=ジンと戦うためにレティウス国近衛近接武闘術を幼少から骨の髄まで叩き込むという事。それは人間のレベルを越えた鍛錬であると共に、精神性を一つの武器にするレティウス国近接武闘術自体や、国に対して過度に依存させる……それが一つの人間性の放棄とも言える。そういいたいのだろう、レイブレッド」
「はい。飼いならされた、という事ですからね」
「野生を失った……人間に飼われた動物という存在を、野生に還す事はほぼ不可能とも言える。それは人間に関しても当てはまる、か……」
「そこについては、分かりませんがね。でも、僕にはミクモの気持ちも分かりますよ。ミクモ=ヒチリキという存在は有事に備えて国のために役立とうと、全てを削って生きてきた……ところが、アトスやイーゴンといった強力な能力を持つ転移者が現れた事で、彼が全てを賭けてきた物、全てを賭けてきたアイデンティティが揺るがされようとしている訳ですし」
「……っ」
「僕だって意地悪をしたい訳じゃないんです。僕達十三人衆だって使命があるし、僕の場合は少なくとも尊敬する父の役に立つ為に戦果だってあげたいとは思っているのですし」
「……成程」
「だからこそ、ミラカナ先輩は今はミクモさんを気にかけてあげるべきだと思いますよ、上司として、彼を懐刀として使う為ならば……」
「懐刀、か……」
「僕にはあれほどの忠誠心を持つ部下は居ませんからね。……正直、ちょっと羨ましかったりもしますよ?」
「……分かった、考えておこう」
笑えるような話でもない。僕は頷き、心の中に留め置く事にする。確かに言われる通りでもあった……。




