エピソード3「デュアル・ゴア」(5)
「ミクモの忠誠心は、植えつけられたものだと聞いた事がありますね」
オフィスについてもミクモが居なかったので、アトスを事務所の屋上に連れて行き、事情を軽く説明する。
「どういう事だ」
アトスが訝しげな顔をした。
「レティウスでは前に話した前内乱の折、反乱軍側によってデッド・ジンという生物が使われました。それはノルドシュトルムの件とは関係ありませんが……恐ろしいものでした」
「何だ、その……デッド・ジンというのは」
アトスは自らの髪に手をやり、指先でくるくるとつまみながらも尋ねてくる。
「詳細は知りません。ただ、それは人工物であり人間を越えた人間といった物らしいです」
僕がそう言うと、
「人間を越えた人間?」
とアトスが眉根に皺を寄せてきた。
「本当にあるのですよ。話の上では信じられない強さを持ち、50人力に匹敵する戦果を上げたと言われています。そして、ミクモは士族の生まれですが、彼と彼の同期であったものは人間の身にあってそのデッド・ジンと渡り合うべく非常時に備えて鍛えられた本物の人間兵器なのです」
「人間兵器ね……ほう、まるで……俺が知っている怪物のようだ」
アトスは心当たりのあるかのような顔をして、そう言ってきた。
「怪物とは?」
僕が首を傾げると
「青い髪をした子供さ……人間の心を持たない本物の怪物だ。俺などよりも、遥かに強い奴だ。この前の刃物の昆虫人間なんて目じゃない」
アトスは悪夢を見たような表情で、目で語ってくる。
「では、アトスさんはその怪物と戦った事があるので?」
「あぁ……手も足も出なかった。だから君のいうデッド・ジンとかいうのの正体がノルドシュトルムでないのは幸いだが、今後の戦闘で出てきたとしても、俺とミクモではその子供に勝つことは難しい。というよりも無理だ」
残念な事にな、と付け加えてアトスはわざとこちらを見ずに細く息を吐く。
「そうなのですか……」
「ところで、俺以外の13人衆に召還されたものと、そろそろ会わせて貰えないかね?」
アトスはそう告げ、敵への対策を練りたいからなと付け加えてきた。




