エピソード3「デュアル・ゴア」(4)
「……どう思う、アトス」
「何がだ?」
詰め所を訪れた帰り道、僕の後ろを付いてきながら二人が会話している。
「復讐という行為について、だ」
「部下の仇を取ろうとしてくれている……いい男じゃないか。首を拾ってくれる上司など、まさに理想だ」
アトスは不思議な事など何もない、上に立つものとしては理想だと付け加えてから、そう言った。
「そうか……」
ミクモが言葉を濁したのを見て、
「何だ、気に入らんのか」
と食い付くアトス。
「いや……違う、そういう訳ではない」
首を振るミクモは、ぽつりぽつりと語り始める。
「何だ、はっきりしない奴だな」
「俺としては……もっと兵士はレティウスに忠誠を誓うべきだと感じるのだ」
「……はぁ?」
アトスの顔が、歪む。
「今回の衛兵の殺害事件は、レティウスに弓を引くものであるというのはまず、前提として事実だ」
「……ん、あぁ、そうだな」
「だとあれば……その犯人というものは、この国家に対し、害意を為そうとする者である、という訳だ」
「あぁ、分かるな」
「もちろんその行動をすればどうなるかは、自分でも分かっている訳だろう。最低限の頭があるならばな」
「……成程」
「全てを弁えた上でその行動を取り、自らの意思で償いをしないというのであればーー、俺は全力を持って犯人を叩き潰す。レティウスの国家の権限全てを使い、あらゆる人脈を使い、呪い殺す、何一つ遺さない焦土にしてやるという事だ」
最後の方は語気を荒げ、狂気すら感じる目になるミクモ。
「ミクモ……?」
アトスと同じく、僕もミクモの態度を疑う。
「兵士にとっての無念さは分かる。だがーー私には国兵として、為すべき事がある」
「……為すべき事とは?」
僕がミクモを見ると、
「俺がこの事件の犯人を同じ目に遭わせてやるというんですよ……兵士どもと、同じ目にね。死んだほうがマシだと思うくらいに、己の愚行を奈落の底で後悔させてやる」
言葉を投げつけてきたミクモは調べものがあるのでといい、一足先に駆け足になっていった。
「ーー大丈夫か、あいつ」
「少し、心配ですね」
僕はアトスにそう言うとともに、一抹の不安を感じていた。




