エピソード3「デュアル・ゴア」
エピソード3「デュアル・ゴア」
「いいから出て行け!」
40代の頭髪の薄い男……ゾゴイ=ヒジリは貴族街の番兵からエリアの外へつまみ出されていた。
時は夕暮れ、一般的な貴族はとっくに退勤をし、人影もぽつりぽつりとしか居ない。
「しかし、あそこがなくなったら私は生活出来ません!」
「知った事か!」
番兵の鉄拳がゾゴイの顔に命中し、ゾゴイはもんどりうつ。
彼の農場であるゾゴイ農場は、ニワトリとタマゴ、そしてヒルトライの総生産の2割程度の小麦を産出する拠点であるが……彼の全てだった。
だが、全財産を投与した物を、ヒルトライの貴族どもは奪ったのだ。
二束三文の金。ーーそれを薄っぺらい強制徴収の紙で。
ーーまだ、年頃の娘もいるというのに。
「お願いです、まだ私は、此処で終わるわけには!」
「娘を売ればいいだろぉ? あぁ?」
「そんな……!」
「ほら、帰った帰った! このままエリアに戻るなら、串刺しにするぞ!」
番兵は槍を構えて、脅してくる。
その時である。
槍を向けられたゾゴイの身体に、片腕を失った怪物が電撃のように覆いかぶさったのだったーー。
「アイラ=ステイシアです。ミラカナは居ますか?」
ドアが開けられ、ミラカナのオフィスに来客が現れる。
包帯を巻いているミクモはすぐさま礼を取り、アトスは服を引っ張られて嫌々敬礼をする。
「は、はい!」
「昨夜貴族街の番兵が5人程殺害されました。犯人は不明ですが、人間の力とは思えぬ怪力で殺されていたとの事です」
「ーー多分、俺が取り逃した奴だろうな」
アトスは後味悪く顔を顰める。
「俺ではなく……俺達だろう、取り逃したのは」
訂正しつつもミクモも歯痒そうに声を上げる。
ミラカナとアトスは珍しく、ミクモが感情的になっているのを感じていた。
「では早速、現場の検証にいく事としましょう。どちらの方でやられたのでしょうか?」
アトスは魔力を用いた殺害だと考え、残滓を感知出来る自分なら見つけられるだろうと判断し、そう発言する。
「それが……貴族街と平民街の境に近い区画なのです」
「……容疑者が絞れない、という訳ですね」
ミラカナがお手上げか、といったジェスチャーをすると
「えぇ」
とアイラは頷いた。




