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59.フェリの告白


カイルとの夜は、

ダンスと似ている。


二人で高まり、

笑い合うように肌を重ねる。


お互いの身体の動き、

子供の頃から練習してきた踊り方、

全てわかっている。


新しいステップを覚えるように、

楽しい。


月が無くても、星が明るく照らす。


「痛っ……」


カイルが急に手の印を押さえる。


「伴侶の印にも、痛みが走るの?」

そういえば、前にも言っていた。


「サシャに最初に教えて貰ったよ。

魔力を渡しすぎると、

警告のように鈍く痛むから。

今日はどうやら、

夢中になり過ぎたみたいだ」


わたしの前髪にキスをする。


「魔力を渡し過ぎると、

アスラン兄様みたいに、

身体が辛くなる?」


カイルはちょっと迷ってから、

打ち明けた。


「フェリ、サシャは多分、

兄貴に教えていない」


ミゲルは、

情事のあとはところ構わず

眠るけど……


カイルも、サシャも、

魔力を渡した後、


アスランのように、

衰弱したりしなかった。


アスランは魔力の枯渇はしないと言った。

だけど、体力が削られるとは言わなかった。


「兄貴は、

フェリに魔力を渡し過ぎてる……

俺が言った時驚いてたから。

でも、今は、わかっててやってる……」


「どうして……?

そうまでして、

魔力の供給が大事なの?」


「サシャも兄貴も、

お前を愛してるからだよ」


「そう、

聖女の魅了の力のせい……」


「そういうことじゃない。

フェリは、残酷だな」

カイルは悲しげな瞳でわたしを見下ろす。


カイルの腕の中にいるのに、

凍えそうに震えがはしる。


「アスラン兄様は、

ずっと、伴侶の印に

痛みを感じてるのね……」


わたしは、


ばかだ……


このゲームを作った女神に会えたのに、

肝心のルールを確認していない。


聖女の印も、

伴侶の印も、

力も、制約も、

聞けたはずなのに――


怒りと感情に任せて、

あっちに勝手なことを言わせるだけだった。


今もわからないことだらけ。


暗黒竜を倒したら、

伴侶達はどうなるのか。

わたしを嫌う勇者のことも。


聞きたいことはいくらでも

あったのに……

自分の不甲斐なさが悔しい。



「カイル、聞いて。

わたし、女神と話したの」


「フェリ、落ち着いて、

身体が氷のようだ……」


「勇者に会った時のこと、

覚えてる?


わたし、あの場所だけで、

聖力も魔力も使い切ってしまったわ。


たった数百人を救うために、

この数ヶ月溜めていた魔力全部、

使っちゃったの!」


腕をさするカイルの手から、

優しさが伝わってくる。


だけど、

わたしの歯はガチガチと音をたてて、

震えは止まらない。


「女神はクソったれで……

わたしが、魔力を集めないと、

世界が滅びるっていうのはもう

決まってるのよ。

わたしみたいなグズな子豚がよ」


話していて、

目の前が絶望で暗くなる。


「フェリ……」

わたしの頬を両手で包む、

カイルの手の温かさだけを感じた。


「魔力が足りないの、

全然足りないのよ……

こんな風にカイルから貰っても、

アスラン兄様を衰弱させても、

足りないの……」


涙が溢れて、カイルの手をつたう。


「だから、魔力の多い異教徒を

結婚式で探すの。

ミゲルはまだ知らない……

サシャと決めたの……」


カイルは、

わたしの涙をぬぐうように、

瞼に何度もキスをした。


「あと、何人か伴侶が増えるってことだろ?

ミゲルより先に俺が知ったなら、

結婚式、ギリで許せるかな……」


目を開けると明るい緑の瞳が、

わたしを静かに見つめていた。


「わたしは……

女神の庭には、

行けないわね……」


女神の庭なんて信じてないのに、

なぜかこんな言葉が口をついてでた。


「フェリ――

俺は女神の庭があっても、

無くても、

フェリと同じところに行くよ」


カイルは、

ギグと同じようなことを言う。


わたしは、

暗黒竜との戦いで命を落とすかもしれない。


「そうなったら……

待ってるね。

わたしを追ってくるのは、

カイルだけじゃないけど」


影に視線を落とす。

影は揺らがない。


わたしの涙は止まっていた。


「まだ競わせるのかよ……

子豚の姫は」


熱い手で、

わたしを抱き寄せる。


カイルの熱で、

わたしの身体は少し

体温を取り戻していた。


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