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14.狂信の檻(*カイル)

*狂信の檻(*カイル)


一方、公爵の書斎


「カイル、どうした? 結婚したいだと?

――もちろん、賛成だとも」


「……親父、ありがとう……」


カイルは、心からほっと息をついた。


だが、次の父の言葉で、

カイルの世界はあっさりと、裏返った。


「何のために、

息子二人を婚約すらさせなかったと思う?


――カイル、お前は聖女の夫になる。

そして、アスランもだ」


「親父……なにを、言ってるんだ……?」

動転してカイルの声が、震える。


「俺は、フェリに求婚したいって話をしてるんだよ!

それに、なぜ兄貴の名前が出てくる……?」


父が女神の紋章を胸に抱いて打ち震える姿を見て、

カイルの背筋に鳥肌が立った。


元々、両親は熱心な女神信者だ。


だけど……


「まさか……親父は、フェリが聖女に選ばれるって、

前から知っていたのか?」


「当然だ」


公爵は、淡々と語った。


「我が公爵家は五百年前、

光の聖女様を庇護する栄誉を賜った。


そして――このわたしの代で、

再び、

無事に聖女様をお迎えすることができたのだ」


静かな声が、異様なほど誇らしげに響く。


「フェリシアは、光の聖女になるべくして生まれた、

運命の娘なのだ。実に、光栄なことだよ」


「それじゃあ……

フェリが聖女になると知っていて、

フェリの母親と再婚したって言うのか……?」


「もちろんだ。

あれもまた、女神様の神託に選ばれ、

女神にすべてを捧げた女だ。

素晴らしい、同志だよ」


そして、公爵は愉快そうに笑った。


「しかしな、

子供のくせに、お前たち兄弟そろって、


『フェリシアと結婚したい』などと言い出した時は、

本当に肝を冷やしたよ」


「は?……俺たちのせいで、

フェリはあのボンクラと婚約したのか?」


楽しかった子供時代が、

こんな都合で奪われていたなんて……

カイルの拳が震えた。


「そうだ、フェリシアは王子と婚約させて

お前たちと引き剥がした。

降臨祭まで、何かあってはと

気が気じゃなかったよ……はっはっは」


乾いた笑いが響く。


「ただ、そんな理由で……

フェリの人生を縛ってたのか……?」


カイルは、父の姿を、ただ呆然と見つめていた。


本当に――

この男は、威厳ある公爵で、

自分の『父親』なのだろうか?


「……光の聖女様は、八人の夫を持つ。

喜べ、カイル。お前も、その一人だ」


父親の口から聞く言葉は、カイルを蝕んだ。


「……そんな、下劣な話……!

俺は、そんな運命認めない! フェリを守る!」


踵を返そうとした、カイルの背に――


「行くな、カイル」


公爵の声が、低く落ちた。


振り返ると、父の顔は、影に沈み、

人とも、父とも思えないほどに暗く見えた。


「――今は、

アスランと聖女の『婚儀』の時間だ」






少女小説から、ちょいホラー

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