親友は詐欺師で泥棒になってしまった
――チュンチュン――
「ん⋯⋯暑っ⋯⋯ん? 何だこれ?」
目を覚ますと、夏なのに湯たんぽみたいな物が胸の上にあったので、投げ捨てようとしたら湯たんぽではなかった。
「⋯⋯これは腕だな。寝相の悪い⋯⋯っておい、誰の腕だよ?! って今日もかい!」
今日も隣に元親友の変態盗掘者がいた。楽しく食事をし、また安ワインを飲んでここに帰って来たらしい。いい加減学習するべきだろ、私は。
「おい! 今日から仕事だろ? 早く起きろよ」
「⋯⋯あ、あぁそうだった。今日から仕事だった⋯⋯」
寝ぼけまなこの男を放置してロゼリーは服を身に着ける。
「あれ? 昨日と家が違う? ここ何処だよ? まぁいいか」
入口から外に出ると、ここは王都の一軒家だった。まぁ道は分かるので今日もいつもの宿屋に戻った。
「え? 部屋が無い?」
「ええ。昨日お連れの方がお礼を言って、荷物を持って出て行かれましたが⋯⋯」
「そ、それは詐欺師だ! 私にお連れの者などいない! 一人だ!」
「え?! そ、そんな! でも顔見知りの騎士団の隊長さんでしたし⋯⋯どうしましょう?!」
「なんと! 今世の親友は詐欺師で泥棒男でもあったのか!」
私は先ほど後にした家に戻る事にした。
「あれ? いない⋯⋯」
詐欺師で泥棒で変態盗掘者の元親友はすでに仕事に行ってしまっていた。
「ぐぐぐ⋯⋯許さん。絶対に許さん!!」
怒りに燃えたロゼリーは騎士団詰所に向かった。
「すみませんが詐欺師で泥棒で盗掘者のノルベルトとか言う変態長はどこですか?」
「あ、一昨日の方ですね⋯⋯隊長は訓練場の方におりますので呼んで参り――――」
「第一訓練場か。丁度いい」
「え? お客様? きゃあ! 床が凍ってる?!」
ロゼリーは怒りによって周囲を凍てつかせながら、フェリックス時代によく過ごした場所である第一訓練場に向かった。
そこでは騎士達が剣による対人戦の訓練を行っていた。
「よし! どんな事をしてでも攻撃は続けろ! 相手の弱点を狙え! 最後まで攻撃の手を抜くな! そうすれば勝ちだ!」
「ほう? 確かに。酒を飲ませて女の弱点を突きやがったな。毎晩攻撃を続けやがって」
「へ? ロゼリー?」
第一訓練場に魔法の炎で燃える剣を握ったロゼリーが現れた。
「全く。元親友だと思って気を許してしまった様だ。まさか私の全財産を持ち逃げするとは」
ロゼリーの荷物の中には実家から持ち出したダサい宝石類が隠してあったのだ。
しかも泥棒対策として薄汚く見える男物のパンツの中に隠していた。だがそんな対策も空しく、すべての荷物ごと奪われるとは思わなかった。 しかも親友に⋯⋯
「⋯⋯何の話だ?!」
「一発殴らせろ! この詐欺師で泥棒で盗掘者めが!」
「え? ロゼリーさんが殴りたかった相手ってやっぱり隊長だったの?!」
「隊長がベール王国で詐欺でもしたのか?!」 「泥棒と盗掘って何だ? 気になる!」
騎士達は訓練の手を止めて二人に注目した。
「私の全財産をどこにやったんだ! お前が宿屋から盗んだのは分かっているんだからな!」
「隊長?!」 「泥棒じゃないか!」 「詐欺って⋯⋯」
「な、何を言っているんだよ?! 盗んでなんか――――」
「問答無用!! 裁きの時間だ!」
火魔法を乗せた剣で攻撃する。これはフェリックスが得意にしていた魔法だ。
「うぉ!! ち、ちょっと待て! これはシャレにならん!」
止めやがったか。まぁこの攻撃は親友が何度も見た事のある攻撃だからな。
「『どんな事をしてでも攻撃は続けろ』だろ? 今度は斬撃を飛ばすからな!」
「話を聞いてくれ! うォオオ?! 危な!!」
剣から飛んだ火魔法の斬撃を変態男は避けた。
「弱点も狙えだったな! アイスバレット! アイスニードル」
「おい! ゲ、どこ狙ってんだよ! ウヲオオオ?!」
正面から攻撃したと思わせて一瞬で背後に回り、尻にアイスバレットを打ち出す。乙女の花園への無断盗掘への仕返しだ。
「そして『最後まで攻撃の手を抜くな』だよな? 純粋に剣で勝負だ! オラオラ!」
「何か勘違いだって! フェリックスそれ死ぬヤツ! マジで! ごめんなさい! 理由が分かんないけど、ごめんなさいって!!」
「おい。何をやっているんだ?」
戦に盛り上がる訓練場に底冷えのする低い声が響き渡った。




