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可愛い仕返し

「ここが今日の現場かな? おぉ~これが毒草かぁ~」


 辺り一面に広がるのは蔦植物の様な見た目で、茎にも葉にも棘が無数に生えている。この棘に猛毒があるそうだ。


「まずはアイスカッター」


氷の刃で蔦を切り刻む。 触れると危険な物には距離を取って魔法で対処するのが一番だ。


「根っこには棘はなさそうだから、よし! 引っこ抜くぞ」


抜いた根は袋に詰める。どんどん詰める。


「よし、根っこは十分に集まったな。じゃあファイアーフレーム」


先ほど切り刻んだ葉や蔦を火魔法で炭になるまで燃やす。 この毒は火を加えれば無毒化できるらしい。


「ヒート」


両手を地面に付けて火魔法を発動する。土の温度を80度まで上げて、しっかりと地中に残った根を枯らす。これでもう生えて来る事はないだろう。広範囲に渡って処置をしたので、種が芽吹く確率も低いと思う。


「うん。クエスト終了! じゃあこの袋を持って行きますかね~ハハハ!」


ロゼリーは根っこが詰まった袋を持って楽し気に現場を後にした。



「ロゼリーさん、もう終わりましたか。早かったですね。ではギルド員が毒草除去の確認に参りますので、確認が終わり次第入金させていただきますね」


随分と楽勝なクエストだった。


「はい。まだ時間がありますので何か私でもできそうなクエストはありますか?」


「そうですね⋯⋯今の時間からですと、この害虫駆除がございますが女性向きではありませんね⋯⋯」


「ほう? どんな仕事なのでしょう?」


「実は――――」



 ロゼリーは次のクエストの現場にやって来た。これから危険な害虫を駆除するのである。


「ふむふむ。あの木の上にあるね。きっと子供達も遊びに来るだろうし、早くしないと危険だな」


ここはいつもロゼリーがパンを食べている公園である。噴水から少し奥の方まで入った木の上には大きな蜂の巣があった。


「では始めましょう。クール」


ロゼリーは氷魔法で巣と巣の周りの温度を下げていく。するとポトポトと巣の外にいた蜂が落ちて来た。それらの蜂と、木にくっついて動きが鈍くなっている蜂も丁寧に袋に詰めていく。


「蜂は温度を下げ過ぎても駄目だからね。ハハハハ! アイスカッター!」


最後に巣を切り落として袋に詰め、ロゼリーは現場を後にした。



「害虫駆除が終りました」


「お疲れ様でした。現場の確認を終えましたら入金させていただきます。あ! ロゼリーさん、毒草駆除のお支払いが済んでいますよ。確認に行った担当者が完璧だったと言っておりました! どの様に駆除したのですか?」


「魔法ですよ。氷魔法と火魔法を使いました」


「属性が二つも?! 凄いですね~貴族の方でしたか」


「元です」


強い魔法は貴族の証。しかも属性が二つもあるのは大変珍しいのだ。少しだけ火魔法が使えたフェリックスと氷の属性を持つロゼリーが頭の中で同居しているせいかもしれない。


今日はいい仕事をした。飯でも食って一杯飲んで帰るかな~


 ロゼリーは安くて旨そうな店を探しながら王都の下町を歩いて行く。昔の馴染みの店は無くなってしまったけれど同じような店は沢山あるので、今日はどこに入ろうかと悩んで歩いていたら⋯⋯


「おい! やっと見つけた!」


「あぁ変態さんか。あれ? また私服じゃないか。今日も仕事をしていなかったのか?」


昨日も一昨日も働いていなかった。真面目だった親友は今となっては自由人になってしまったのだな。


「今日は遠征後の三日連休の最終日だったんだよ。せっかくだから王都の案内でもしようかと思っていたのに」


「そうか。なら今から美味しくて安い店を教えてくれないか?」


「いいぞ。フェリックス好みの店だな。任せてくれよ」


自由な変態親友はすぐにお店に案内してくれた。

そこはトラム王国の家庭料理を扱う店で、おばあちゃん家の様な安心感のある雰囲気の場所だった。


「おばちゃん、俺はレンズ豆とソーセージ。で? フェリックスは今日は何をしていたんだ?」


「あいよ。お連れさんは?」


「こっちは魔牛の香辛焼きね。それと親友、今の私はロゼリーだな。今日はクエストを熟しながらイイ感じに復讐をした」


「復讐? 何をしたんだよ?!」


今日のあれは神の思し召しだったと思う。


「アロガンス子爵家のクソダサい庭と建物に毒草の根っこと蜂の巣を投げ入れてやった」


「おいぃぃ!!」


虫や植物と言えども命があるのだ。人のエゴで無暗に殺してはいけないだろう。彼らには新たなる土地で幸せな生活を送って欲しい。私は優しいからな。ガッツリと魔牛肉を注文したロゼリーはそう思った。


「あの毒草は強力な根っこらしいから直ぐにでも生育するだろうよ。蜂の巣もかなりの大きさだったから投げて壊れた部分も蜂達がすぐに直すと思う」


まぁ可愛らしい悪戯さ。フェリックスと親友の命も商会も奪ったのと比べたら何の問題もないよな。

明日も私からの贈り物をあげよう。次は何にするか楽しみだ。 こりゃ恋人に渡すプレゼントを選ぶよりもドキドキするなぁ~


そしてロゼリーはこれからもコツコツと嫌がらせを続けるのだった。


そしてどんな事でも三度目以降は日常となる。

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