意外と側にいた親友
「はあああ?! この変態盗掘隊長が親友?! 嘘だろう?!」
「だから変態じゃない! お前にハムスターのお世話を押し付けられたルーカスだ!」
なんてこった。親友が変態に生まれ変わってしまっていた。時々いやらしいお坊ちゃまに変身し、酔った女性の乙女を奪う盗掘者な男に。
「よし、殴るか」
「昨日殴ったじゃないか!」
「たった一回だろ? 細かいな」
「適当過ぎだろ!」
⋯⋯う~ん。親友かもしれない。 そういえば変態長の細かいツッコミにも懐かしさを感じたな。
「なぁ親友はどうして死んだんだよ?」
直接本人に一番知りたかった事を聞いてみる。
「お前が俺の代わりに矢に討たれて、俺は直ぐに矢を放った野郎の元へと向かったんだ。先に言っておくが俺だって戦場でボケっとしていた訳じゃない。だがどう考えても味方しかいない方向から矢が飛んでくる事までは予想できなかったし、警戒もしていなかった」
「え? じゃあ味方が親友に矢を向けた訳?」
なんて事だ。それじゃあ騎士団の仕業かよ?!
「矢を放った人間を切ったよ。藪の後ろに隠れて顔を布で隠していた男を三人な。それで死亡を確認してから布を剥がして顔を見たら⋯⋯兄と商会の部下の二人だった」
「はぁ?」
どうして兄が弟を殺すんだ? 意味が分からない。
「で、動揺していた俺は隠れていた四人目の存在に気付かなかった。それで殺された」
何だそれ? 戦争関係ないじゃん。
「一体何がどうしてそうなった?」
「あの頃、父は半年くらい寝込んでいて、俺が戦場に向かう少し前に他界した。それで兄がすべてを受け継いだのだが、全くと言っていいほど商売の才能が無かったんだ。商会は赤字も出始めていたし、だから俺もできるだけ手を貸していた訳だが、影では俺の方が跡取りに向いているなんて言われていたみたいだな。兄の婚約者が俺を邪魔に思っていた話も、生まれ変わってから知ったよ」
商才に対する嫉妬が原因なのか⋯⋯でも弟を殺すまでするか? そういう思考になる様に誘導した人間がその婚約者なのかもしれない。
「グロリア商会は勿論潰れたが、その後は兄の婚約者だったアロガンス子爵家が買い取って、商会の名前を変えて今でも繁盛しているよ」
「ムカつくな!」
十発殴りたい。俺の死にも関係している訳だし、本来ならば殺人事件の所をただの戦死とされて、親友を殺した男は今でものうのうと生活をしているのだろ?
「まぁな。でも俺はフェリックスとまた会えて嬉しいぞ! 今日は飲むか!」
「ムムム⋯⋯そうだな! ムカつく時は飲むしかないな!」
二人は懲りずに飲みに出かけた。
そして二度ある事は三度ある。
――チュンチュン――
「ん⋯⋯暑っ⋯⋯ん? 何だこれ?」
目を覚ますと、夏なのに湯たんぽみたいな物が胸の上にあったので投げ捨てようとしたら湯たんぽではなかった。
「⋯⋯これは腕だな。寝相の悪い⋯⋯っておい、誰の腕だよ?! ってまたまたかい!」
今日も隣に盗掘者がいた。最早これが朝の通常運転なのか。
「親友は変態になってしまったが見つかったし、これからどうすっかなー」
親友に会う事だけを目標にここまで来たから、その後については何も考えていなかった。
「とりあえず冒険者ギルドに行って仕事でも探すか」
ロゼリーは服を着て、またまた部屋を後にした。
「どんなクエストが多いのかな~」
今日も荷物置き場として使用している宿屋に帰って身支度を整え、冒険者ギルドに向かった。
そしてクエストが貼られている掲示板の前に行くと、そこには様々なクエストが貼り出してあった。
「まずは猫探し? 難しいだろうね。薬草摘み、護衛、引っ越しの手伝い、魔石集め、屋敷の警備、毒草の除去⋯⋯?」
毒草の除去とは一体どんなクエストなのだろうか。気になったロゼリーは受付で聞いてみた。
「その毒草には猛毒があって少し触れるだけでも危険なので困っているそうです。風魔法を使える冒険者がウィンドカッターで切り刻んだそうですが、強力な根っこが残ってしまって、また生えてきてしまったらしいのですよ」
「私が除去します」
「ありがとうございます。このクエストは長い間誰にも選んでもらえなかったので、夏の日差しを浴びて毒草が伸び放題になってしまって困っていましたから」
「お任せ下さい」
誰も選ばなかったおかげで報酬も吊り上がっていたし、実にありがたい。
「あ、そういえば騎士団の隊長とは会えましたか?」
「あぁ変態盗掘者でしたら一発殴って酒を一緒に飲みました」
「え? あの人が変態? 盗掘? 嘘でしょ⋯⋯」
ロゼリーは紙に書いてもらった住所を見ながら目的地に向かっていた。
「ん⋯⋯この辺りは貴族の館が多いな⋯⋯あ? 何かダサい屋敷があるな!」
閑静な住宅が立ち並ぶ場所に金ぴかでゴテゴテとした締まりのない邸宅が見えた。
非常に気になったロゼリーは、歩行者からあまり隠すつもりの無さそうなスカスカな柵からヘンテコな邸宅と庭を見てみた。
「スゲェ!! マジでダセェ!」
濁ったひょうたん型の池に金ピカな小便小僧があり、庭の芝生にはカラフルなペンキで塗られた銅像が不規則に配置してある。屋敷も増築を繰り返したのか、意匠が滅茶苦茶でとにかくセンスが無い。
「お嬢さん、声が大きいですよ。ここはアロガンス子爵家だよ」
「アロガンス子爵家?」
どこかで聞いた名前だな。確か⋯⋯
「そう。あくどい事で有名なね。この間も目を付けられた小さな商店が潰されたそうだよ」
「嫌な家ですね」
「そう。だから気を付けなさいね」
「は~い」
ふ~ん。これは良い事を聞いた。




