ギルドと詰所をグルグルと回る二人
――ノルベルト――
「水色の髪のロゼリーと言う名の女性冒険者で、ベール王国から来たはずだ」
「う~ん。記録を確認していますが、今日クエストの受付に来た冒険者の中にベール王国の出身者はいませんでしたね。昨日もいません」
どうやらロゼリーは冒険者ギルドには来ていないらしい。今日はクエストを受けないつもりか。まぁ昨日この国に来たばかりだから色々とする事があるのだろう。
「⋯⋯そうか。すまなかった」
「いえ、早く恋人さんが見つかるといいですね。喧嘩した時は早めに謝るのがコツですよ」
「え? いや⋯⋯」
彼女を見つける事ができずに俺は冒険者ギルドを後にした。
「⋯⋯どうしたらいいんだ」
女性の行きそうな所なんて俺には分からない。そういえば彼女は誰かに会いにトラム王国に来たと言っていた気がする。だが『トラム王国初上陸~!』とも叫んでいたので来たのは初めてだろう。なら知り合いとは誰だろうか? この国に親戚でもいるのか、ベール王国出身で今はこのトラムで生活している知り合いなのか⋯⋯全く分からないからオディットに聞いてみるか。彼女はロゼリーと道中で会話をしていたから何か知っているかもしれない。
俺はまた騎士団の詰所に戻った。
「オディットいるか?」
「あ、隊長」
オディットはベール王国で購入した商品の仕分けをしていた。
「ベール王国から来たロゼリー嬢の行先は知っているか?」
「え? う~ん⋯⋯どこに向かったのかは分かりませんが、確かこの国には復讐に来たと言ってましたよ」
「復讐?!」
復讐したい程の人間がトラム王国にいるのを知って、わざわざここまで来たのだろうか。まだ若いのにどんな過去を持っているんだ彼女は。
「確かルーカス・グロリアって騎士を探していると言っていました。でも変ですよね? グロリア家はもうありませんし」
「⋯⋯へ?」
ルーカス・グロリア⋯⋯って俺じゃん。俺の前世じゃないか。
「一発殴りたいって言っていましたね。そいつはきっと悪い男なのでしょう。過去にロゼリーさんに被害を出した結婚詐欺師じゃないかな? って、私は思っていますけど」
「えぇぇぇ?」
前世の俺は彼女に何かしたっけ? いや、その前に彼女はまだ生まれていないか、もしくは小さな赤子だったはずだろう。ならば戦時中だったし、敵国であったベール王国出身の彼女の家族に憎まれる様な事をしたのかも⋯⋯
俺はオディットにお礼を伝えてトボトボと騎士団詰所を後にし、心を落ち着かせる為に王都の景色を見に行く事にした。
――ロゼリー――
「すみません冒険者を探しているのですが」
「はい。あれ? 水色の髪⋯⋯もしかしてベール王国出身方ですか?」
「え? なぜ知っているのです?」
冒険者ギルドの受付でいきなり出身地を暴かれた。ちょっと怖い。
「実は先ほど、あなたと思われる女性を探している男性が来られまして」
「⋯⋯何ですかそれ? 私は昨日この国に来たばかりで知り合いの男性なんていません。そいつは右も左も分からない外国人女性を狙った変態野郎ですよ」
変態は嫌だなぁ。でもロゼリーは可愛いから狙われてしまうのだろうな。あれ?⋯⋯それともまさか家族か? あの元婚約者が慰謝料の支払いを拒否したからキレて私に文句を言いに来たのかも。でもトラム王国に向かう事は伝えていないしなぁ。
「あの方は確か第三騎士団の部隊長だったと思いますが⋯⋯」
「⋯⋯ほら。やっぱり変態野郎だった」
どうしてあの男が私を探しているんだ? もしかして今朝ヤり逃げしたのを責めに来たのか。そんな乙女じゃないんだから。⋯⋯あれ? よく考えたら私が乙女だったんじゃないか? おいおい元だが貴族の女性の乙女を暴くなんてさぁ~今すぐ巨額の慰謝料を払えよ。一発殴らせろよ。
「その変態長はどこに行ったのか知っていますか?」
「さぁ⋯⋯分かりませんね。騎士服なら仕事場でしょうが、今日は私服でしたので」
「オディットさんに聞くかな」
私はまた騎士団詰所に向かう事にした。
「あら? ロゼリーさんね。どうしたの?」
「お忙しい中、お邪魔してしまってすみません。失礼ですが変態長はどこにいますか?」
オディットさんは騎士服を着ていたので今日は仕事をしているみたいだった。部下は仕事で隊長は淫行⋯⋯やはり殴るべきだな。
「隊長ならここにはいないわ。そういえば隊長もロゼリーさんの事を探していたわよ。何か約束でもしていたの?」
「いえ、ただ一発殴ろうかと思いましてね。ありがとうございました。失礼します」
「えぇぇ?! ロゼリーさんの殴りたかった相手って隊長だったの?!」
「変態長はどこにいるんだろうな? 高台から見てみるか」
騎士団詰所を後にしたロゼリーは、昨日も行った丘の上にある聖堂の庭に行ってみる事にした。
今日は平日だし、暑い時間帯なので観光客がチラホラいる以外、ほとんど人はいなかった。
「ふぅ⋯⋯暑いな。喉が渇いてきた。冷えた酒でも一気にグィっと飲みたいね」
日陰は少し涼しいが日向は太陽の日差しが肌刺す。今日は騎士団詰所のある王宮まで登ったり、ギルドのある平地まで下ったりを繰り返したので結構疲れていた。それに昨晩は全身運動をしたみたいだしな。全く覚えていないけど。
⋯⋯クソぉ初体験なんて一生に一度しか体験できないのに! 初めては痛いって聞くからどんな物かと気になって楽しみにしていたのに! ムカつくから二発殴ろう。
ロゼリーは文句を垂れながらも昨日と同じ展望場所に辿り着いた。
「⋯⋯うわ~変態長見つけた!」
「?! ロゼリー?!」
デジャヴかと思われるほど、変態長は昨日と同じ場所にいた。
「よし、まずは二発殴らせろ!!」
「一発じゃなかったのか?!」
「まずは一発目からだ!」
「す、すまないが覚えていないんだ!」
な、なんだと? 昨日の事を覚えていないのか?
「ならば三発殴らせろ!」
「その、あの時は仕方が無かったというか、日夜ヤり合うのがいつもの事だったし、お互い様だったと言うか」
なんて爛れた生活をしているのだこの男は!
「まぁご家族様には申し訳なかったとは思うが、ああいう時はお互い様だろ?」
「よし。蹴りも入れよう」
開き直り出した。許せない。
「それに俺だって大切な物を失ったんだよ!」
「知るかボケ!!」
――バキ――
「ガハァ⋯⋯」
「フン! こんな男に処女を奪われたと思うと腸が煮えかえるな」
「痛ぇ⋯⋯何の話だよ? 戦争の話じゃないのかよ?」
「はぁ? 戦争? それこそ何の話だよ?」
「「⋯⋯」」
話がすれ違った二人は暑くて喉も乾いたし、昨日のパブに向かった。




