罠師でしw
「ヨーダさん、お願いがあります」
私達は原色である黄色や赤色へ色鮮やかに紅葉した木々の森を歩いてダンジョンへ戻る途中だ。赫灼の森の木々は全て紅葉樹で構成されていて、本来なら冬は落葉し春に再び芽吹くはずの葉は一年を通して常に紅葉したままの謎樹木だ。
本来なら日差しを遮る大木の森の中を歩いているのに暗さを全く感じない。赫灼の名を冠するに至った理由でもある。
久々に魔物を爆殺できて色々と発散出来たよん♪ルンルンとピクニック気分で歩いていた私に向かってロンさんが真面目な顔で頭を下げていた。
「何ですか?改まって」
「私に狩りを教えて頂けませんでしょうか…」
「良いですよ。元々そのつもりで魔物狩りに同行して頂いたので、明日から罠の作り方や仕掛け方などを伝授しましょう」
私が笑顔で快諾すれば、ロンさんはバネ仕掛けのおもちゃのようにビョンッと頭を上げて驚いた顔で私を見る。
「あ、ありがとうございます!」
「なんの、なんの、能動的罠運用と土魔法による積極的危険物質化成分調整、衝撃を利用したピンポイント爆殺殺法の数々をお教えしますとも♪」
「は?の、能動的な罠?土魔法?…ピッ?爆?」
「まあ、詳細は戻ってからゆっくりとご説明します。あ、ゴブリンが居ますね。ちょうど良いのでちょっと見ていて下さい。さっそく能動的罠運用をお見せしましょう♪」
「えっ!ご、ゴブリン!? はわわわ…油断しました」
生い茂る木々の枝と枝の間を縫うように渡るゴブリン。野生の猿に近いそれらが、いつの間にか私とロンさんは包囲されている。
今はハーフリングである私とロンさんの身長はゴブリンと同程度。肌の色が緑色でなければちょっと不細工なハーフリングと言っても過言ではあるまい。まぁ可愛くは無いけどね…
『ゲッゲッゲッ、ギギャーッ!』
『ギャッギャギャギャギャ!ギャギャ』
『ギーッ!ギャギャギャギャ!ギギギ』
三匹の子豚ならぬ三匹のゴブリン達が前後左右から飛び掛かってくる。どうやら何か会話のような事をしているので、思った以上に知恵は回るみたい…
真正面の木から私に向かって飛び掛かってくるゴブリンは両手を広げて身体を大きく見せようとしている。たぶん、こいつが囮と盾役をするつもりなんだろう。ハーフリングに敵と真正面から闘う術は無い。
「ロンさんは前へ!」「は、はいぃっ!!!」
私がゴブリンを睨み付けたまま指示すると、ロンさんはあたふたと前転して地面を転がる。あたふたと慌ててはいてもハーフリングは俊敏だ。一瞬で5mくらい先まで転がっている。
「【ピットホール】」
私は敷きつめられている落ち葉の上から右手を当てて落とし罠のトリガーワードを唱える。すぐさま素早くロンさんの後に続いて前転した。
「【縄術】括れ!」
振り向きざまに魔法鞄になっているウェストバッグからワイヤーロープを取り出して先端を落とし穴へ向かって投げてやれば、最初のゴブリンが地面に着地しようとして落とし穴へ嵌る瞬間器用にその首に巻き付く。ロープの先端は蛇のように動いてシュルルルル…っと括り罠の輪っか結びをアっという間に再現していく。
『ギャギャッ!? ──ギョグェ゙ッ!』
『ギャッ!?』
『ギャギャギャッ!』
──ドサッ、ドサドサッ!
左右から飛び付いて来ていた二匹に押し込まれるようにして三匹同時に落とし穴へ落ちて行った。一穴三匹だねw
「ほい、一丁上がり♪ ロンさんも見ますか?」
「あ、は、はいっ!」
前転した後にしゃがみ込んで茫然と口を開けていたロンさんが慌てて私の後に続く。スキルで開けた直径3m 深さ5mの落とし穴の底に折り重なるように落ちたゴブリン達は、首を括った個体以外はまだ生きていた。時折ピクピクと痙攣している。
「ちょうど良かった。こいつらを原料にして爆薬を精製しましょうか♪爆薬の精製に獣の死体が必要なんですよね〜、私はスキルで自動精製されますけど(流石課金アイテムよねw)ロンさんは自作しないと使えませんからね」
──ボンッ!!!ボボボンッ!
「ひゃっ!?」
私は笑顔でロンさんに顔を向けながら、落とし穴の中に魔法鞄から出したダイナマイトを投げ込んでおく。穴の中のゴブリン達は悲鳴を上げる暇もなく爆殺されグチャグチャになっただろう……たぶん。 怖いから穴の中は見ない…
「はわわわわわ …オェッ!」
「あ、見ない方が良いですよ?…ハハ、遅いか」
穴の中に魔法鞄から取り出したバナナと水を放り込んでスキル【ボマー】スキルの[ニトログリセリン精製]を発動。ウェストバッグの中に有ったバナナと水は死体の容積に合わせて自動錬成されるので私は適当で大丈夫だ(超便利♪)。何故バナナと水が必要なのかは私も知らないw
「このまま埋めちゃいますね。出来上がったら土魔法で中の成分を解析して同じ物が作れるように覚えて下さい。材料は獣の死体と果物と水です。では塞ぎますよーッ」
恐恐と四つん這いで穴を覗き込んで吐いているロンさんにそう言って【土魔法】で穴を塞ぐと、塞いだ地面からゴブリンの首を括るのに使ったロープが一本出ているので近くに有った木に括りつけて目印代わりにしておく。
「スキルの効果で明日には出来てると思いますから、この穴で精製されたニトログリセリンは全てロンさんに差し上げますね♪取り扱いは超注意ですけど、マジックバッグもセットで差し上げますから問題無いでしょ。使い方はまた明日ね?では帰りましょーッ♪」
「は、な、何から何まで… オェーッ」
ロンさんはまだ吐いてたよ…何かごめん
………
……
…
◆
──ダンジョン管理室
「ルビーは問題無く換金出来たで。宝石商のオッちゃんが採掘場所を教えろ言うて煩そうての、時間食ったわ… で?"魔核"は獲れたんか?」
いつもの会議用長机の上に紙幣を束のままドサドサッと出したレントがうんざりした顔でパイプ椅子にだらしなく座る。
「うん。今日はお試しだったから、とりあえず10個ね。森の中には討伐されたまま放置された魔核が有るらしいから、明日は落ち穂拾いならぬ落ち魔核拾いをしてくる。ね?ロンさん」
「はい。街に常駐している王国軍の部隊が定期的に狩っていますから、森の中にはたくさん転がっているはずです」
「なら、それを拾うだけでもダンジョンに配置するモンスターは用意出来そうだな…レント、俺達も明日は一緒に魔核拾いに行こうぜ。4人のが効率良く集まるだろ?」
「せやな。そうしよか」
「あの〜…あの石、魔核って言うんですか? それを拾うだけなら、私の同郷のハグブライト達も雇って頂けないでしょうか?お金は後で必ずお返し致しますので…どうか…」
ロンさんが立上がって頭を下げる。ハーフリングなので椅子から降りた方が低くなっちゃってるけどね。
「ん?もちろん構いませんよ。お金は返さなくて結構です。私達が雇う形にさせて頂きますから。なるほどそれは思い付かなかったな…
せっかくロンさんが協力してくれてんねやし、この際まとめて何人か雇っちまうか?どうするノーマ」
コロコロと話し方を変えれるレントって意外と頭良いんだよね〜… そういえば学校の成績もAクラスでトップなんだっけか?人は見掛けによらない…
「ロンさん、何人くらい集められそうですか?」
ノーマがロンさんを椅子に座らせながら訊ねると、ロンさんは嬉しそうにお礼を言う。見た目は完全に小学校低学年なんだよね、話し方と見た目のギャップに頭がバグりそう…油断すると頭なでなでしたくなっちゃうのよw
「明日すぐにでも集められるのは5人です。ただその〜…皆、お風呂にも入れず、明日の食べる物にも困るような生活をしておりまして…」
ロンさんが困ったように眉を寄せて上目遣いにレントを見上げる。うん、完全に叱られてる小学生だw 絵面が酷いw
「お金も工面出来たんだし5人まとめて、ここに連れて来ちゃえば?ここに居る間に狩りの仕方とダンジョンの攻略してもらって、なんならロンさん達のハグブライト村?だっけ、そこまで魔物を狩り進んでも良いんじゃない?」
ロンさんが顔を上げる。
「ッ! よ、よろしいのですか…私達の村まで」
「そやな。それがロンさん達にも一番良ぇやろ… ロンさん、5人を明日迎えに行き雇わせて頂きます。そして魔核拾いをしたら、そのまま全員をここへ連れてきて生活の面倒は見ましょう。皆さんがハグブライト村を取り戻すまでね?」
パチリと片目を瞑り、ロンさんにウインクするレントはなかなかにカッコ良かった。ロンさんも顔を赤らめてポーっとしてるしw
「当面の目標も出来たし、明日からダンジョンも本格的に始動出来そうだな?今日の宝石商にダンジョンの事は それとな〜く教えてやったからよw 明日か明後日には下調べに来るだろうしな…そしたら奴らが最初の生贄になるなw」
ノーマがめっちゃ悪い顔をしている。
「ふっふっふっ…一階層の採掘ポイントは少量を入口から目立つ場所に設置したからね…もちろん二階層に続く階段の近くにもな!わ〜っはっはっは〜♪ 早くも欲に駆られた人間どもの悲鳴が聴こえてくるようじゃてw」
「うわぁ〜…嬉しそやな〜…悪そうな顔しよって…
ヨーダ、少しは持って帰らさんと続かんで?ホンマに分かっとるんやろな…」
「いや、たぶん忘れてるな。あの顔は…」
「ヨーダさん、凄く怖いです…」
「わ〜っはっはっはっはっは、いひひっ、ひ〜っひっひっひっひっひ……………げほげほっ」
私が悪者笑いをしている時、私を見る皆の目がジトッとなっていたのはお約束ですね♪




