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DM─マルファンクション  作者: 三郎忠
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冒険者でも狩人でもない?


 通り掛かった二人組はどちらも少し背の高い外人さんて感じだった…もしかして私達の世界みたいに人族には人種の些細な違いしか無いのかも?


「ねえレントはどう思う?」


「なんや脈絡もなく唐突やな?もしかして人種の事か?そんなん、たったの二人ぽっち見ただけで分かるかいな。 けど、あの神さんがヨーダの姿をアバターのままにしたんやしハーフリング的な人種も有るんちゃう?」


「う〜ん…あの神(バグ)さんかなり雑な人みたいだし、ちょっと信用出来ないんだよね〜…もし地球みたいに肌の色くらいしか特徴的な差異が無かったら私の姿かなりヤバくない?」


 レントが怪訝そうに私を見た。


「まあ、したら子供って事にしといたらええがな。…ところでなあ、少〜し気になっとったんやけどな?そのバグさんて、もしかしなくても神さんの事け?確かに雑やったけどもやな…流石に虫呼ばわりは失礼と違うか?」


 子供ちゃうわ!ファンタジーでは主役ぞ?!


「え〜、だって最初に会った時は自分で"バグみたいなもの"って言ってたんだよ?だいいち、あれを神様って呼びたくない私が居る!」


「そうなん?ん~流石に虫はな〜…ほなら間を取って大和田(おおわだ)さんにせぇへん?少しは呼びやすいやろ?」


 何言ってんだコイツ。


「何処とドコの間を取ったら大和田さんになるのかさっぱり分からないんだけど…まあ虫呼ばわりは失礼か? …なら"オワタ"さんで手を打つか♪」


「こいつオオワダさんを省略しよったぞw

 まあ良ぇか…ならその"オワタ"さんで行こか♪」


 なんてどうでも良い話しをしながら私達は街中の細い路地裏を歩いていた。大きな通り以外に街灯は無いけど路地裏にも月明かりが差し込むので白っぽい石壁が月光を反射している。

 青い月に照らされた路地裏は仄かに青く染まり、何だか私達を異世界に迷い込んだような気持ちにさせた。 ん?ここが異世界だったなw


「おい、アレ見てみい…」


 不意に私の影から真っ黒な手だけを伸ばしてレントが突き当たりの袋小路を指差す。そこには大きめな何かの木箱を横にしてある犬小屋のような物が置かれている。


「ん~~?今、何かが中で動いたよ?…ちょっと近付いてみようか。レントの【影隠し】で私を隠してよ」


「影隠し~?今使うなら影隠行やろが。ほい、スキル使うたで。それと影隠しやのうて、今のは【影隠行】や!【影隠し】は用途の違うスキルなんやで。

 影渡りやのうて【影潜行】やし!…人のスキルに変な名前つけんなっ、カッコ悪いやろ…」


「え〜…長ったらしいから嫌。別に分かれば良くない?本当は"影"も省略したいくらいなんだからね!」


「いやいや、何でオレが我儘言ってるみたいなっとるん?ホンマ訳分からんわ…しゃーけど"影"は絶対省略させへんからな!」


「はいはい、分かりましたよ〜…ん?子供?」


「こらっ、人の話は真面目に…子供やな…」


 路地裏の木箱の中には小一くらいの女の子らしき子供が丸くなって震えていた。そういえばさっき見掛けた大人二人は外套を羽織っていたよね…もしかしなくて寒いのかもしれない。私達は外気に晒されても何とも無いので分からなかったみたいだ。


 たぶん外はかなり寒いはずなのに木箱の中に居る小さな子供は生地の薄い薄汚れたワンピース一枚で丸くなっている。


「どうしよう、レント…もしかして捨子かな?」


 私は影の中に居るレントを見る。


「そないな顔されてもやな…むぅ〜しゃあないな〜…現地民の情報も必要やしな、連れ帰って食い物でも与えてやれば何か分かるかもしれへんしな…はぁ~【影隠し】っと…」


 レントのスキルにより子供が影に呑み込まれる。

 【影隠し】は収納みたいな機能が有るみたいだね。アイテムボックスとは違って生き物も入るらしい。 子供がズブズブと影に沈められていく。


「うおおぉ、なかなかに絵面は酷いけど便利なスキルだね♪影隠し…」


「絵面が酷いのはしゃーないやろ?けど隠しておけるんは10分が限界や。一度ダンジョンに戻るど」


「うん。あまり収穫は無かったけど、子供を保護出来たから良しとしよう!もしただの迷子だったら私達、人攫いだけどねw アハハハハ」


「笑えんわ!アホ」


 こうして私達は一度ダンジョンへ戻った。




◆




「で?どうすんだよ、この子…」


 ダンジョン管理室に戻った私達は、先に戻っていたノーマに揃って正座させられている。連れてきた子供は一定温度に保たれた部屋の隅っこに寝かされていた。


 何せメッチャ臭いのだよ…申し訳ないが事実だ。 起きたら速攻でお風呂に入れてやるつもり。ちなみに彼(・)は男の子だった。ワンピースではなくチュニックの腰紐無しバージョン。下着を着てなかったのでブラブラしてたから一目で分かっちゃった。ごめんな少年、バッチリ見ちゃった♪ふふふ…可愛かったぞw


「ヨーダは何をニヤけてんだ?だいたいレントが付いていながら、どうして原住民に情けを掛けるようなマネをしたんだよ?」


「いやなぁ、この子が俺と同じ目に遭っとったのが分かってしもうてな…不憫に思うてしもた…」


「は?こんな小さな子供がか…ああ、すまん。レントもこのくらいの時だったな…そうか、この世界もクソな人間が居るって事かよ…ちっ…」


 私達がまだ小学生だった頃に起きた事件を思い出した二人の表情が険しくなった。


「レント、嫌な事を思い出させちゃってごめんね… けど、あのままじゃ凍死しちゃうかもしれなかったんだよ!無責任に連れ帰った事は悪かったけど…せめて私に見えてる範囲の命は助けたかったんだよ…考え無しでごめんよ〜…」


「ああ〜…もう良いよ。ヨーダはとりあえず風呂の準備だけしといてくれないか?風呂には俺とレントで入れるから」


 レントは溜息混じりに苦笑いする。


「うん!わかったよノーマ。まだ子供だから温めが良いよね。終わったらご飯も用意しておくよ♪」


 私はノーマの気が変わらないうちにと風呂の準備を急ぐ。管理室はダンジョンのコントロールルームなので生活に必要な物は何も無い。私はポータルで最奥の管理室から地下2階の管理者室へ移動した。


 オワタさんが管理者室(紛らわしいから仮眠室と呼ぶか)に個室を用意してくれていた。何故か四部屋に仕切られていたのでちょうど良いや。共用スペースには風呂とトイレが用意されているんだけど、謎生命体になってる私達は食事も排泄もしないのにね?まあ、今回は助かったけどさ…



◆




「お湯沸いたよ〜…て、誰も居ないじゃん!」


 コントロールルームに呼びに来たのにもぬけの殻。

 私は仕方なくコンソール画面の前に座って、ダンジョン内の罠設定を始める事にした。


「どれどれ…ん?何よこれ…DMが届いてる?んなアホな…差出人は"オワタ"? …誰だっけ? まあ良いやスルースルーっと♪ 最初の罠は5階層からにしようかな〜…いや、とりあえず落とし穴だけは全階層に設置して、と、括り罠+落とし穴の絞首刑型を5階層からにしとこうか♪ 10 階層からは落とし穴の底に地雷系の爆弾を付けて〜♪ 20階層の落とし穴には地雷とハンマー爆弾を上から落とすか!フヒヒヒ…両方を回避して油断したプレイヤーにジャベリンの森を上下から…」


《…あの〜、オワタですが…お楽しみ中に申し訳ありません。今、少々お時間よろしいでしょうか?》


 急にコントロールルーム全体に響く声。私は思わず舌打ちしながらスピーカーを睨み付けた。


「さっきのDMの人ね?…何よ。今、私忙しいんだけど?」


《ええっと、このダンジョンには魔物も出るようになるんでしょう? そんなダンジョン内で十重二重(とえふたえ)に罠を仕掛けたら皆死んじゃいません?》


 何で当たり前な事を聞いてくるのかな?


「そりゃあKillスコア稼ぐために創るんだから当たり前でしょう?一人も生きて返すつもりは無いわよ?」


《えっ!?それじゃあレベルアップする前に皆が死んじゃうと思うんだけど…》


「死ねば良いじゃない」


《何その"当たり前?"みたいな言い方!!

 あれれれ?もしかしてヨーダちゃん僕の事忘れてない?名付けまでしてくれたのに…》


「名付け?元々"オワタ"さんなんて人知らない…

 ん?…オワタ?…大和田さん略して"オワタ"な?」


《はい♪ その"オワタ"です》


「あぁそう、で、今日は何の用ですか?」


《ちょ、冷たい…》


 面倒臭い神(バグ)さまだね…


《面倒臭いって言われた…》


「あ、思考を読むの反則ですよ?

 で、何か用事が有ったのでは?」


《あ、そうそう。"魔核"についてなんだけど、君達、昨日その事について話していたよね?》


「ああ、そうですね。それが?」


《魔王放つ魔素が生み出した怪物…モンスターって言うの?魔物と言っても良いけど、それらは野生動物とは根本から異る存在だからさ、死ぬと表現して良いかは微妙なんだけど、行動不能に陥った時に凝固してしまうんだよね》


「あ、それを"魔核"と認識してれば良いんですか?」


《そうそう。相変わらず理解が早いね、助かる。

 今までそれらは放置され、やがて魔素に還元されて環境を破壊していたんだよ》


「つまり魔核をダンジョン内で還元させればダンジョンポイントとして利用可能になると… なるほど、要は産廃を再利用するリサイクルセンターの代わりをダンジョンに…」


《そうそう、正にそれ!素晴らしい理解力だね。 助手に君が欲しいくらいだよ。そのリサイクルした魔素をダンジョン内で行動した人間達が吸収出来るようにしたんだよ》


「へぇ~、このダンジョンにそんな便利機能が付いたんですね。それで?」


《いやいや、死んじゃったらさ、せっかく吸収した魔素が利用出来ないよね?そう思わない?》


「ああ〜…確かに。前にダンジョンは概念て言ってましたよね?魔物も同じだって…」


《うん、言ったね》


「じゃあ、ダンジョン一層目で中に入った人間も概念にしちゃうとか。どうです、出来ます?」


《え?何か無茶振りしようとしてない?》


「概念化してダンジョンを攻略させて、死んだら一層に戻るように出来ませんかね。実際には死んでないけど魔物を倒した分の概念的な魔素は吸収出来るようになるとか…要はゲームみたいに、アバターが死んでも本人は死なない…みたいな?今の私の身体みたいに」


《あ、出来るね。それで行こうか!ダンジョンに入った瞬間に擬似的に死んだ事にして魂を概念化。概念化した魂を今の君のようにアバターとしてダンジョンを攻略させれば、死んでもダンジョンから出たら元に戻るようにね》


「そうです、そうです。肉体的には魔素を直接取り込めなくても、魂だけが魔素で強化される感じで…それじゃダメですか?」


《問題ないよ。むしろその方が良い。現実世界に及ぼす影響は微々たるものだしね。魔素を吸収出来て生命体も強化出来れば、いつか魔王を倒せるような個体が現れるかもしれないしね!》


「可能なら、そうしましょう。ていうか魔王を倒せる見込みもないのに2人を連れてきて、何させるつもりだったんです?」


《ああ、この世界の魂ではない君達なら何回でも蘇られるから、魔素を吸収しまくってもらおうかと…》


「ああ、Dyso◯的な…そんな雑な計画で大丈夫だったんですか?掃除機2台で世界を清掃とか、メッチャウケるんですけどw ひたすらゾンビアタックとか無理ゲーですよ?」


《……すいませんでした。けどこうして魔素を利用する仕組みを整えられそうだからね。助かったよ。

 あ、それと君達がここに連れてきた子供ね、アレ子供じゃないから。君と同じハーフリング。今年で50才になる成人個体だよ?》


「は?」


《ハーフリング。後はビッグフットと呼ばれる巨人族と、君達と同じ規格の人間。話してた獣人?猫娘だっけ?流石にそれは居ないから…何か悪いね。夢を潰すような感じになっちゃって》


「いやいやいや、え?アレが成人男性って事?

 マジっすか…私、お父さん以外のナ(・)ニ(・)を初めて見ちゃったよ…ショック…」


《まあまあ、異る世界の君達からしたら、マンガやアニメみたいなものだと思えば良いじゃないw》


「なら、獣人もお願いします!是非モフりたい!」


《え〜…無茶言わないでよ〜…》


「断固要求します!」


《無理無理無理ムリ!》


「そこを何とか!」


………

……

…



◆




──ダンジョン一層


「入口に境界線を作って、そこを潜る事で概念化。

 そんな感じに出来ますか?」


《元々そうなっているね。だから、その時に"死"の概念だけ外しておけば大丈夫かな?ただ死亡判定を受けた個体の概念をどうやってここに戻そうか…》


「ダンジョンに吸収させて強制排除出来ますよ?」


《え?そうなんだ…凄く便利だね》


「ゲームの時のダンジョン機能ですけどね?死亡したプレイヤーは素っ裸で一階層から強制排出します。当然装備は全て没収♪ 私達ダンジョンメイカーはプレイヤーキルスコアと装備品を手に入れるわけです♪」


《それじゃプレイヤー?は集まらないんじゃない?》


 「いえいえ、ダンジョン内で討伐した魔物の経験値とジェム、採掘や採取で得た素材は全てプレイヤー側のメリットになりますから、持ちつ持たれつって関係になります。如何に良い素材を用意出来るかが、私達の腕の見せ所ですね」


《そうだったんだね…けど君、最終的には皆殺しにしようとしてたよね?大丈夫なの?それ、》


「フッ、もう少しで完全制覇出来るかも…って欲や希望に人間が抗うのは難しいんですよ?知らないんですか?」


 それは私の事だ…中学最後の決勝戦。 あと一つだった…あと一つ、ストライクを取れば延長戦に進めたのに私は壊れた肩のまま続投した。監督から何回も打診されたのに…


 ピッチャー交代を受け入れられなかった…諦められなかった…悔しかった…けど無理して投げさせてもらった結果、私の投げたボールは本塁打になった。

 バットの芯で捉えられた玉が快晴の青空に飛んで行くのをいつまでも見ていたっけ…


 そうして得られた代償はサヨナラ負けと治らない左肩。地元の皆も学校の皆も私を拍手で迎えてくれたけど私は勝ちたかったんだよ…残念だった、よく頑張った、良い勝負だった…そんな励ましの言葉より、ただ "おめでとう"と言って欲しかっただけなんだよ…


《あれ、どうして泣いてるの?》


「あ、これは…何でもないです…ただの思い出し泣きすよ。 それより思考を読まなかった事を褒めて差し上げましょう。エラいぞオワタ」


《…君もなかなかに拗らせてるんだね…》


「それより、ダンジョン攻略に必要な物があります! ダンジョンに挑む人達に名前を付けましょうよ。

 "冒険者"、"探索者"、"ハンター"、とか、格好いい呼び名は大切でしょう?どれにしますか」


《え〜…それ僕が決めるのかい?》


「だって私達はいつか地球に戻るでしょう?私達が居なくなってもダンジョンが続くのなら、この世界の人達が決めるべきでは?」


《そうかもね…じゃ"プレイヤー"で良いよ》


「えっ!? そんな雑な…」



 こうして"ダンジョンプレイヤー"が誕生した。










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