お約束?
私は結局、夕飯前にログインしていた。午後4時、今朝起動したダンジョン[無限回廊]は既に枠だけ完成していた。私はまず各階層を繋ぐ転移門を設定するために一階層から順番に転移用の隠し扉を設置しながら最奥部まで行き設定画面を開いている。
管理者代表)マスター)
ヨーダ(Maki Iyota)
管理者①)サブマスター)
レント(Makoto Tunatori)
管理者②)サブマスター)
ノーマ(Endou Norimasa)
階層構成)
迷宮型100階層
管理者室)
第二階層(但し扉は4階に限定する)
管理室)
座標:最奥隣室(2階より転移)
採取素材)
紅玉(換金アイテム)、素材の欠片(空間属性)、魔鉱石(火属性)、聖水(光属性)
階層主)
1体/10階層(階層ボスレベルはマスターのレベルに依存)
最奥ギミック)
リドル+ボスモンスター
ダンジョン内で必ず採掘できる魔鉱石はノーマが作成時にルビーに付与した火属性が添付されているみたいね。ふふ、狙い通りだわ♪ ボスモンスターの欠片はちゃんと空間属性になっている。 ダンジョン生成時に蒸発した湖の水もついでに吸収したらしい、10階層毎のボス部屋前に回復の泉(光属性)を設置すればボスに挑むプレイヤーの評価は最高の三ツ星間違いないんじゃない!?
むちゃくちゃ優秀なダンジョンが出来るんじゃないかしらッ!? 私なら絶対に入るねw
「今夜中に二人には可能な限りのモンスターを集めさせよ〜っと♪ ふひひひ、出来れば最奥には火属性の龍種が置きたいわね〜…んで、最奥の紅玉ドラゴンを討伐後は天井を崩落させよっと♪ 誰一人生きて帰れないダンジョンとか…滾るわ〜♪」
〈いやいやいや、滾らねぇし… むしろ萎えるわw〉
「えっ?! ……誰?」
私は今、最奥の横に作った管理室に居る。レントかノーマが来たのだとしても、まずは2階の管理室に4階から転移して内線で暗証番号を打ち込まなければならない。
私の居るコントロールルームは別次元設定になっているので、2階の管理者室から転移する以外の入口はないはずだ。管理室に音声チャット機能はまだ無い…だってこれから設定するんだから…
〈あ、そうなの?…アチャー…失敗したな〜…ま、良いっかwww とりあえず君とは一度話しをしなきゃいけなかったわけだし、僕からしたら好都合だね〉
「…ええっと、もしかして[無限回廊]のAI機能とか?そんな仕様有ったっけ…? ん~~?とりあえず貴方は誰ですか?」
〈あハハハハハ、諦めたね?www 君、面白いね。
ん~~…何と説明したら良いかな…この世界の中だと、いわゆる"バグ"って言ったら分かるかな?〉
「あ、つまり"虫"って事?」
〈いやいやいや、あくまでも比喩だよ!?比喩〉
「はぁ… で、そのヒユさんが私に何か?」
〈違うからね?!僕の名前は"ヒユ"じゃない!〉
「あ、違うんだ…じゃあ誰よ」
〈…やりにくいのか、やりやすいのか分からなくなってきたよ… とりあえず落ち着いて聴いてくれ、今さっき君の友達が二人同時に亡くなったんだ…〉
「ぇえっと… はい?」
〈ここの"サブマスター"とやらに名を連ねてる者達だよ。二人がさっき全く同時刻に亡くなったんだけどもね。…えぇっと、ここまでは良いかな?〉
「…はあ?……………全然良く無いんですけど…」
〈…ふむふむ、そうだね。よくない……ん?良くないの前に"全然"を付けてるから〜…つまり"良い"って事?全然て否定語じゃないのかな?え?どっち?〉
「……あ〜もう面倒臭いっ! 冗談だとしても私の友達が死んだとか言うなしっ!って言ってるんだよっ!!分かる? Did you Understand?!!バカも休み休み言えやボケッ!」
〈ぅおう!急に怒り出したぞ?…なかなか難しいね…ふむふむ、じゃあ先に良い知らせから伝えようかな? 二人には今、死んだ事を無かった事に出来るチャンスが訪れています。…そのチャンスをものに出来るか出来ないかは貴女しだいです …どうよ?〉
「…ちょっと待って……貴方は誰なの?」
〈あ、そこに戻るんだw ん~~…じゃあ"神様"って言えば多少は納得してくれたりするのかな?〉
「まあ… 虫よりは、状況的に理解はしやすいです」
〈OK、なら神様って事にしといてくれる?ちょっと時間も押して来ちゃったからさ… で、さっきの"チャンス"の話なんだけど、レントくんは車に撥ねられてて、ノーマくんは線路に突き飛ばされたの。 でね?僕は彼等の魂をこの世界から借り受ける許可をもらった別次元の存在なんだよね。…ここまでは良いかな?〉
「あ、いわゆる一つの"異世界転生"ってやつですね?分かります。…じゃあそれ、キャンセルして下さい」
〈ふあっ??…無理無理ムリ!二人ともグチャグチャだから!魂だけ戻しても死んじゃうからっ!!〉
「ならそれもキャンセルで♪神様なんでしょ?出来ますよね?…おい、やれ。今すぐ元に戻せやっっ!!」
〈…また急に凶暴化したよ、この娘… 落ち着いて聴いてね?二人が異世界に行く前に君に会いたいって言うから連れてきたんだけどさ、来てみてビックリ!この"ダンジョン"って企画は素晴らしいよ!君たちの世界では仮初めの存在なんでしょ?これ… そこで提案なんだけどね… この"概念"をくれないかな。僕の世界でこのダンジョンを運営してくれたらさ、こっちの世界に君を戻す時に、特別に彼等の身体が損なわれる前の時間軸に連れ帰ってあげようと思うんだけど… ダメかな?〉
「全然ダメじゃないっ!!!」
私今ちょっと頭がバグってる。けど嘘か本当かも分からないけど… 現実なのか夢なのかも分からなくなってきてるけれども、だっ!例え夢でも二人が失われる可能性は全て排除だっ!だっ!だっ!
〈あああああ、ちょっと君、思考が煩いよ…だっ!とか連発しないでよ …あと叫ばないでくれたまへ…
ふぅ~…「バグる」って、そういう使い方もするんだね…解ったから、この世界から連れ出す許可を貰えたのは二人だけなんだけどね、さっき二人を返すから三人レンタルと"ダンジョン"の概念だけ貰えるように提案した。…ん、1分弱の時間遡行なら許可も貰ったから… よしっ!では早速、僕の世界に行こうか!〉
神様?とやらは暫く左右の目玉をグルグルとアチラこちらへ向けていたけど、グるっと一回転した黒目で私を見た。…ぶっちゃけキモかったよ… なんて思ってるうちに私の意識は徐々に遠退いて行く…私はいつの間にかブラックアウトしていた…
◆
───翔んで異世界。
「ほんま、むちゃくちゃしよんな…こいつ」
「…全くな〜…けどダンジョンが上手く機能すれば死んだ事を無かった事にしてもらえるんだろ?
もしアッチの城に召喚されてたら俺達は勇者とやらにされてたらしいぞ?正式な召喚じゃないから仮初めの身体しか貰えなかったけど、元の世界に戻れるなら御の字だぜ…」
「ハハハハハ、確かになw けどよ、車道に飛び出しちまった俺はともかく、ノリマサは何で線路になんか落ちたんだよ。バイト帰りだったんだろ?」
「ああ、それな?…あの野郎〜…帰れたら絶対ぶっ殺してやる…ん?それよりマコト、お前エセ関西弁はどうしたんだよ?普通に喋ってるけど」
「ああ、あの神様?がさ、翻訳スキルに方言とかまで網羅してたら容量がパンクするって…話せなくなるか関東弁に統一するか、どっちか選べってよ……」
私の頭の上で話す二人の声を聴いている。
ひとまずホッとした私は改めて状況を理解する事にして、今は二人の会話から情報を取得しようとしていた。(本当に良かった… 例え夢であっても、二人が死ぬ事なんて許容したくないよ…)
《ハハ、よほど二人が大切なんだね?君は…》
(あれ?神様じゃん。まだ居たんですか?)
《─ガクッ、冷たいなぁ… まあ良いよ。とりあえず君は生きたままコッチに連れてきちゃったからね、君がコッチで死んだりしたら責任問題になっちゃうんだよ〜…何があっても君だけは護るから安心して?》
(うはっ、それイケメンに面と向かって言われたいです♪…もう一度、言ってもらえません?)
《"責任問題になっちゃう"…てとこかい?》
(そこじゃないっ!…分かっててやってますよね?)
《アハハハハ、まあね♪…都合が良いからこのまま聞いてほしい。 まず、この世界は現在進行系で"魔王"に侵略されています。 魔王は言葉を介しません。食事も必要としません。生きとし生けるものを全て消去します。魔王は魔素という物質を放出し続けて環境を破壊しています。このままでは、この星の生命は全て死滅して滅びます。…ここまでは理解できましたか?》
(うわぁ〜…ガチの魔王ッスね…怖っ!)
《ガチじゃない魔王が居るなら紹介して欲しかったよ… でだ、そこで有用なのが君達と持ち込んだ"ダンジョン"なわけさ。あくまでも概念上の存在だけど、君達のダンジョンはMPやDPを扱うでしょ?》
(ああ…マジックポイントとダンジョンポイントの事ですか?まあ、確かに… あくまでゲーム上の…仮想空間上の話しですが、有りますね…)
《それだよソレ!魔法自体はこの世界にも存在するんだけど、あくまでも魂の力を利用して行使するんだよね。魔素を利用して魔法を行使する発想は無かったよ… それにそのダンジョンポイント?だよ!
魔王はこの世界に概念上の怪物を解き放っているんだ。それらを何とかダンジョン内に押し込めないかな?概念上の生物を概念上の空間に閉じ込めれば、ダンジョン内でこの世界の者達に討伐させる事が可能になるんだ。そして倒した化け物から魔素を取り込ませる… つまり君達の概念で言う"レベルアップ"が可能になるって寸法だよ♪》
(わあ、面白そうですね〜♪…けどそれじゃ魔王自体はどうにもならないのでは?だいたい魔王って何なんです?聴いた感じだと討伐とかも不可能っぽい感じですけど…)
《どうなんだろうね?…僕の試算ではダンジョンが増えて魔素を封じ込め続ければ、いつかは魔王さえ取り込むことが可能になるんじゃないかと思うんだ…》
(あ、なるほど。要は世界各地にダンジョンを作れって事ですね?そのダンジョンに地上の魔素を吸わせて魔王を弱体化しようと…)
《うん、理解が早くて助かるよ♪ちなみに君達は仮初めの存在だからね?あの仮想空間で設定されてた機能は地上でも再現可能にしてあるけど、あまり無茶な事はしないでよ?…とりあえず絶滅の危機に瀕している街から始めてくれる?頼んだよ…》
(…善処します…)
そして私は目を開けた。
私はどうやら二人に挟まれるように寝ていたようだ。ヨーダだけにwww
「あぁっ、真樹!良かった…目が覚めたのか…」
「やっと起きやがったか!この寝坊助女が!
え?泣いてんのか?…真樹、どうした?大丈夫か」
気付けば私は二人を両手で抱きしめて泣いていた…




