表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
卑弥呼転生 ~現代知識で邪馬台国を作り、倭を統べる兄~  作者: 露李鈴
186年:冬九章「三野の大乱」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/114

第九十一話 見えないものを見ようとした結果

 人は、存在しないものを見ようとする。

 自分の都合のいいように。


 ならば、見せてやれば良い。


 相手に都合のいい物語を。


 そうすれば、勝手に判断を見誤り、

 道を間違えていくのだから。



――――――――――


「手荒な真似はしないように」


 俺の言葉に頷きながら。


 クロイと、ナトリの率いる、

 三十の兵が環濠へ踏み込んでいく。


 木の橋が、大きな軋みの音をあげていた。




 いきなりの兵の侵入に、

 三野の環濠が、慌ただしくなる。


 環濠に残っていた守りの兵たちが、

 驚いたように、こちらを見た。


 数にして六人ほど。


 一瞬で、その動きが止まる。



 三野臣高彦みののおみのたかひこの息子である二人が、

 いきなり環濠に入ってきたのだ。


 抵抗していいのか、従うべきなのか。


 咄嗟の判断ができずに動きが遅れていた。




 あっという間に。


 クロイの兵たちが、

 守りの兵を押さえつけて、縛り上げた。


 叫び声すら、ほとんど上がらなかった。



「いやあ、皆さんの手際がよくて助かります」


 俺は、名張の兵を率いて、

 ゆっくりと後から入ってきた。



「村の皆さん、落ち着いてください。

 すべては三野を治める者からの命です」


「おぬしは、本当に……」


「はい?」


「いや、よい……」


 クロイは、口を閉じた。


 嘘は言っていない。

 三野臣高彦みののおみたかひこは北に退いた。


 ならば、この三野を治めるのは、

 目のまえの二人なのだから。



――――――――――


 特に激しい抵抗もなく、

 環濠の内は、落ち着いていった。



「父上は、もう戻らない。

 これからは我々だけでこの地を守るのだ」


「皆さん、慌てずに聞いてください……」


 広場に村人を集めて、

 二人は、丁寧な説明を重ねていた。



「三野同士で争い合うなんて……」


「ウチの旦那は無事なのでしょうか」


 様々な声があがるが。


 意外なことに、この環濠にも、

 クロイやナトリを支持する者たちは多かった。


 派閥というのは、思ったよりも複雑そうだ。



――――――――――


「それにしても」


 クロイが、俺の横へ来た。


「よく、環濠内の兵たちに気付かれないよう、

 外の兵を捕らえていたものだ」



「皆、森の中で捕らえましたから」


「森の中だと?」


「三野臣に報告へ走ろうとした者や、

 見回りで、森へ足を踏み入れた者です」



「声も上げさせずに捕らえたというのか」


「名張には、那婆理なばりの民がいますから」


 俺は、周囲の森に視線を向けた。


 タケの率いる那婆理なばりの民。

 その十人は、今も森に潜ませていた。



 環濠の内から情報を持ち出させず、

 外からの斥候にも、情報を持ち帰らせない。


 そのためにも最大戦力には、

 今も、森の中で頑張ってもらっているのだ。



――――――――――


「もし、三野臣みののおみが、こちらへ兵を進めた場合は、

 どうするつもりだったのですか」


 今度は、ナトリが口を開いた。



「その時は逃げますよ」


「逃げる?」


三野臣みののおみの本隊とは戦えません。

 もちろん、倉に火を放っていきますがね」


「倉に火を……」


 ナトリは、小さく呟いた。



三野臣みののおみは環濠は取り戻せたでしょうが、

 倉を焼かれれば、兵も民も飢えます」


 この本環濠は、三野でも最大の人数を抱える。

 それは、つまり飢えるのも一番早い。


「なれば、環濠ごと倒れることになります」


 あとは生き残った者たちごと、

 こちらの手に環濠を収めていけばいい。


 糧を分け与え、命を救うという、

 大義名分まで手に入る。



「おぬしは恐ろしいことを、平然と言うな」


「平然とはしていませんよ」


 俺は、笑みを崩さずに返す。


「ただ、やらなければ、

 こちらが滅ぼされるだけですから」


 そんな俺の言葉に、

 場の空気が、少しだけ冷えた気がした。



――――――――――


 そんな話をしている間にも、

 三野の環濠は、落ち着きを取り戻していった。


 本来の三野臣みののおみであるタカヒコが、

 例え、いなくなろうとも。


 この、三野の環濠には明日が訪れるのだ。



 そして、環濠内では――


 これまでの力関係に、

 ただ、わずかな変化が生まれるだけである。




「それでは、

 後日、評定を行います」


 俺は、クロイとナトリに視線を向けた。


「それまでは、各々の環濠を、

 落ち着かせることに努めてください」


 波多の環濠。

 クロイの治める三野の環濠。


 そして、この本環濠。


 これらを皆の手で、

 安定させなければいけないのだ。



 これからの名張のためにも。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ