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卑弥呼転生 ~現代知識で邪馬台国を作り、倭を統べる兄~  作者: 露李鈴
185年:夏七章「三野の名張侵攻」

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第六十四話 ★真人:土のうえの空論を語る

◇【三輪之真人みわのまひと】視点◇



「どのように、三野を退かせたのですか」


 私は、思わず聞いてしまった。


「三野は百。名張は三十。

 まともに戦って勝ち目はないはず」


 それは、三輪へ報告するためでもあるが。

 なにより私自身が知りたかった。



――――――――――


「正面からぶつかれば、

 一刻ともたず、名張は負けたでしょう」


 イミナ殿の小さな手が、

 小枝を取り、土の床に線を引き始めた。


「だから、三野の兵を、二手に分けたのです」


 土に描かれたに大きな円の中央。

 そこに縦の線が引かれる。


 円が、二つに割れた。


 それだけで、百の敵が、半分となったのだ。



「そ、それでも……まだ、相手の数が多いです」


 三野が五十、名張は三十。

 兵を半分に分けたとしても数で負けている。


「そこで山林です」


 イミナは、新しく一本の縦線を引いた。



「名張の丘……その細道に敵を誘い込み、

 その前衛に攻撃を集中させました」


 一列に伸びた三野の隊列。

 その前方に、小さな円を三つ描いた。


「全体の数では負けていても、

 局所に数の優位を作り出したのです」


「な、なるほどぅ……」


 私は、地に描かれた図に唸る。


 たしかに縦線の先端では十程度になるのだろうか。

 そして、三つの円で、名張は三十の兵となる。


 数の優劣は逆転していた。



 理屈としては分かる。

 百を、百として受けない。


 敵を割り、そこからさらに引き伸ばし、

 細くなった先端だけを叩く。


 言葉にすれば、確かにわかりやすい。



「だが、こうも上手くいくものか……」


 薄暗い森の中。


「名張の兵が、少しでも手間取れば、

 次々に迫る三野の兵に圧し潰されてしまう」


 人に、これが、やれるのだろうか。


「三野を突いた後に退く時、

 森で、はぐれることも考えられます……」


 すべてが都合よく動かなければ。


 この絵は、ただの世迷言に終わるだろう。




「マヒト殿の疑問も、ごもっとも」


 イミナ殿は笑顔を浮かべていた。


「たまたま事が上手く運んだ、

 もちろん、そんなことはありえません」


 そこで、イミナ殿は、

 ふと視線を横に動かした。



「細かいことは現場で活躍した、

 皆様から、話してもらいましょう」


 イミナ殿が、

 そう、言葉を投げた先。


 那婆理之稲置なばりのいなきたけへ、皆の視線が集まった。



――――――――――


「俺か……」


 タケは、大きく息を吐いてみせる。

 戦の中核を担った者の姿だ。


 百と、三十の戦。


 そんな勝ち目のない戦を、

 乗り越えた者。


 実際に成した者の、語りがはじまる。


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