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卑弥呼転生 ~現代知識で邪馬台国を作り、倭を統べる兄~  作者: 露李鈴
186年:秋十二章「名張の実り」

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第百五十三話 秋の捌:時をかける道

 見上げるさきに広がる青空の下を、

 俺たちは、生きている。


 誰もが同じ太陽を仰ぎながら、

 皆、それぞれの生活を過ごしている。


 それらの遠く離れた「時」を、

 ひとつの線に繋げる。


 これは、そういう試みだ。



――――――――――


 シラガから、

 市庭の相談を受けてから数日。



「にぃに、みんな、がんばってるね……」


 イミコは目を輝かせながら、

 開発の進む、市庭の中央を眺めていた。


 数日前まで何もなかった。


 そこに大きな日時計を作るため、

 石や、丸太が、次々と運び込まれている。


 石を運ぶ男たちの声と、

 木槌を打つ音が響いていた。



 日時計は、まだ完成していない。


 今、その代わりにあるのは。


 地面へ置かれた、七日の巡りを示す、

 仮の石だけだった。




「で、俺は、なにをすればいいんだ?」


 名張の市庭の中央、その石の前。


 アシという名張の男衆が、

 首を傾げていた。



 普段は畑や市庭で働く者でありながら。


 これまでに何度となく、

 三野に歩いていったことがあるという。


 腕や、脚は日に焼けており、

 脛には古い擦り傷がいくつも残っている。



 知らせを届ける者――


 それは、速く走れる者じゃない。


 確実に道を往復できること。

 道を知っていること。


 そして、人から聞いた話を変えないこと。


 そんな者を、シラガに選んでもらった。




「アシさんには、

 三野まで行ってもらおうと思ってます」


「三野へ?」


 アシの眉が上がる。



「さきほど話した内容を三野臣へ伝えて、

 返事を受け取ってきてください」


「それだけでいいのか?」


「あと、三野臣から、

 名張へ伝えたいことがあれば、

 その話を聞いて持ち帰ってください」


「ふむ……」


 アシは腕を組み。


 市庭の外から、

 三野へ伸びる道へ目を向けた。



「俺、一人でいいのか?

 三輪のほうはどうするんだ?」


「三輪には、昨日、

 もう別の一人が走ってます」


「昨日?」


 今度は、こちらへ顔を戻す。



「三輪までは、

 歩いて一日ほど掛かりますから」


 俺は、地面の七日の石へ視線を落とした。


「でも、三野なら、

 ここから二時間ほどです」



 アシも、地面の石に視線をむける。


 それから。


 三輪へ続く方角と、

 三野へ続く道を交互に見た。


「だから、出る日を変えるのか」


「はい。同じ日に届くようにします」


「なるほどな」


 アシが、小さく顎を引いた。



「知らせる者が着く日、そのものが、

 向こうで日の巡りを確かめる印になるのじゃな」


 後ろから、シラガの声があがる。



「その通りです」


 三輪にも。


 三野にも。


 同じ日に、

 名張からの使いが現れる。


 日の訪れを、人の足が運ぶのだ。




「とはいえ……」


 アシが、後頭部を掻いた。


「これ、毎回、俺が行くのか?」


「それは、まだ決めてません。

 まずは動かしてみてから考えようかと」


 俺は、アシの足元を見る。


 道の具合も、身体への負担も。


 実際に往復してみなければ、

 分からないことはある。



「ただし」


 俺は顔を上げた。


「向こうで聞いた話は、

 できるだけ、そのまま覚えてきてください」


「勝手に話を変えるな、ってことだな」


「頼んだぞ」


 シラガが声を掛ける。



「まあ、やってみるか」


 アシは鼻の頭を指でこすり。


 水と、すこしの干し肉を持って、

 三野への道へ踏み出した。




「いってらっしゃい……!」


 イミコが、両手を大きく振る。


「おう!」


 アシも、一度だけ振り返り、

 片手を高く上げる。


 そして、一歩。


 また一歩。


 乾いた土を踏み。

 道端の草を抜けて。


 その背中が、小さくなっていった。




 道は、人が歩くだけではない。


 荷が運ばれるだけでもない。



 今、その道に「時」が流れはじめた――


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