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卑弥呼転生 ~現代知識で邪馬台国を作り、倭を統べる兄~  作者: 露李鈴
186年:春十章「繋がる名張」

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第百二十一話 三輪の陸:繋がり合う国々

 倭の国々から、争いをなくすためには。


 道と、品によって、

 ひとつの中心に国を繋げていく。



 * * *


 ああ、そうか。


 それで――


 邪馬台国が生まれるのか。



 倭の、いくつもの国が。


 ひとりの女王を中心に。

 ひとつの結びへ、変わっていく。


 * * *



 俺は、隣のイミコを見た。


「……ん? にぃに?」


 イミコは不思議そうに首を傾げる。



 いつか、この子が。


 倭の国々を結ぶ、その中心に、

 立つような日が来るのだろうか。



――――――――――


「争うより、繋がるほうが利となるか……」


 三輪君が、ゆっくりと言葉を繰り返した。



「そこで必要となるのが、

 土地の名に、字を定める者にございます」


 俺は、顔を上げる。



「名を……」


 正堂に、低いざわめきが広がった。



「同じ者から字を認められた土地は、

 遠く離れていても、

 同じ、結びの内にあると示せます」


「ゆえに、三輪君が字を認め、

 授ける側にまわるのがよいかと……」



「だが、そのような権威を作れば、

 大陸のむこうの漢が黙っておらぬぞ」


 阿倍臣が、険しい顔で口を挟んできた。



「まさしく、それこそが字の強さです」


 俺は、正堂を見渡した。


「今、この場に、漢の兵は一人もおりません」


 一度、息を置く。


「それでも皆さまは、漢の名と、

 漢より授けられる印を、

 重く受け止めて恐れております」


「漢は、海の向こう、遙か西。

 その槍は、三輪に届かないというのに」



 * * *


 黄巾の乱が起きたというならば。

 これより、漢は、長い内乱へ向かうだろう。


 少なくとも、今、海を越えて、

 三輪へ兵を差し向ける余力などないはずだ。


 だが、それを知るのは俺だけ。


 * * *



「我ら、三輪が、字を扱えるとなれば、

 それはたしかに強いが……」


「しかし、三輪が名を授けたところで、

 遠い者が従うとは限らぬ」


「はい、名を与えるだけでは誰も従いません。

 だからこそ、道と、市庭による利を作るのです」


 道の繋がりを壊せば、その利を失う。


「その中で、三輪君が、土地の字を認めて、

 その輪を乱すものを治めるならば」


「同じ道を守る者たちとして、

 ひとつになれるかと」



――――――――――


「なるほどな」


 三輪君が、わずかに目を見開いた。

 その太い指が、膝を、ゆっくりと叩く。


「この大和をひとつに結び、

 漢さえ、我らを無視できぬ形まで、

 育てるということか……」


「そのとおりにございます」


 先ほどまで笑っていた者たちも、もう声を上げなかった。



「そのためには――」


「そこまでじゃ」


 三輪君の低い声が、俺の言葉を断ち切った。


「さすがに、話が大きくなりすぎた」


「倭の国々を繋ぎ、漢すら無視できぬ権威を作るなど」


「今、この場で、安易に決める話ではない」


「おっしゃるとおりにございます」


 俺は、深く頭を下げた。



――――――――――


「ひとまず」


 三輪君の声が、再び、正堂へ響く。


「これまで名張が定めてきた字は、

 三輪が認めたものとする」


「はっ」


「ただし、今後、勝手に、

 新たな字を授けてはならぬ……」


「字を定める時は、

 必ず、三輪へ話を持ってまいれ」


「承知いたしました」



「その先については、

 追って、考えるとしよう……」


「はっ、仰せのままに」


 額が床へ触れそうなほど深く、

 俺は、頭を下げた。



 ただの目印だった字に。


 三輪の権威が宿った。



 すべては。


 ここから始まる――


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