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卑弥呼転生 ~現代知識で邪馬台国を作り、倭を統べる兄~  作者: 露李鈴
186年:冬九章「三野の大乱」

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第九十六話 女衆たちの戦い

 三野の評定から数日。


 俺たちは、名張の畑にいた。




「にぃに、土、つめたい」


 イミコは、指先で土をつつく。


「まだ、冬が残ってるからな」


 しかし、そんな太陽の光は、

 日を追うごとに柔らかくなっている。


 風の中にも、春の匂いが混じり始めていた。



――――――――――


 畑で農作業をする女衆に、

 アサメが、声掛けをしていた。


 その奥では、三輪連由良みわのむらじゆらが、

 畑の状態を確認してまわっている。


 三野との戦の間にも、畑は動く。


 その間の村のことは女衆たちに、

 その全てを、取りまわしてもらっていた。



「今年の麦は、どうでしょうか」


「悪くはありませんよ」


 アサメの声には、

 どこか、誇らしさがあった。


 名張の畑には、

 小麦の青い葉が伸び始めている。


 まだ細く頼りない葉だが、

 それは、冬の間も命が育ってきた証だ。


「火の巫女さまによる、

 土の加護のおかげかもしれませんね」


 アサメは微笑んだ。



「それはよかった」


 肥料を使った農作法――


 穢れを寝かし、肥やした土の力が、

 春の畑に返ってくること。


 それらが、三輪臣みわのおみに認められるように、

 少しでも上手くいってほしい。


 それは。


 三野から、三輪までを繋ぐ道への、

 最初の証にもなるだろう。



――――――――――


 畑作業をしている女衆たちに向かい、

 俺は、深く頭を下げた。


「村の事を、任せっきりにしてしまい、

 苦労を掛けました……」


「急に、どうしたのですか?」


 アサメをはじめ、

 まわりの者たちが目を丸くした。



「いや、その……」


 俺は、名張の畑を見渡す。


「いつでも男衆が動けるようにするため、

 その分を、皆さんに背負ってもらったので」


「いつ、三野が動くか分からないから、

 そする必要があったのですよね」


 ユラが穏やかに言った。


 まわりの女衆たちも、

 責めるような顔を、誰もしていなかった。



 * * *


 今回の、三野との戦において。

 迅速な動きが勝敗を分けることになる。


 そのため、男衆にはいつでも動けるように、

 常に備えてもらう必要があった。



 それは、将来的に、

 職業軍人と呼ばれるものかもしれない。


 だが、寒村の名張で、

 専業の兵を抱える余裕はなかった。



 だから、三野臣高彦みののおみたかひこが兵を動かすなら、

 それは冬明けだと踏んで。


 その短い間だけに限り、

 名張の男衆には兵に専念してもらった。


 くわよりも、槍を近くに置き。


 遠くへ狩りに出ることも控えてもらい。

 村の周りで身体を空けておく。


 狼煙が上がれば、すぐに集まれるように。



 そこまでする必要があるのかと、

 疑問視する声もあった。


 だが、その上で、実際に三野で事が起きた。


 * * *



「このたびは、本当に助かりました」


 俺は、もう一度頭を下げる。


「私たちに戦のことは分かりませんが、

 それが、必要なことは理解しております」


 アサメが、静かに答えた。



――――――――――


「それで、三野は落ち着きそうですか?」


 ユラが尋ねてきた。

 三輪へ報告する必要があるのだろう。


「すぐには、難しいかもしれません」


 俺は答える。


「クロイ殿が三野臣みののおみになったとはいえ、

 タカヒコ殿は、阿閉にいます」


 三野は、クロイをおみにまとまるだろう。


 だが、その環濠の中には、

 心の底ではタカヒコを支持する者もいるだろう。


 クロイが臣になることで実害を被る者たち。


 表立って反抗をしないまでも、

 その水面下では、どう動くかわからない。



「ですが、クロイ殿と、ナトリ殿が、

 力を合わせるのならば……」


「時間はかかっても、確実に、

 三野は、まとまっていくことでしょう」



「それは、楽しみですね」


 ユラは静かに頷いた。


 アサメや、他の女衆たちにも、

 聞こえていたのだろう。


 けれど、何も言わず、

 ただ、土をならし続けていた。



――――――――――


 冬を越えた小麦の葉が、

 小さく揺れる。


 未来に対する希望と、

 どこか、拭いきれない一抹の不安。



 小麦の芽吹きと、


 三野の未来が、


 どこか、重なって見えるようだった。


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